【完結】異世界召喚されたのはこの俺で間違いない?

苔原りゐ

文字の大きさ
2 / 68

孤独が漂う場所(1/3 修正)

城を出た瞬間、ひんやりとした風が頬を撫でる。それでも俺は振り返ることなく、城門を抜け、城下町へ踏み出した。石造りの街並みが広がり、足元には割れた石が散らばっている。周囲の景色は、想像していた異世界の光景とは程遠かった。高く聳える城壁の向こうには、ぼんやりとした灰色の空が広がり、町全体に陰鬱な雰囲気を漂わせている。

俺は、ただ無言で歩きながら、この異世界をそしてこの理不尽な現実を受け入れようとしていた。周りの人々は、俺が転生者であることなど気にも留めていないように、無関心に通り過ぎていく。たまに目が合っても、すぐに目を逸らされる。それは、この街がいかに排他的で、疲弊しきっているかを示している。

「マジかよ……。」

思わず漏れた呟きが、虚しくこだまする。こうして城の外に放り出された以上、何かしら自分の立ち位置を見つけなければならない。しかし、これまで何の準備もなく異世界に放り込まれた俺には、何を始めればいいのかさっぱり分からない。

街の中心へ向かって歩きながら、城の中で言われたことが頭をよぎる。「魔王討伐の囮」「使えない転生者」。王様や家臣たちが放った言葉が耳にこびりついて離れない。それでも、少なくとも自分が生きているうちは、何かしらの方法でこの異世界を生きていかなければならない。

「どうやって生きていけばいいんだ……。」

本当に何も分からないままだった。転生者として特別な力が与えられたわけでもなければ、王国に仕える立場でもない。ただただ無能な「薄汚いエルフの末裔」として城から追い出されただけだ。しかし、何の仕事もなく過ごすことになれば、またすぐに死ぬことになるだろう。

目の前に見える広場には、商人や兵士、その他の町の住人たちが集まっているが、誰も俺に声をかけることはない。むしろ、俺が歩いていると、皆がさっと道を開け、服の裾を払い、まるで俺が汚れたゴブリンか魔族かのように扱う。

「……こんな世界、どうしようもないじゃないか。」

愚痴を零しながら町を歩くうち、片隅に小さな店を見つけた。その店は他の店に比べてだいぶ古びており、周囲の雰囲気とはやや違った。棚に並べられているのは食料や薬草、薬品といったものだろうが、どれも見慣れない品ばかりで、特に高価なもののようには見えない。

俺はためらいながらも店の扉を開け、中に入った。店内は薄暗く、空気は薬草とアジアンテイストな匂いで満ちていた。店内の隅には中年のゴツめの男が座っており、俺が入ると驚いた様子でこちらを見てきた。

「すみません、ここはどういった店ですか?」

俺が声をかけると、男は少し黙った後答えた。

「ここは薬草や食料を扱う店だ。……だが、エルフがこんな町に来るとは珍しいな。」

やはり皆俺をエルフだと言う。自分が「エルフ」だと言われても、ピンと来ない。転生した自分の姿なんて鏡で確認したわけでもないし、この世界での「エルフ」という存在がどういうものなのかも知らない。

「エルフ……ですか?」

おそるおそる尋ねると、男は訝しげに目を細め、俺をじっと見つめた。

「お前、自分が何者なのかも分からないのか?耳を触ってみろよ。」

言われるがまま、俺は自分の耳を触ってみた。そこに感じたのは、若干尖った形状。どうやら、この世界で俺はエルフとして転生しているらしい。

「……そうみたいですね。」

曖昧に返事をすると、男は「やれやれ」とでも言いたげにため息をついた。

「まあいい。エルフは珍しいが、この町じゃそれほど歓迎される存在じゃない。どうせ、お前も小間使いか何かで城から追い出された口だろ?」

その言葉に、俺は内心苦笑いした。何も知らないはずの男の指摘が的を射ていることが悔しい。

「そんなところです。」

短く答えると、男は薄く笑った。

「生きるのに困ってるなら、少し手伝ってくれ。ちょうど足りない手があるんだ。」

その申し出は、正直、願ってもないことだった。

「いいんですか?」

驚きと感謝が入り混じった声で尋ねると、男は面倒臭そうに肩をすくめた。

「ただ働きはゴメンだって顔してるな。いいから、これを運べ。」

そう言って、男は店の奥から重そうな木箱を一つ持ち出してきた。中身はよく分からないが、ずしりとした重さが手に伝わる。

「これをどこに?」

男は店の外を指差し、近くの広場の方向を示した。

「市場の出店まで運んでくれ。そこまで運んでくれたら、小銭くらいはくれてやる。」

俺は無言で頷き、木箱を抱え上げた。異世界に放り出されて途方に暮れていた俺にとって、これは初めての「仕事」だ。大したことではないが、この一歩が自分の新しい生活の始まりになるかもしれないと思うと、少しだけ気持ちが軽くなった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。