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学生デビュー

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「セレーネ。君には午前中の数時間、僕の補佐をやってもらうことになったから。よろしくね」


ニッコリして輝くイケメンオーラを放っているのは、数年前に私の義父となってくれたジルベルト・アンガー様おとうさま
出会った時から変わらず、この国の筆頭魔法使いであり(最近知ったのだけれど……)この学校の理事の一人でもあるらしい。

今日も今日とていつも通り、妖精の遊び場近くにある屋敷から転移で出勤をしてきた彼は、いつも通りな笑顔で私に言い放った。

まぁ当然「は?????」となるわけだけど、そのあとすぐに「これも課題の一環として組み込むことは理事の間で了承が取れているからね。しっかりお願いね」とのことだった。


(まぁ……今のところ(能力の隠匿をしている)私以上の鑑定魔法持ちはいないらしいから……将来は私がお父様の継ぐのもいいかもしれない)


基本的に野望というものが無い私にとっては、どこで働いてもいいのだけれど、できればのんびり、ある程度職には就きたい。それに、わざわざ過酷な職を選ばなければいけないほど追い詰められているわけでもないので、仕事に就く上で熾烈な争いまではしたくないなぁ……というのが正直なところだった。


「授業のない時間だけでよろしいのでしょうか?免除頂いたものも多いのですが、受けてみたい授業もあるので、できれば決まってからがいいなぁ……なんて…」


義父となってくれたこの人には散々お世話になっているので、こんな事を言うのもちょっと気が引けるのだけれど……。


「それは大丈夫だよ。学べる内に色々学びなさい。知識としては知っていてもでは経験できないことも多いだろうからね。あっ、そうそう。一つ上の学年なんだけど、セレーネと同じ学生の助手があと一人いるんだよ。その内会うことになると思うんだけどまぁ覚えといてよ」


なんて軽く言われたけど……同年代の子とって今までいなかったから、上手く交流できるかすっごく心配なんだよね。大人ばかりの環境で12年。年代として近かったのが唯一兄様だけなんていう、まさに ”デビュー” と言っていい状況で上手くやっていけるのか。前世では普通に学校に行っていたものの、特にクラスで目立つ存在でもなかったし、自ら周囲に声を掛けていた記憶もない。
同学年だけでこれだけ不安があるのに、一つ上の異性って……。


そんなことを思いつつ、いつものように表情に出さずクラスに向かう。






あぁ……まさかこんなところで人生躓きそうになるとは思わなかったわ……。




思わずついて出た言葉は誰に聞かれることもなく空気に溶けた。






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