私も異世界に転生してみたい ~令嬢やめて冒険者になります~

こひな

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18、出奔ですよ

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思ったより早い独り立ちになってしまったけれど、こうなったら悲しんでいる時間など残されてはいない。


自室の扉を不意に開けられたりしないよう、施錠の魔法を使う。今まで練習していた魔法がようやく役に立つ。嬉しいような悲しいような微妙な気持ちだけれど、とりあえず淡々と作業を進める。


「一応、置き手紙なんて書いた方がいいかしら……」


ふと思い立ち、サイドテーブルに走り書きのような手紙を置く。そして、今まで密かに貯めいたお金と、少し大きな街であれば換金できそうなアクセサリーを袋にまとめ、パッと見は何でもない普通の皮のバッグに入れる。これは、学院にある古い文献や魔法書を調べて自作した、時間経過のしないマジックバッグになっている、ジュリエッタの自信作だ。


(まさかお金の出入りを見られているとは思わなかったけど……買わなくて良かったわ……)


一応、このてのバッグは少ないながらも市場に出てはいる。とても高価なものだけど。
迂闊に購入していたら危なかったかもしれない。そう思うと、少し身震いした。
多分、普通の令嬢はこんなのは買い求めたりはしないだろう。ただ、貴族が持ち歩いても支障がないようなデザインであればバカ売れしそうだけど……。


(でも、これからはもっと慎重にしないと……)


下手をすると今後の人生を軟禁状態で過ごさなければいけなくなるかもしれないことを考えると、しばらくは慎重に慎重を重ねて行かないといけない。


(それに……前世本で読んだように、冒険者生活が上手くいくとは限らない。アレは物語だから……娯楽の為の本だから)


娯楽の為の本に辛いことや大変なことは書いていない。書いてあってもだいぶ端折って書くだろう。だって、アレはあくまでも想像上の物語だから。


(とりあえずはここを出て、今夜中に王都を出なければ……)


ドレスを脱ぎヒールの付いた靴を脱ぎ、予め準備してあった、少し汚れた冒険者が着るような服に着替え、ブーツを履く。
あとは……。


(これでもう後には引けない……)


引き出しにしまってあった護身用の短剣を手に取り、腰まで伸びた金髪のサラサラとした髪を肩ぐらいでバッサリ切り落とす。


(これは……持っていった方がいいかしら?判断に迷うところね……)


迷った末に、切った毛束をリボンで束ねマジックバッグに入れる。万が一、母が捜索し始めた場合、髪を切ったのを知っているか知らないかでだいぶ違うかもしれない。
それに、いざとなったら売れるかもしれない……そんなことを考え、それを最後にジュリエッタは屋敷を抜け出した。誰にも何も言わずに。


(さようなら、お母様)


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