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クアレールの内乱
第118話 パプマ戦国時代
しおりを挟むパプマの王都は地獄絵図と化していた。
パプマを裏切った軍が王都に向かった後、議会はロクに抵抗もできずに占拠されてしまう。
議会からすれば総力を集めた軍だったので、それが総崩れになった上に一部が裏切れば抵抗できる力などもうなかった。
「や、やめてくれ! 私たちはパプマを導いたのにっ!」
「私は国内産業派だっ! 何もしていないっ!」
「悪いのは全て逃げた商業ギルド長だ! 我らは暗殺のことなんて知らぬ!」
捕縛された議員たちは必死に言いつくろうが、兵士たちからすればどうでもよい話であった。
「ここまで滅茶苦茶な事態に導いておいて、なお何もしなかったお前らも同罪だっ!」
議員は見せしめとして全員がギロチンで処刑されて、首だけハーベスタ国に引き渡された。
アミルダは「こんなのいらん」と突っぱねた。そりゃいらんわな……。
これが王であったなら勝利の御首《みしるし》として晒し首に使えたかもしれない。
だがパプマは議会制なので議員ひとりひとりの権威は低い。仮に首を晒してもこいつ誰? となり得る可能性が大きい。
そんな奴らの首など何の価値もない代物である。
こうしてパプマの議会は完全に滅んだのだ。だが問題はここからである。
「議会を潰した俺こそがパプマの王になる男だ!」
パプマ裏切り軍のトップが王を自称し始めたのだ。
明らかに欲にかられた結果であり、当然ながら何の根拠も大儀もない。
クアレールの第三王子どころか、第四王子ですら王族という権威はあったのだが……この男は論外であった。
たまたま迎撃軍の最高司令で、与えられた軍を率いて裏切っただけ。
そんな者の戯言など誰も耳を貸さなかった。では……今のパプマは誰が統率するのだろうか。
答えは簡単だ。まとめる者がいない無政府状態になる。
各地で有力者たちが群雄割拠して、各々勝手なことを言い始めた。
「この私がパプマを取りまとめる!」
「私は香辛料ギルドの長を継いだ者として、この国を導く義務がある!」
ある者は力で覇を唱え、またある者は己が権威を主張する。
もはや戦国時代の日本のように、各領主や代官たちが国から与えられた土地を勝手に自分の物にしていた。
彼らはその土地の長だと名乗り、国にも大して従わずに独自の勢力を集めて行く。
ちなみに国内でこんな争乱を起こしていたら、普通ならば他国に攻め滅ぼされる。
日本は島国で他国からの侵略がほとんどなかったからこそ、大勢の大名たちがそれぞれ一国の主だと主張できたのだ。
戦国時代レベルの群雄割拠はそうそう起きることではない。
パプマの場合は周辺諸国ズと面しているので、こんな内乱をしている場合ではない。
共通の敵がいれば自ずと折り合いをつけて協力してできるものだ。
だが何故か争い続けていた。そうして全勢力弱り切れば、これ幸いとハーベスタ国に侵攻されるだろう。
なお誰かがパプマ統一を成しえそうなら、それはそれで力をつけられたら面倒なので属国にならなければ攻められるだろう。
もはやパプマは終わったに等しかった。
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「というのが顛末だ」
「地獄ですかね?」
パプマの出兵から戻ってきた後、すでにアミルダは出兵していた。
仕方がないので俺もビーガンに単独で向かい、現在はビーガンの王都にある王城の一部屋でアミルダの話を聞いている。
すでに彼女はビーガン王都を占領し終えて、事後処理に入る段階であった。
しかしパプマについては何という悪夢だろうか。
日本の戦国時代と言えば聞こえはよい。だがパプマはどうなろうが、我がハーベスタ国に滅ぼされるのが確定しているのが痛すぎる。
三国志にしろ戦国時代にしろ、身内で争っても外部に侵略されない環境だからこそ発生するロマンだよ。
誰が勝とうが敵国に滅ぼされるだけってなると、滑稽な道化以外の何者でもない。
「では次はビーガン国だな。あれについてはまともに軍もいなかったので、王都に進軍して占領した。ビーガン王は逃げたが追って捕縛したので、後は折を見て公開処刑の予定だ。すでにビーガンという国は存在しない」
ダイジェストのように滅ぶビーガン国。
まああいつらは兄弟国家のモルティ国がいなくなった時点で、どう足掻こうが詰んでいたからな。
「この元ビーガン王都は引き続き、ビーガン街として残す。ビーガンはもはやハーベスタ国の一都市でしかない、という宣言だな」
「なるほど……それでまたルギラウ国占領後みたいに、貴族のヤバイ特権とかあったのか?」
「聞きたいか? まず国民全員に支払うのを義務付けられた税があるが、貴族は支払わなくてよい。その分だけ民にしわ寄せが行くので、貴族ばかりが潤って民は削られていく仕組みだ」
「いきなり凄まじい火力のヤバさが……」
なんで金に余裕がある貴族が税免除なんだ……。
「他にも領主が領民の幼子を強姦したとか、領民に対して国の税とは別に独自の税を取り立てなど。まあ枚挙にいとまがない。貴族に法なし、みたいな状態だったようだ」
「兄弟国家のモルティ国はもう少しマトモだった気が……」
「何だかんだでモルティ王は、無能な動きはあまりしていなかったからな。我らがそれ以上の動きで叩き潰しただけで。最期も兵の士気をあげるために、離れろと言ったのに城壁の上に自ら立ったのは評価する」
死んでから上がっていくモルティ王の株。そういやあいつは城壁の崩落に巻き込まれてたなぁ。
王が前線に出て兵たちを鼓舞すること自体は間違ってないのだ。
奴だってまさか二日程度で壁の下に洞窟を掘られて、城壁が全部崩れるなんて夢にも思わなかっただろう。
ボルボルならそもそも敵軍の矢面に立つことすらしないからな!
第四王子とかも酷いムーブが目立つ中、同盟破棄以外のやらかしがなかったモルティ王は比較的強敵だったのか。
「陽炎を差し向けた元商業ギルド長についてはすでに手は打っている。さて……ようやく後方に憂いはなくなったな」
アミルダは俺の方を見つめて、少し強気な笑みを浮かべている。
「元ビーガンの土地の掌握にそれなりの時間がかかる。だがそれが終われば……こちらからアーガ王国に攻め入る」
「……!」
とうとうか。ずっと防衛戦を行って来たアーガに対して、こちらから反転攻勢を仕掛ける時が来る。
俺はアーガを滅ぼしてアッシュに復讐するためにハーベスタ国にやってきたのだ。
ようやく本懐を遂げる時が近づいてきた。思わず拳を力強く握っている。
「今のアーガなら恐れるに足らずだな。一万の軍すら扱えなくなったんだから」
アーガ王国、先日もこちらに一万の軍を編成した。だがハーベスタ国との国境にたどり着く前に兵糧不足で霧散したからな。
もはや奴らには大軍を維持する力がないのだ。
あいつらバカみたいに戦線を広げて来たからな!
アーガにとって北に位置するボラスス神聖帝国や、東にあるエメスデス王国という大国とも争っている。
そんな状態で俺達にまで攻められたらひとたまりもない! 三国に挟まれて潰される運命だ!
アーガ王国め、お前らの命はあとわずかだ! ここは英気を養うためにぱーっとやるか!
「よし前勝祝いに軽く宴でも……」
そう告げようとした瞬間、兵士が勢いよく部屋に飛び込んできた。
「大変です! アーガ王国とボラスス神聖帝国、そしてアーガの東に位置するエメスデス王国の三国が同盟を宣言しました!」
くたばれアーガ。
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