【完結】異世界召喚されたのはこの俺で間違いない?

苔原りゐ

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霧深き道中

ルミナリスへの道は、思った以上に険しいものだった。乾燥した荒れ地を抜け、岩が転がる起伏の激しい道が続く。疲れた体に追い打ちをかけるように、空が灰色の雲に覆われ、冷たい風が頬を切る。

「ちょっと休憩しない?」リリが不満そうに声を上げる。彼女は背負った荷物をずらしながら、岩の上に座り込んだ。

「そうだな。一旦休もう。」俺は剣を地面に突き立て、荷物を下ろした。

エリザも岩の上に腰を下ろし、地図を広げて次の行程を確認している。「ここから森を抜ければ、比較的平坦な道が続くはず。でも、この森が少し怪しいわね……霧がかかる場所だって聞いたことがある。」

「霧か……また何か出てきそうだな。」俺は軽口を叩きながらも、内心では警戒していた。

ユリスは短剣を手にしながら周囲を見渡していた。「霧の中は、獣や魔物に隠れるのに最適な場所です。注意したほうがいいかもしれません。」

リリが不安そうな顔で俺を見上げる。「おじさん、また変なものが出たらどうするの?」

「その時は俺が何とかする。」俺は笑って彼女を安心させるように言ったが、自分でもその言葉にどれだけの自信があるのか分からなかった。

休憩を終え、俺たちは次の目的地である霧の森に足を踏み入れた。木々が密集し、薄暗い森の中に白い霧が漂っている。視界は10メートル先が限界だ。

「ここが……霧の森?」リリが小さな声で呟く。

「気をつけて進みましょう。何が潜んでいるか分からないわ。」エリザが周囲に目を光らせながら進む。

霧が濃くなるにつれ、空気が重く湿っていく。地面はぬかるみ始め、足を取られそうになる。そんな中、遠くから微かに聞こえる声が俺たちの耳に届いた。

「……助けて……」

「誰かいるのか?」俺は剣を構えながら声の方に注意を向ける。

だが、その声はあちこちから聞こえるようになり、まるで俺たちを惑わせるように移動している。

「幻聴か……?」俺が呟くと、エリザが険しい表情で言った。「ただの幻聴じゃない。この霧自体が魔法で作られているわ。」

その時、霧の中から突然、不気味な形状の生物が現れた。それは半透明で、身体の輪郭が霧とが溶け合っている。目は爛々と赤く光り、不規則な動きでこちらに近づいてくる。

「またか……!」俺は剣を握り直し、奴に向かって一歩踏み出した。

魔物は薄い体を波のように揺らしながら迫り、その中から霧の手が伸びてくる。俺はその手を剣で払い、接近戦に持ち込もうとするが、手応えがない。

「効かないのか……!」俺が苛立ちを隠せないでいると、エリザが叫んだ。

「実体が薄いだけ!魔法や急所を狙えば倒せるわ!」

ユリスが素早く駆け寄り、短剣を構えた。「足元を狙います。」

彼女の短剣が素早い動きで魔物の下部を斬り裂くと、霧がはじけるように分散した。だが、それでも完全には消えない。

「もっと攻撃を集中させる必要があるわ!」エリザが魔法の詠唱を始め、雷の魔法を放った。雷撃が霧の魔物を直撃し、その一部が焼き切れる。

しかし、残った部分が再び集合し、新たな形状を取る。

「しつこいな!」俺は剣を振り回し、周囲の霧を切り裂くように動く。リリは後方で怯えながらも、俺たちの動きを見守っている。

「おじさん、気をつけて!」リリが叫ぶと同時に、霧の手が俺の背後から迫ってきた。

「くそっ!」俺は間一髪でそれをかわし、体勢を立て直す。

「核があるはずよ!探して!」エリザの指示に従い、俺たちは霧の中心に目を凝らす。霧の中に赤い光が点滅しているのを見つけた。

「これか……!」俺はその光を目指して突進し、剣を振り下ろす。剣が光の中心に触れた瞬間、激しい衝撃が走り、霧が一気に消え去った。

魔物は断末魔の叫び声を上げながら崩れ落ち、霧が晴れると共に姿を消した。

徐々に視界が良好になり俺たちは疲れ切った体を引きずりながらその場に腰を下ろした。

「……これで本当に終わった?」リリが怯えた声で尋ねる。

「ああ、もう大丈夫だ。」俺は彼女の肩を軽く叩き、安心させた。

エリザが呆れたように微笑む。「本当にあなたは無茶ばかりするわね。でも、今回は助かったわ。」

ユリスは短剣をしまいながら、小さく頷いた。「皆さんのおかげで、なんとか……。」

俺たちは短い休息を取り再び行動を再開した。
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