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91、自業自得
しおりを挟むお父様から付けられた護衛の彼女はお父様の部下で、良くいえば国の諜報機関……ぶっちゃけ国の暗部に身を置いているらしい。
国の暗部に身を置いている彼女の上司……。
父の職業が分かってしまい、しばらく部屋に一人篭ってしまった。
まぁ……元々王城務めだったわけだし。
お父様とは色々と噛み合わず、話をする機会もなく出奔してきた私。お父様のことを知ろうとしなかった私にも問題はあるし……暗部の仕事をしているなんて、あの母に……まして社交デビューもしていない私に話をする事なんて出来ないのは分かる。うん。理解もできる。
でも、それとこれとは別な話。
仮にも父親だろ。と思う。
この世界の貴族の親子関係なんてそんなもんかと思えなくもない。けど。
「私に護衛を付けるのも相談無し……か」
まだ『シュタイン侯爵令嬢』だから、家の庇護から抜けていないとはいえ、相談無しはいかんよね。
そう思って、おそらく部屋の何処かにいるであろうベティに声を掛ける。そして……。
「ベティが悪いわけじゃないの。けど、私は私の事情があって、見えない護衛は困るの。護衛として付くなら侍女として付いて欲しいの。その為には礼儀作法諸々できる者でないと困るの。それにそれは王太子殿下が付けてくれたマリーがいる。それをお父様に伝えて欲しいの」
そう言って遠回しに『お父様からの護衛はいらない』と断った。だって今、私の周りには精霊達がいる。信頼出来ない人に周囲にいられるのは困るのだ。たとえ見えないとしても、私の不審な動きも声も分かる。
いくらお父様の部下とはいえ、結局は自分が知らない人で、お父様や国に情報を渡す人なのだ。
それに私は今、姿を……色合いを変えている。
お父様を疑いたくはないけれど、信じきれるほど確信もない相手に、自分の秘密をわざと見せるような事はしたくない。
結局……自分は周囲を……家族である父を信じていないどころか疑っていると言ってるも同然なのだけれど、それは父強いては母の自業自得なのだからしょうがない。
(唯一、お兄様だけは信じられる。けど、やっぱり寂しいかもね……)
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