チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~

クロン

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刃を交えない戦争編

第71話 俺個人で完結してはいけない

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 先日の評定から一晩明けて、また俺達は白亜の城の玉座の間へと集められた。

 ……城の名称が決まってないの不便だな。

「よく来たな、まずは報告だ。クアレール王がかなり弱り切っているらしい。おそらくもうもたない」

 玉座の前で立っているアミルダ様が少し悲しそうな顔をする。

 俺達がモルティ国を下して一息つけたところでか……まるで図ったかのようなタイミングだ。

 いやあのクアレール王のことだ。ハーベスタ国の状況を聞いて、力尽きるようにしたのかもしれない。

 何にせよ、凄まじい傑物だったのだろう。同じ時間を生きられなかったのは少し残念だ。

「クアレールの王位は長男が継ぐ。よほどのことがなければ問題ないだろう。それよりも我が国だ、今後の動きの指示を行う」

まずはバルバロッサさんに視線を投げかけた。

 ……バルバロッサさんって完全に軍人だよな。彼は内政においてはあまり役に立たないような……。

「リーズ、顔に出ているぞ。バルバロッサに政務は難しいのではと」
「い、いえそんなことは……」
「安心しろ、その予想は正しい。バルバロッサに政務を手伝わせても余計な仕事が増えるので、何もさせない方がいくらかマシだ」
「はっはっは! 吾輩もそう思うのである! 吾輩に交渉をさせれば握手した相手の手を握って潰しかねないのでな!」

 もはや万力の類である。

 相変わらずあらゆる面で人間凶器だなこの人。

「確かにバルバロッサに商談や交渉の類は任せられん。また下手に書類仕事をさせようにも紙が破れるし、ペンが指での圧力に耐えられずへし折れてしまう。そんなわけでバルバロッサはしばらく貴様の護衛にする」
「アミルダ様の護衛はよろしいので?」
「私はしばらくこの城に籠るので普通の兵士の見張りで十分だ。それにこれでも優秀な魔法使いだからな」

 アミルダ様は手のひらの上に小さな炎を灯した。

 いつも派手な炎の龍しか出さないので勘違いしがちだが、彼女は別に一発屋しか出来ないわけではない。

 本来は炎の鞭を出したり火炎放射したりと色々できるらしい。

 ただ戦場で最も大きく影響を与えられるのが炎の龍なので、いつもあの魔法をぶっ放していると。

「それでリーズ、貴様には経済の活性化のためハーベスタの特産品を作って欲しい。儲かりそうな物で可能であれば持ち運びが簡単、つまり交易に便利な物をだ」

 交易に便利……馬車で運びやすいとかそんな感じか?

 念のために確認くらいはとっておこう。意識の共有はすごく大事だ。

 相手の指示にただ従うのではなくて、その依頼の理由を理解することでよりよい仕事ができるのだから。

「以前のお米ではダメですか?」
「あれも腐らないので悪くはない。だがもっと小さいか、もしくは同じ体積でも高く売れる物がよいな。ようは行商人がこぞって他国に売り、利益を得られるような商品が欲しい」

 なるほど、つまり儲かる輸出品が欲しいというわけか。

 米は物珍しさでそれなりには売れるかも知れないが、重さの割にすごく高く売れるみたいなことは難しいだろう。

 というか米の値段が高騰してしまうと困るのだ。何せ我が国の第二の主食になってきているのに、庶民が買えなくなったら大困りだ。

「我が国は現状だと輸入ばかりで、金貨が外に消えていく状況だ。これでは経済が回るはずもないので流れを変えたいのだ」
「あー……」

 アミルダ様の依頼は金を儲けることではなくて経済の活性化だ。

 同じようであるが大きく違うところがある。それは……。

「経済を回すとなると、俺が金貨や売れる物を魔法で生み出しても微妙ということですね?」
「そうだな、少なくとも最適解ではない。国が金貨を配るだけでは商人は大きくなれないので、可能であれば貴様の魔法なしで民が製造できる物がよい」

 アミルダ様は力強く頷いた。

 俺のチート生産でいくら外貨を稼いでも一時的な物に過ぎない。

 結局ハーベスタ国自体が貿易をうまくできないと、また稼いだ金貨は外に出て行くばかりだ。

 なので水田の作り方を教えて、田植えが始まっている米のように国民が自分自身で生産できる必要がある。

 つまりはハーベスタの民衆の力だけで用意できて、高価で運びやすくて他国に売れる物を用意しろと……なかなか難儀だな。

 高価で運びやすいというのが肝だ。例えば魚を特産品にしても、あまり外に売り出すのは難しい。

 腐ってしまうからな。干物にするという選択肢もあるが……それでも外貨稼ぎとしては少し微妙だ。

 まあ魚介類が取れるならば、その現地に外部の人を集めることで経済を活性化させるという方法もあるが。

「わかりました、では特産品を考えます」
「任せたぞ。それと特産品でなくとも経済を動かす策があれば提案して欲しい。以前の楽市楽ギルドのようにな」
「か、考えておきます」

 アミルダ様は俺に笑いかけてくる。あ、明らかに期待を向けてきている……!

 こんなことなら大学で経済学専門だったらよかったのに。そうすれば知識無双できた……かもしれない。

 しかし金貨不足で経済が回らないか……いっそ現代地球みたいに紙幣経済にしてしまえばよいのに。

 金本位制とかの仕組みあった気がする。もう少しちゃんと思い出したら提案してみようかな。



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 アーガ王国では金貨が不足している。

 戦争に明け暮れた上に連敗を繰り返した結果、経済も民衆もボロボロになった。

 アッシュは自室で部下からその報告を受け、その内容に発狂中だ。

「ああああああ! 知らないわよ経済なんて! 私は軍人なのよ!?」
「し、しかし街の制圧後の面倒を見ているのはアッシュ様で……金貨不足で他国からの物資購入が滞っております。このままでは……」
「くそっ! バベルを切り捨てて何とか危機を脱したはずなのにっ!」

 アッシュはすでにバベルをトカゲのしっぽ切りしていた。

 今回の一夜城の建設失敗は大きい。アーガ王国の財政と威信の両方に大損害を与えている。

 城ひとつ建てられるほどの物資をムダにした上、ハーベスタ国には国境付近に城を建てられたのだ。

 いくらハーベスタ国は弱いと国内に喧伝しても百聞は一見に如かず。

 聳え立つ白亜の城を見ればどちらに趨勢が決しているかは明らかで、すでに国境付近の民衆はハーベスタ国に寝返り始めている。

「バベル様の公開処刑は明朝行われる予定です」
「間違えないで、あれは裏切り者のバベルよ」
「……失礼しました」

 部下は不承不承と言った態で命に従う。

 バベルはハーベスタ国に内通していたとして、今回の作戦の責任を全て押し付けての公開処刑となった。

 とはいえ既に彼は城の崩壊に巻き込まれて狂っているので、「あー」とか「だー」としか発する程度の存在なのだが。

「バベルはせめて最後まで有効活用しないと……これでひとまずは時間が稼げるはず……!」

 普通に考えればバベルに責任を全て擦り付けるなど不可能だ。

 だがそこは自分の身を守ることだけは得意なアッシュ。周囲の汚点をつくことで、ひとまずの処罰逃れに成功していた。

 その汚点とは、バベル以外にもハーベスタ国に内通している者がいるのでは? と匂わせる酷い内容なのだが。

 すでにアーガ王国内からもハーベスタ国に内通して協力、自分達が勝っても負けても助かろうとする者たちが出始めていた。

 アッシュはそんな彼らに圧力を与えていたのだ。この件で私を責めるならば、お前たちも道連れにしてやるぞと。

 内通を邪魔されたくない者たちと、味方の内通よりも今回の件で責められたくないアッシュ。

 互いの利害が奇妙に一致してしまったのだ。

「それであの……金貨不足はいかがいたしましょうか。このままでは我が占領地の経済が……」
「足りないなら増やせばよいのよ。今の金貨に銅とか混ぜて水増ししなさい! そうして増やした黄金を金貨にすればぼろもうけよ!」
「な、なるほど……! すぐに取り掛かります!」
 
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