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令嬢は推し事を思い出す
しおりを挟む歴史ある公爵家には古い文献も歴史書も……歴史に名を残す偉人の日記なんていうのもある。なまじ地位もチカラもあるせいか、ご先祖達が望んだ本はほぼ手に入り、王城の書庫よりも広いと言われるこの書物庫に収納されているらしい。
5年前のある日私は、偶然その本を見つけた。今思えば、あれは本当に偶然だったのか疑問にしか思えないが、いつもなら私には立ち入ることの出来ないエリアにある書物が偶然、私がいつも座る場所にポツリと置いてあった。
(お父様がしまい忘れたのかしら?)
国の叡智と言われ、日々王の傍で采配を振るう父。その父を支える母も、日々忙しく公爵夫人としての役割をこなしている。
両親が多忙ゆえに構ってくれないのは理解していた。頭では。
理解はしていた。けれどそれだけ。
寂しい……その感情はどうしても抑える事が出来ず、やがて周囲の令嬢に……母親と連れ立って仲良さげに茶会に来る令嬢に向けられた。
そしてその感情を向けられた令嬢は、ロイスが私の目から遠ざけてくれた。
嬉しかった。
ただ単純に嬉しかった。
皆が羨むロイス・ファーマレットは私の願いを聞いてくれる。クチに出さずとも、私の気持ちを悟って甘やかしてくれる。
そう思っていた。
あの日までは。
「綺麗な本……魔法書?これは……異国の文字……どこの国の文字かしら?」
書物庫の一角にある置き忘れられた一冊の古い……古いけれど鮮やかな色彩で彩られた装丁の本はジュリアの好奇心をとてもとてもくすぐった。
最初は恐る恐るめくっていたページも、読み進めるごとに早くなり、8割ほど読み進めた辺りではたと気がついた。
(あれ?私、なんで読めているの?あれ?でも私は知っている?この本の元になったゲームを……)
そこからはまさしく怒涛の如くだった。あれが記憶の渦というのだろう。頭の中にすごい勢いで……喩えるならフィルム映画を早回しで観ているような。そんな感覚で前世の記憶を思い出した。
そして気が付いたのだ。
ここは前世、自分がプレイしていたゲームに……ヒロインの公爵令嬢がメインヒーローのロイス以外のルートを選択すると、ろくな終わり方しかしないゲームに酷似した世界だという事を。
それからしばらくは記憶の整理の為か、数日知恵熱のようなモノで寝込んだ。
そして決心した。
魔王ロイスをしっかり調教して、私が彼女を……最推しのセレーネを守らねばと。
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