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39、拾ってません……多分
しおりを挟む「なっなにっ!!!!!」
床の冷たさで目が覚めた色気のない第一声。
薬草取りに行った先で謎の声を聞き、怖くて怖くて帰ってきたら………………。
失神する前のことを思い出し、慌てて部屋の中を見回す。何もないことにホッとして、身なりを整え食堂兼リビングに下りる。
気が付けば外はもう暗くなっていた為、今日はギルドへの納品は諦めた。
(あれってやっぱり、オカルト的な何かなのかしら)
暗かった台所に灯りを灯し、コンロに火を入れる。今日二人はジュリが行った反対側の場所に位置する森に、魔物の討伐に行くと言っていたので、そろそろ帰ってくるはずだ。
(作れる時は作りたいしねぇ~)
今日のメニューはいつものパンに茹で野菜、モック鳥の煮込みだ。仕込みは今朝やっていったので、あとは煮込むだけ。今の時間でも十分間に合うはず。
(はぁ……私もその内魔物の討伐とか行かなくちゃいけないのかなぁ……)
今回の薬草採取が完了すればCランクに上がるとはいえ、Aランクの二人にとっては、どう考えても足でまといでしかないことは、確認しなくても分かる。
それに……前世のゲーム知識を動員して言うなら、私はどう見ても戦闘職にはなれないし、いいところ後方支援だけど……私程度の後方支援はあの二人にはいらないだろうと考える。
「治療魔法とか覚えればいいのかしら……でも、あれって適性がないとダメだったと思うのよね…………」
『適正ならあるよぉ~』
「えぇ~…でも使えたことなかった気がするんだけど……」
『大丈夫大丈夫♪僕に任せてくれればあっという間だよぉ~』
「そうかしら。でもそんな魔法とか使っていたら、教会から目を付けられないかしら?」
鍋をゆっくり混ぜ、煮物を焦がさないよう集中しているせいなのか、ジュリエッタは誰と話しをしているのか全然理解出来ていない。今のこの問答相手が昼間のあれだと気づくのはまさかのまさか……
マルスとマリーが帰ってきてからだった。
ちなみに……今回は卒倒することなく悲鳴のみだった。慣れたのか?
⚫〇⚫〇⚫
そして夕食後…………。
お膝に乗ってふさふさの尻尾をフォンフォンと音がしそうなほど激しく振るもふもふ。
(かわいい……ちょーーーーーーかわいいっ!)
この世界ペット需要はないのかっ!
どこぞにかわいいペットを取り扱う商会はないのかっ!
と、令嬢時代心の中で熱く叫んでいた私。実際のところ無いわけではなかったけど、洗濯技術が進んでいないこの世界では、ドレスなどに毛が着くと……とか、どうしても臭いが……とかの問題があって、ペットといえば籠に入れた鳥くらい。
それに、あの時の私が飼ったとしても、週末しか屋敷にいなかったのだから難しかったはずだから、飼わなくて正解。
けど、今の私なら飼える。
冒険者の今ならいつも一緒にいられる。
そう思うと心が踊る♪
それに、マルスさんやマリーさんの目には魔狼の仔に見えているらしいのだけど……実は精霊らしい。
『キミが思い浮かべた姿になれるよぉ?』
今日森で聞こえた声も、追いかけてきた声も彼(彼女?)だったようで、私の魔力の波動が心地よくてついつい着いてきてしまったらしい。
そして、悲鳴を上げ卒倒した私に次は怖がられないよう、人間が好きなんじゃないかと思った姿になって、私の足元にくっついていたようだ。
(いくら考え事してたとはいえ、気付かない私も私だけどね)
ちなみに、二人の飼育許可はしっかりゲットしたのだよ。マルスさんは『そいつ、本当に魔狼か?』なんて言っていたけど、魔狼で押し切りましたよ、当然。精霊だなんて言ったらどうなるか予想も出来ないからね。
そして、名前は『ソラルファ』。
毛並みは白くてツヤツヤふわふわだけど、両目はキレイな空色だったし、名前がポっと浮かんだせいもあったからね。
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