チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~

クロン

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クアレールの内乱

第120話 ボルボルの迷差配


 ボルボルの復活。

 その事実はすぐにアーガ王国中に広がって、様々な方向に多大な影響を及ぼしていた。

「そ、そんな……!?」

 兵士たちはその蘇りに意気消沈して士気が粉々になった。

「なんでボルボルだけがっ! この私の息子も亡くなったのに! アッシュ妃の身内びいきだっ!」

 戦いで息子を失った貴族たちは激怒して、アッシュの求心力がより一層低下。

「死者蘇生とはやはりボラスス教は素晴らしい教えだ! アーガ王国もボラスス教団に従うべきだっ!」

 アーガ王国内部で他国であるボラスス宗教勢力が更に拡大。

 蘇って即座に足を引っ張るのは、ボルボルの面目躍如であろうか。

 そしてアーガ王宮の応接間にはアッシュ、シャグ、ボルボルの新アーガの三傑(自称)が集まっていた。

 他には正式に同盟を結んだボラスス教皇もいて、彼らは机を挟んで会議をしている。

「ボルボル……ボルボルぅ! 父さんは、父さんは嬉しいぞ! お前はいつだってやれる子だと思っていた!」
「パパン! ボキュはやっぱり天才なんだな!」
「そうだ! お前は幸運の星に生まれて来た男なんだ!」
「…………凶運の間違いじゃないかしら」

 アッシュはボソリと言ってしまうが、盛り上がっている残りの二人には聞こえない。

 彼女にとってボルボルの復活は、地獄から伸びて来た引きずり込む手だ。

 元々ボルボルの常勝将軍という評価は造り物。

 ボルボルを必死にお膳立てして赤子が指揮官でも勝てるレベルの状況で出陣させて、何とか用意できた酷い由来のもの。

 アッシュからすれば彼の復活など到底望んでいない。本音を言うなら再度殺してなかったことにしておきたいくらいだった。

「ボキュはボラスス神聖帝国とアーガ王国の架け橋になるんだな! ボラスス教皇、ありがとうなんだな!」
「我が秘魔法にて蘇らせたのです、皆様に喜んで頂けて幸い」

 ボルボルの言葉にボラスス教皇は満足げにうなずいた。

 これこそがアーガ王国とアッシュを縛る恐ろしき鎖だ。ボルボルはボラスス神聖帝国からの貢物みたいなもの。

 彼の国からは多大な支援を受け取る約束をしている。だがボルボルを迂闊に殺してしまおうものなら、それも打ち切られてしまう恐れがある。

 いや殺してしまうどころか戦で命を落とすなどでも危険だ。つまりボルボルは戦死も装えずに必ず生かす必要がある。

 しかもある程度の権限を与えなければならない、解呪も不可の呪いの装備と化してしまった。

「アッシュ殿? いかがなされたかな? 顔が引きつっておられますよ?」
「い、いえ教皇殿。何でもございませんことよおほほ……それにしてもボルボルの蘇生はいかがなされたのですか? 死体は墓に埋めたはずですのに」
「我が秘魔法に死体は不要。死んだ魂に肉体を造って蘇らせるのです」
「そ、それはすごいですわねぇ」

 アッシュは顔をプルプルと震えさせて、かろうじて引きつった笑みを保って返答する。

 そんな彼女のことなど知らぬとばかりに、ボルボルは大きく宣言した。

「ボキュは教皇に言われたんだな! これまでは出陣以降の指揮しかしてなかったけど、それはボキュの才能の無駄遣いなんだなと! だから今後は作戦全般を手助けするんだなぁ!」
「いやぁ!?」

 アッシュは悪夢のような宣言につい悲鳴をあげてしまう。それに対してボルボルはうんうんと頷いている。

「アッシュ様、そんなに嬉しいからって歓喜の悲鳴をあげてはダメなんだな」
「お、おほほ……おほほほほほほほほ。つい本音が漏れてしまったわ!? それでボルボルはどんな余計な口を挟むつもりかしら!?」
「我が愛する息子よ! お前が本気を出せばハーベスタ国などひとひねりだな!」

 必死に繕うアッシュに対して、ボルボルは自信満々に口を開き始めた。

「まずは兵糧の問題なんだな! アーガ王国は兵糧が足りなくて出陣して草を食べてるって聞いたんだな。でもそれだとダメなんだな、草は美味しくないんだな」
「そ、そうね! 確かにその通りね! 流石ボルボルはマトモね!」

 アーガ王国の兵糧が不足しているのは事実だ。

 ボラススの支援があるとはいえど、いくらなんでもアーガ全軍を賄えるほどの量はくれないだろう。

 なのである程度は自前で用意する必要があるのは事実。

 ボルボルはその問題に対して、天才的な痴謀をもって回答する!

「だから騎馬部隊の馬を食べながら進軍すればいいんだな! こうすればボキュたちは馬の新鮮な肉を、兵士たちには馬に与える分の草が与えられるんだな!」
「ぼ、ボルボル? 馬は貴重な軍事……」
「なんと素晴らしい作戦! そうすれば優秀な貴族たちは満足のいく食事を得られて、兵たちも草が食える! 実に自由な作戦だ!」
「既存の常識を覆す秘策、これこそ我が自慢の息子!」

 拒否しようとしたアッシュの声をかき消すように、ボラスス教皇とシャグは大声をあげて賛成する。

 アッシュは敵を見るかのように二人を睨んだ。

「これで兵糧問題は解決なんだな! 早速ひとつ解決してしまったんだな!」
「やはり貴方を蘇らせたのは間違っていなかった。期待通り、いえ期待以上です! 貴方こそが自由の使者」
「ボルボル……立派になりおって……!」

 教皇は愉悦そうにニヤリと笑みを浮かべ、シャグは涙を服のすそで拭いている。

「ボルボル殿の秘策に我々も協力しましょう! アーガ王国はハーベスタ国に最大で何万人を派兵できますか?」
「……理論上の数ならば四万、いや五万も可能でしょう。ただし兵糧の問題が……特にハーベスタ国に攻めるとなると、東端らへんの領地の者は遠いですし」

 五万、それはアーガ王国が全方位の敵と戦う時に扱えていた兵数。

 だがその数は地元住民を募兵しての防衛なども含めるため、出陣となると話は大きく変わってしまう。

 その言葉に対してボラスス教皇は目を大きく開く。

「ならば我が国が三万人の兵士分の兵糧を用意しましょう」
「「なっ!?」」
「流石は教皇なんだな。太っ腹なんだな」

 あまりの宣言に動揺を隠せないアッシュとシャグ。対してボルボルは機嫌よさそうにうなずいた。

 彼らの驚きは当然。三万人分の兵糧を用意するなど、ましてや他国から輸送してくるなど正気の沙汰ではない。

 どれだけの馬車や輸送隊、そして護衛の兵士も必要なのか想像もつかない。

「ぼ、ボラスス教皇。流石にそれは不可能でしょう?」
「我々には出来ます、と言っても信用しないのも自由。故にアーガ王国との国境付近に、三万人分の兵糧を先に用意しましょう。それを確認してからあなた方は出陣すればよい。しまう倉庫などもこちらで」
「わ、わかりましたわ……では馬車などの許可証を……」
「不要です。我らボラスス神に祈りを捧げれば全て解決します」
「は、はぁ……」

 そして二ヶ月後には、ボラスス神聖帝国は約束通りに倉庫を大量に建築。

 更に兵糧も三万人分のパンなどを完璧に揃えた。しかも本当に兵糧を馬車などで運んだ様子もなく、倉庫を建築していた様子もない。

 まるで全てがどこからともなく生えてきたかのごとくだ。

 この兵糧はボルボルが運用したがすさまじく雑な管理で、半分ほど兵士に横流しされてアーガ王国軍は半全の態勢を整えた。

「す、すげぇよボラスス教。意味がわからねぇ!」
「本当にボラスス神様いらっしゃるだろこれ!?」 

 アーガ王国の兵士たちは恐怖し、ボラスス信者が増えて行くのだった。

 そんな中でアッシュだけは愚痴を漏らしていた。

「おかしいわ……まさかボラスス神聖帝国は、アーガ王国を負けさせる気じゃ……ボルボルを蘇らせるなんてあり得ないもの! なんでバベルじゃないのよ!? 普通に考えたら分かるでしょ!? ああでも外からじゃ常勝将軍なんて有能に見えるわね!? 誰よつけさせたの私だくそぉ!」
 
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