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16、画策
しおりを挟むマリーの目が驚きで見開かれたのが分かる。
おっちょこちょいで遠慮がなくて……と普段はそんな ” 親しみやすい侍女 ” っぽくしているけれど、時々感じる視線がなんとなくだけどそうではないかと思っていた。 ” なんとなく ” なので自信はないけど。
「あなた達もお仕事だから、そんなことを言われても困るのだとは理解しているんだけど……」
何も言わないところを見ると、お母様と繋がっているのは確かなんだろう。
指示されているのがどこまでなのかにもよるけど、お母様と話をした後一日…いや半日でいい……その時間の私の行動を見逃してくれれば、どうにかできる自信はあった。
「多分、私があなた達に隠していることは多いと思うの。できるだけ何も見せないよう行動していたつもりだから。私は、お母様の駒になるのは嫌なの。別に大それたことをしたいわけじゃないの。ただ、自分らしく生きたいだけ。だから……」
しばらく黙って私の話を聞いてくれていたマリーが目を開ける。
そして……
「お嬢様……お嬢様の監視についている者は私を含め三人です。常時ついている私と、庭師に一人、執事のそばでお嬢様が使うお金の管理をしている者が一人。私以外に常時ついている者はおりませんが、屋敷を出れば庭師が、何かを購入すれば金銭の管理をしている者が気が付きます。お嬢様が何を隠しているのか、見当もつきませんが恐らく何もできずに終わるかと思います。なので、無駄なことはなさらない方が良いかと思いますが……半日程でしたら皆の目をそらすことはことは可能かと思います。……そうですね……奥様からお話が帰り次第すぐされるかと思いますので、明日の昼餐まで目を瞑りましょう。ですが……ご無理はなさらないようにお願いします」
渋々といった体で頷いてくれた。
監視が三人。一応、要所は抑えての配置みたいだけど、思ったより少なくて少し驚いた。
(何もできない子供だと思われているんだろうなぁ……)
マリーの様子からなんとなく見て取れて思わず苦笑する。
魔法の練習も、いざという時の物資の調達も屋敷の者達の目を掻いくぐって慎重に進めてきたけど……。
(多分バレていないはず)
魔力量が多いのは報告されているだろうけど、どんな魔法が使えるかとかまでは知られていないらしいし…。
お母様の話次第だけれど、それによっては今夜屋敷を抜け出そうと決意した。
「ねぇマリー、これを聞いたことはここだけの話でお願いしたいんだけど……お母様は何を目指しているの?私が言ってはいけないとは思うのだけれど、いくら何かを画策したって潰されるのがオチよ?それに、お兄様がいずれ婚約すれば、侯爵とは別に辺境伯も名乗れるのよ?シュタイン家にとってはこれ以上のものはないと思うんだけれど……」
お兄様やお父様であれば、お母様がしようとしていることはには対処できると思うけれど、いくら接点が少ないとはいえ母親だ。不幸になって欲しくないのが娘の身上だ……たとえジュリエッタ自身を見てくれない母親だとしても。
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