夢見るネコの私とあなた

こひな

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「今日からここに一緒に住もうな」


会社から自宅に帰り、荷物とネコを廊下に下す。
会社に置いてあった私物も持ち帰ってきたので、かなりの荷物になってしまったけど、途中コンビニでネコ缶も忘れずに買ってきた。


「もう少し待っててな。ちょっと着替えてくるから」


そのままリビングにネコをおいて、寝室に着替えに行く。
しばらくはスーツの出番もなさそうなので、明日早速まとめてクリーニングに出そう。
今後会社に呼ばれても、出社する必要はないだろうしな。


クローゼットに吊るしてあったスーツを纏めてクリーニング袋に入れる。
もう、ネクタイもシャツも全部入れてしまえ。


会社でのことを思い出してむしゃくしゃしてしまい、手に取ったシャツを床に投げつける。


「にゃーん…にゃーん」


扉を控えめにカリカリと引っかく。
まるで俺を呼ぶように鳴くネコに、ちょっとほっこりしてリビングに戻る。


「ごめんな。お腹すいたか?」


買ってきたネコ缶を開け、小さいステンレスのボールに水を汲んで、床に並べて置く。
ネコ缶と水をじーっと見て食べようとしないネコに、もう一度促すと、おずおずと食べ始める。行儀よく食べるネコを見て、飼い猫だったのか?と思う。


明日、病院に行ったときにポスターでも貼ってもらおうかと思い、スマホを構える。


「迷いネコのチラシ作るから写真撮らせてなぁ」


何が悪かったのか、今まで大人しくネコ缶を食べていたネコがダダっと逃げた。
その後も隙を見て写真を撮ろうとするけど、逃げ回るネコに根負けして、写真を撮るのを諦めた。


「まぁいいか。写真は嫌いなのか?」


ネコ缶を食べ終わったネコを撫でながら呟く。
そういえば、いつまでもネコにネコと呼びかけるのも変なので、名前を付けようかと思うけど…自分で言うのもなんだがネーミングセンスゼロなので、自信がない。


「及川さんの病院に行った帰りだから……」


そう思い、いくつか候補を出すけど、ネコは俺の顔をじーーーーーーっと見て身動きしない。
なんだか負けた気がしたけど、諦めず今度は植物の名前で勝負をかける。


「バナナ……は無しだな。カリン…はダメか。あとは……みかん…もダメ…あとは…」


思いつく限りの呼びやすそうな名前を出してみたけど、どうもお気に召さないみたいで最後の手段に、及川さんの名前…『さくら』と呼んでみる。


「にゃーん」


一声鳴いて、俺の膝にすりすりすりすり。
かわいさに負けて、思わずその名前に決定しちゃったけど、あとでちょっと後悔。
……ってか駄目だろ。どんな顔で『さくら』なんて呼べばいいんだ。
『さくら』と呼ぶたびに赤面しそうで、頭を抱えてしまった。
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