チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~

クロン

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四国同盟編

第35話 モルティ国涙目

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 モルティ王の率いる軍隊がハーベスタ国に向かって進軍していた。

 もうすぐ国境にたどり着くがハーベスタ軍は迎撃に動く様子はない。

「くくく……弱小領地が邪魔をするからこうなる。さっさと我らに土地を譲り渡せばよかったものを」

 モルティ国とビーガン国は飛び地である現状を解消し、隣り合う国になるのが悲願であった。

 彼らはルギラウ国とハーベスタ国は間に挟まる邪魔な盗人たち、という考えを持っている。

 その二国は我らの土地をかすめ取った大罪人なのだと。

「まったく盗人猛々しいにもほどがある! あの二国の領土は元々我らのものであったのに! 歴史的事実もあると言うのに!」

 これは完全に言いがかりである。

 モルティ国とビーガン国の歴史的資料には、一揆によってルギラウ国とハーベスタ国が誕生したと記載されている。

 それまではモルティの土地であったのに、土地の豪族に無理やり奪われたのだと。

 だがその歴史的資料自体が現王の二代前に作られた捏造であった。

 ルギラウ国とハーベスタ国の土地が、モルティ国のものであったことは一度もない。

「まったく……だがこれでとうとう取り返せる! とはいえあの女王に従う民は不要! 兵士たちよ、ハーベスタ国の領地では略奪の限りを尽くせ! 盗れる物は全て盗り、奪えぬ物は燃やし尽くせ! 女は犯してよい、男は殺してよい! 何も残すな!」

 モルティとビーガンの二国は、ルギラウ国の領土に価値を見出していた。

 ルギラウ王はあまり有能とは言えず、民からもあまり評価が高くない。占領すれば簡単に調略できる。

 だがハーベスタの主君であるアミルダは、民たちから物凄く慕われている。

 そんな者の土地を奪って支配するのが大変なのは目に見えている。民たちだって従わない可能性が高い。

 ならば……一度綺麗さっぱり燃やしてしまえばよい。

 燃やしてしまうのは他にもメリットがある。

 アーガ王国がモルティとビーガンに侵略するなら、ハーベスタ国を通り道かつ侵攻の拠点にと考える。

 というよりもアーガ王国とモルティ、そしてビーガンとは隣接する土地が少なく攻めづらい。なので必然的に現ハーベスタの国境から攻める可能性が高い。

 だがその拠点にしたい場所に物資が一切なければ、お得意の略奪侵略は無理で物資が不足する。

 そうなれば奴らはモルティ国とビーガン国に対して、僅かに面している国境から攻めなければならない。

 攻撃側の侵攻ルートが制限されれば、どうしても一度に戦える兵の数も減ってしまう。それに防衛設備などもそこに集中して建てればよい。

 現状維持を保てばよい防衛側にとって凄まじく有利になる。

 つまり元ハーベスタ領土を焦土にしてしまえば、アーガ王国に対する盾にもなって一石二鳥だった。

「ハーベスタめ、今までの罪を清算してもらうぞ! 兵士たちよ! これより先は敵地、だが敵軍はルギラウ国に攻めていてもぬけの殻だ! 思う存分好きにやるがよい! これは領地を取り返す正しき戦である!」
「「「「「おおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」

 そしてとうとう国境線を超えたがやはり迎撃の兵は来ない。

(所詮は小娘よな。我らの謀略を見抜けもせぬ!)

 完全に勝利を確信し、そのまま近くの村へと進軍を指示しようとした時。

 モルティ王に対して側近が耳打ちをしてくる。

「陛下! 伝令の早馬が来ております!」
「なんだこんな素晴らしい時に……仕方がない、通せ」

 モルティ王の前に通された兵士は息を荒くしながら、悲鳴のような叫びをあげた。

「い、一大事でございます! あ、アーガ王国が我が領土に侵攻しております! 国境付近にて迎撃していますが敵軍の勢いが強くこのままでは……!」
「…………は?」

 モルティ王はその報告を理解できなかった。

 アーガ王国はルギラウ国と組んで、ハーベスタの簒奪のために現状で動員可能な兵を全て動かしていた。

 つまり別動隊なんてものは存在しない。

 そしてアーガ王国軍の先鋒である二千の兵が迎撃されたので、勝負を諦めて後方に撤退したはずだ。

「……まさか後方部隊が我が国に攻め入ったのか!? 何故だ!? ここでアーガ王国が我らを攻める利点など……!?」

 モルティ国は決して全軍を引き連れて、ハーベスタ領を侵攻しているわけではない。

 ちゃんとアーガ王国に対する防衛用の兵士は残しているので、別に隙を見せてはいないのだ。

 そしてアーガ王国軍は何度も連敗して弱っている。

 そんな状態で更に攻め口を広げて我が国に攻めてくる理由がモルティ王には理解できなかった。

「敵の数は!?」
「六千です!」
「ハーベスタに攻めた軍の残り全部で攻めてきただと!? ハーベスタへの重しはどうした!? 根本的に奴らの作戦が崩壊しているではないか!? それに我が防衛用の軍は何をしている!? 奴らなど数が多いだけの弱兵ではないか!」
「ふ、不明です! ですが事実として押されていて、現状では支えられません!」

 モルティ王、いやモルティ国自体が致命的な勘違いを持っていた。

 それは……アーガ王国軍は凄まじく弱い軍隊との認識だ。

 万が一、アーガ王国軍が攻めてきても残した兵で簡単に迎撃できると。

 ハーベスタにすら惨敗を繰り返す軍なのだからと、パパッと撃退して終わりと。

 だがその目論見は間違っていた。

 ようやくハーベスタ以外と戦えたアーガ王国の兵士たちは意気軒高で、惨敗していた軍とは思えない強さで戦場を暴れている。

 そもそもアーガ王国軍は農民兵ばかりでなく、職業軍人もそれなりにいて本来は強い軍隊だ。

 それが惨敗を繰り返していたのは彼らが弱いのではない、ハーベスタ軍が異常なほど強すぎただけ。

 つまりこのまま攻めれば防衛がままならず、アーガ王国軍に自国領土が侵略されかねなかった。

「……ぐ、ぎぎ! すぐにモルティ国へ戻り敵軍を迎撃する! アーガ王国め、我らの隙をついて攻めるとは何と卑劣な! あの悪魔どもを決して国内にいれるな! 略奪の限りを尽くされるぞ!」

 こうして悪魔同士による醜い争いが開始された。

 モルティ国は全軍をもって苦戦しながらもアーガ王国軍を撃退した。

 だがハーベスタに攻めてきた軍の合流が遅れた結果、僅かだが領土を奪われる結果となってしまう。

 そしてアーガ王国としてもその程度の領地など、ほぼほぼ不要なものであった。

 両軍ともにズタボロになりまさに痛み分けの戦いとなる。

 奪われて占領された村を遠くで睨みながら、モルティ王は激怒していた。

「バカな! 何故奴らは我が領土を狙ったのだ! これではハーベスタのひとり勝ちではないか! アーガ王国とてあの国が勝つのは最も望まぬことのはずだ!」

 モルティ王の予想は間違っていなかった。

 この侵攻作戦はアーガ王国、モルティ国が共に得しない戦い。

 事実としてアーガ王国の中枢部もこの侵攻を命令していない。

 だが気づいた時には勝手に軍が動き、すでに戦闘が始まってしまっていた。




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 本国の軍本部の建物の個室。そこでアッシュとシャグがくつろいでいた。

「そろそろハーベスタ国占領の報告が来るころかと思います」
「うむ! ルギラウ国と我らに挟み撃ちになってはひとたまりもあるまい! ああ、それとあそこの女王と銀雪華は私に譲り渡して欲しい」
「あらあら。ペットにでもするおつもりで?」
「いや違う。奴らはワシの愛する息子を殺したのだ! なので責任を取らせてボルボルの生まれ変わりを産ませる!」
「…………き、奇抜な発想ですわね」
 
 シャグの謎の発想に流石のアッシュも顔をひきつらせていた。

 そんな中で扉がノックされて、一人の兵士が入室してきた。

「失礼します! 軍の戦果を報告に参りました!」

 伝令係の顔は明るい。悪い報告ではないのが感じ取れて、二人は愉快そうな笑みを隠しきれていない。

「あらあら、待ってたわよ!」
「うむ! さあ早く報告を!」

 とうとうアーガ王国が勝ったのだと二人は歓喜の声をあげる。

 兵士も得意げな顔をしながら口を開いた。

「はい! 報告します! 我が軍のモルティ国への侵攻ですが、敵の領地の一部を削り村を二つほど占領しました!」

 そして部屋の空気が停止した。

「………………は?」
「…………な、なにを言っておるのだ?」
「え? いえ命令書通りにモルティ国に侵攻し、土地の一部を削り取ったのですが」

 しばらくの間の静寂。そしてそれを切り裂くように、アッシュとシャグは血相を変えた!

「どういうことよ!? 意味わからないわ!?」
「え? い、いえ。命令書でモルティに攻めるようにと……シャグ様の印章つきの命令書が……」
「何故我が軍がモルティ国に攻めているのだ!? 命令書など出してはおらぬ! まんまと騙されたのだ、この……馬鹿者がぁ! こやつと軍隊長の首をはねろ!」
「もちろんですわ! すぐに責任を取らせます!」
「お、お待ちください! ですが確かにシャグ様の印章つきの……!」
「そんなわけがあるまい! 偽造された印章に騙されおって、この無能の極みが!」

 シャグたちの怒りはあまりに理不尽だった。

 なにせ印章はボルボルが持っていた本物なのだ。間違いなくシャグの家の印章で、本来ならばそこまで重要な物を盗られたこと自体が大失態だ。

 しかもボルボルの馬車にはご丁寧に、印章の押し方や暗号パターンなどが記載された紙まであった。

 覚えられないためにカンペしていたのだが、アミルダはそのおかげで偽造でありながら本物と全く同じクオリティの命令書が作れたのだ。

 それを偽物と見分けろなど無理に決まっている。

「ま、まずいですわ!? ここまでの失態となると……私の軍内部の立場も危うく……!」
「な、何としてももみ消すのだ! 我らの作戦は最初から、モルティ国の隙を作って攻めるためのものだったと誤魔化せ!」

 こうしてアッシュたちは事後処理に追われることになった上、貴重な戦力を浪費してしまった。

 この一連の流れで得をしたのは敵が潰し合った上に、ルギラウ国の領土を手に入れたハーベスタ国だけである。
 
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