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惨敗将軍ボルボル編
第17話 ボルボルに勝利!
しおりを挟む俺は無様に転がっているボルボルを車内から見つめていた。
き、き、気持ちいいぃ! 癖になりそう!
履歴書があったら趣味に『ボルボルを轢くこと』と書いてしまいそうだ!
普通の人間相手に轢くのはヤバイが、あいつは俺を殺したのだから是非もなし!
ボルボルは骨が折れているのか立ち上がれず無様にもがいている。
さてここで追撃して轢き殺すのもよいが……それではつまらない。
それに話を聞いている限り、なんかセレナさんとやらも脅しているみたいだし事情聴取も必要だ。
車から出てボルボルの元にゆっくり歩いていく。
「よくやったぞリーズ! 吾輩にも後で殴らせるのである!」
「え、えっと……こ、これはどういう……」
バルバロッサさんが爆笑しながら歓喜し、セレナさんも魔法の発動をやめて俺達を唖然と見ていた。
そしてボルボルは無様に地面に這いつくばったまま、こちらに怯えた顔を向けてくる。
「ひ、ひいっ!? り、リーズ! お前、ボキュにこんなことしてっ……!」
「お前さ、セレナさんに何したの? 脅してたのはわかるけど」
「はっ!? そ、そうだセレナ! ボキュを助けるんだなっ! さもなくばポーションが……! それに後方部隊がつれてる妹の命も保証しないんだな!」
「……っ!」
セレナさんは我を取り戻したかのように、再び俺達を敵意を向け始めた。
だが俺はすごく気になっていることがある。
彼女の魔法というか魔力が少し強すぎることだ。
業炎鎧は冷気に弱いと言っても、あの強烈な熱を持った鎧を瞬時にひび割れるほど冷やすのは大変だ。
ましてや三十ある業炎鎧の全てを同時に壊すなど、それこそ俺の知っている銀雪華《シルバースノウ》の話を聞いても無理そうなのだ。
彼女の話は力を振り絞って百の魔物を凍らせたというが、それよりも業炎鎧を三十壊すほうがよほど難しい。
というか、俺の造った業炎鎧がそんな簡単に砕けるとは思いたくない!
それとポーションが必要な病気であると組み合わせれば、思い当たる節がひとつある。
「魔力暴走症候群じゃないですか? A級ポーションとかを定期的に飲めば寛解、完全に治癒するにはS級ポーションがいる類の」
「えっ? あ、はい。そうです……A級ポーションを定期的にもらって、近いうちにS級をもらえる約束で……」
「さ、さっさとやるんだな! S級ポーションあげないんだな!」
セレナさんは冷や水をぶっかけられたかのように、困惑しながら返事をしてくれる。
やっぱりそうか、氷の悪戯程度で業炎鎧が壊されるのは違和感あったからな。
しかしS級ポーションね……そんなもの、ボルボルごときが手に入れられるとは思えないけど。
それにA級についてもそうそう手に入る物ではないし、アーガ王国に製造できる者はいなかったはず。
「おいボルボル。S級ポーションはどうやって手に入れるつもりだ?」
「ぼ、ボキュにかかれば余裕なんだな!」
「まだ持ってないんだな……うぇえ口調被ったみたいだ気色悪い……。じゃあ聞くが、A級ポーションはS級が手に入るまで渡す予定なんだよな?」
「あ、当たり前なんだな!」
ボルボルは少し動揺しながらも叫ぶ。
「ふーん……今までA級ポーションを造っていた俺がいなくなったのに、どうやってS級手に入れるまで安定的に渡すつもりだ?」
俺がそう告げた瞬間、ボルボルの顔が凍り付いた。
それを見てセレナさんは驚愕の顔を浮かべる。
「……まさか、私《セレナ》を騙して……っ」
「ち、ち、ち、違うんだな! そいつが口から出まかせ言ってるんだなぁ! 信じずにさっさとこいつら全員殺してぇ!」
「さあさあお立合い! なんとこの薬草が一瞬でA級ポーションに!」
マジックボックス化したズボンのポケットから薬草を取り出し、掌ですぐにA級ポーションへと変換する。
百聞は一見に如かずだ。口先だけのボルボルなんぞ相手にもならない。
「うむ! リーズはアーガ王国から逃げて我が国についた者! こやつらの今までの物資は全てこの男が用意しておった! つまりもはや奴らにはポーションなど用意する術はない!」
バルバロッサさんも俺の言葉に太鼓判を押してくれる。
実際にA級ポーションを用意した上に、信頼できる人からの言葉を聞いたのだ。
セレナさんはボルボルを疑惑の目で見続ける。
「ま、待つんだなぁ!? あいつらがA級ポーション作れるのと、ボキュが用意できないのは別問題なんだな!」
「……なら渡してください。今月分はこの戦いに勝ってからと、まだもらっていません。勝利したらすぐ渡すために持っていますよね?」
「…………そ、その男が馬車壊したせいで無くなったんだなぁ!」
ボルボルの目が泳いでいて明らかに怪しすぎる。
……すでに品切れだったのかな。
この戦いでセレナさんを使いつぶす予定だったとか……こいつなら容易に想像できる。
「あ、じゃあ瓦礫とか探す? ポーション落ちてたら見つかるでしょ」
「……いえ、結構です。そもそもこの戦いに勝ったらS級ポーションをもらえると言っていました。用意できないのに。最初からこの戦いで使い捨てにするつもりだったのでしょう」
ボルボル、すでに自分で墓穴掘ってるじゃん。
実に準備がいいじゃないか、初めて感心したぞ。
「よし、じゃあボルボルを殺そう」
「ひ、ひいっ!? 誰か!? 誰かいないんだな!?」
ボルボルは必死に周囲を見回すが、彼の指揮していた軍は既に突撃した後だ。
しかも……。
「前を見ろよ。お前らの軍なら矢に射殺されるか、炎に焼き焦がされてるよ」
それは地獄のような光景だった。地面から炎が立ち上がり焦土と化している。
弓に貫かれただけではなく、炎で焼き焦げた敵兵の死体が無残に転がりまくっている。
必要以上に焼き過ぎ、いややりすぎな気もする。
逃げ出そうとしたのか、俺達の軍に背を向けて倒れている兵士たちもいた。
戦意喪失した相手だろうと言語道断とばかりに、背後から攻撃して一切の手心を加えていない。
生き残った兵士はとっくの昔に逃走していて、すでに戦いは片が付いている。
そして不快な……いや好き嫌いの別れる匂いが戦場に漂っていた。
死体の数はザッと見る限りでは千もないし、たぶん前と同じく戦意喪失してほぼ逃げ散ったんだろうな。
これでもボルボルは今回の侵攻軍の最高指揮官だ。なのに俺達を相手にするために軍の指揮を自ら放棄した。
仮にもトップであるこいつがいないと分かれば、形勢不利と悟った兵士は即座に逃げ出すし止められる者もいない。
「そ、そんな……ボキュの一万五千の軍勢は……」
「えっ……こ、これをアミルダ様が……? あの人にここまでの力は……」
「ちょっと罠を仕掛けてたんですよ。少しよく燃える不思議な液体をね」
クロスボウだけでは足りないので秘密兵器を色々と考えた。
だが数を揃える必要のある武器などはどうしても用意に時間がかかる。
それに揃えるだけではなくて、兵士の訓練のためにも早めに作れなければならない。
だが兵士たちは今回はクロスボウの訓練で精いっぱいだろうから難しい武器は諦めた。
なので使用が簡単でかつ大きな戦果をあげられるもの。
つまり我が軍の最大火力であるアミルダ様を強化する方向で考えたのだ。
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アーガ王国軍副隊長は兵たちを指揮して、ハーベスタ軍へと突撃させようとしていた。
「すすめぇ! 奴らの矢は連射性能が低いと見た! 距離を詰められるはずだっ! 死を恐れるなぁ!」
副隊長は叫びながら自らも前に進むフリをしている。
実際は安全な後方部にいて矢面に立たず、他の兵士が肉壁になるように移動していた。
「くくくっ……無能な隊長がいなくなればこちらのもの……! 兵士たちがいくら死んでも勝てればいいんだよ!」
副隊長は内心ほくそ笑む。やっと自分にも機会が回って来たのだと。
ここでアーガ軍を自分の指揮で勝たせれば大出世間違いなし。
そんな手柄の誘惑に見惚れていた彼もまた、自軍の士気がほぼ壊滅していることに気づかなかった。
「く、くそぅ……指揮官はバカか! なんで矢に向かって突撃しないとダメなんだよ! 話が違う! ハーベスタ軍は雑魚でヤリ放題だって聞いたのに!」
「畜生……俺達に死んで来いって言うのかよ!」
兵士たちはもはや限界だった。
あと少し何かがあれば瓦解するような状況、例えるなら決壊寸前のダム。
そんな中で必死に走っていた者たちは、嗅いだことのない匂いに鼻をヒクヒクさせ始める。
「……ん? なんか変な匂いしねぇか?」
「なんだこれ臭いな……いったい……水たまりから匂いがするのか?」
彼らの周囲の地面には少し濁った液体の水たまりが多数できている。
そしてそれが彼らの最期の言葉だった。
ハーベスタ軍から小さな火球が発射され、地面に着弾すると同時に巨大な炎が燃え上がる。
それはアーガ王国の最前の兵士百人ほどを飲み込み、黒こげになった死体たちが地面にバタバタと倒れる。
小さな火玉はアミルダの魔法である。
燃え広がった炎は緒戦で彼女が放った炎の龍にも劣らぬ火力、だが彼女は先ほど炎の龍を撃った時点ですでに魔力はほぼ空。
そして今も回復はしていないし、そもそも彼女が放ったのは単なる小さな火球に過ぎない。だがとある液体で炎が燃え広がった。
それはガソリン、人類が燃やすために造った狂気の液体。
なのでこの炎はアミルダの力で引き起こしたものではない。だがアーガ王国兵士からすれば彼女が撃ったようにしか思えない。
緒戦でも炎の龍によって兵士が今と同じほど焼かれたが、アーガ王国軍は多少乱れただけで立ち直った。
だが今回は違う。巨大な炎の魔法は一発限り……そう聞いていたからこそ兵士たちは戦えたのだ。
それが嘘だったと誤解すれば、兵士たちは全てのことに疑心暗鬼になる。
「指揮官は俺達を騙していたのか!? もう炎の魔法は飛んでこないって!」
「う、嘘だったんだ! また炎の魔法が飛んでくるかもしれないぞ!?」
ただでさえ崩壊寸前の軍に指揮官への不信感が爆発した結果。
「ひ、ひいっ!? ま、魔女だ! 炎の魔女だっ! 逃げろ!」
「こんなのやってられっか! 矢だけならともかく魔法もなんて無理だっ!」
アーガ王国軍は完全に瓦解し敗走していく。
「ま、まてっ! 貴様ら、敵前逃亡は死刑にっ……」
副隊長はそれを阻止しようとするが誰も話を聞かなかった。
当然だ、彼は成り行きで指揮権を引き継いただけの指揮官。そんな者のために死をよしとする者はいない。
そして兵士たちが後退して逃げ去り、彼はその場に踏みとどまった結果。
「あ、え……矢……が……」
副隊長は最前列の矢面に立つことになり、クロスボウに胸を貫かれて倒れた。
それを遠くから見ていたアミルダはため息をつく。
「……強力ではあるが今後は易々とは使えぬな。事前に撒いておいて敵をおびき寄せねばならぬ。しかも制御が出来ずに敵の物資まで燃やしかねない。匂いもキツいとなれば」
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