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クアレールの内乱
第121話 計画見直し
アーガ王国とボラスス神聖帝国とエメスデス王国の三国同盟は、すぐに各地に知れ渡った。
それは周辺国家に大きな衝撃を与えたのだった。
……アーガ王国と同盟を組む奴らがまだいたのかと。
俺達は改めて白竜城の玉座の間に集まって相談を行っている。
「まさかアーガ王国と同盟なんて組むとか、この二国はバカかな? 絶対信用ならないだろ」
「エメスデス王国は同盟ではなく休戦条約だ。自分たちは攻めないので防衛兵士も攻めに使っていいよと、我らにアーガの戦力を押し付けたいだけだな」
「ひ、ひでぇ……」
とは言えエメスデス王国のは別に卑劣な手でもない。
アミルダだってアーガの兵を利用して、旧モルティ国に攻めさせたことあるしな。
いやらしい策と褒めた方がよいのかもしれない……押し付けられた側はたまったものではないが。
「アーガは我らに対して三国を相手取ることになるぞと、士気を落とすために三国同盟と宣言した」
「相変わらずアーガはせこい」
アーガは平常運転なので今さら言及することもないだろう。
オオカミ少年の言葉をいちいち信用する方がおかしい。
「またエメスデス王国の辺境伯殿から手紙が着ている。内容はアーガ王国に与するつもりはなく、我らはアーガに苦しめられた同士だそうだ。これからも有用な情報があれば送ると」
「同士なら兵を押し付けないで欲しい」
「あの国は内乱寸前らしいからな、もう戦っていられないのだろう。謝罪と共に心づけの金銭や物資をくれるらしい。我らが勝った暁には仲良くしましょうとな」
休戦協定を結びつつ、アーガの敵国に支援しているとはしたたかな。
普通ならコウモリなのでうさんくさいが、アーガの暴虐具合を考えれば是非もないか。
「まあエメスデス王国は身内で争うつもりだろうし、今後も大して関わってこないだろう。問題はボラスス神聖帝国、あの国ははっきり言うと不気味だ」
アミルダは少し不快そうな顔をする。
ボラスス神聖帝国はボラスス教の信者が集まった国だ。
宗教国家と言えば聞こえはいいが神に祈っているだけにあらず。
神官兵は常に鍛錬を行っていて、戦えば凄まじく強い……と噂されている。
「ボラスス神聖帝国は百年以上戦ってませんからねぇ……教皇さんも少し苦手です」
エミリさんが何かを思い出しながら話している。おそらくクアレールでの外交パーティーだろう。
ボラスス神聖帝国はここ百年ほど戦うことなく、大国を維持し続けている。
それを成せるのには宗教国家なため、下手に攻めると他国から反発を受ける。
それでいて国土的野心がなく、広い国土と強大な戦力を所持するのが大きい。
パプマのような何故か滅ぼされてないのではなくて、正当に生き残っている国家だと言えるだろう。
「ボラススと敵対はあまりしたくないのが本音だが……アーガに助力するならば、どうしようもないな」
アミルダは顔をしかめる。
宗教が軍事力を持つのはなぁ……それにアーガは放っておいても攻めてくるので、俺達に戦わないという選択肢はないのだ。
ちなみに日本でも宗教はかなり厄介な軍事力、そして高水準な学力を持っていた。
戦国時代は寺で勉学を学ぶのが当たり前だったからな。
教育機関なので当然ながらインテリが多いというわけだ。大名家の軍師を僧がやっていたこともそれなりにあったとか。
他にも寺院は治外法権で、犯罪者が寺に逃げ込んだら捕縛したらダメとかのルールもあった。
信長が比叡山を焼いた話は有名だが、敵対していた武将を匿って引き渡さなかったのが理由らしい。
そりゃ敵対者に宗教バリアとかされたらね……ようは宗教はかなりの力を持つ団体になるのだ。信徒を兵隊にもできるからな。
「ではアーガに攻め込むのはいつになるであるか!」
「難しいところだ。ボラススがアーガを支援するならば、再び大軍を集められてしまう。弱っている間に攻めるという手段が取れなくなった。だが……」
「だが?」
「アーガの経済がボロボロなのは変わらん。時間を置いても国力が戻る可能性は低いはず。ならば元ビーガンの国土を平定して、万全の状態になってから攻めたほうが勝率は高いだろう」
なるほど、確かにそうだな。
アーガ王国単体で国を建て直せるとは思えない。そんな能力があるならば今までにもう少しマトモな政治を行えるはずだ。
そうなるとボラスス神聖帝国の介入が怖いが、流石に他国の政治にまで口は出せないだろう。
アッシュでもそれを許すはずがない。いくら何でも他国に政治の主導権を握らせるのは危険過ぎる。
それはもはや戦争に負けて敗戦国になったレベルだ。
「というかボラスス神聖帝国ってすごいな。アーガという大国に支援できるくらいとは」
「……そうだな、少し違和感はある。大国が小国に支援するなら分かるが、大国が大国に満足いく物資を送るとなると……どれほど大量の物資にそれを送る馬車が必要か」
馬車を運用するとなると、更に馬の餌代や運搬隊の兵糧とかも必要だからな。
アーガ王国の軍への支援となれば、一万人規模の兵糧などの援助だろうし……他国から送れるようなものなのか?
アーガが一万人の兵を出陣させてるのだって、本来ならば不可能に近いのを国内略奪で無理やり補ってるレベルなわけだし。
中世ヨーロッパでは一万以上の軍など、物資が揃えられずにそうそう用意できなかったのだから。
「対して我らにはお前がいる。アーガと違って一万人の兵糧などを無理なく揃えられる。そうだな?」
「そうだな、俺ならだいたいは賄えるはずだ。全員分を毎日は流石に厳しいかもしれないので、一割ほどでも用意してもらいたいが」
正確に言うと一万人の兵糧自体は普通に用意できる。
だが美味しい物をとなると話が別になってしまう。普通のパンと干し肉程度なら一万人分揃えられるが、少し味気ない物で兵の士気が落ちかねない。
「分かっている。あくまでなるべく自前で揃えて、不足分をお前に補ってもらう予定だ」
「それなら問題ないと思う」
「であれば決まりだ。しばらく体勢を整えた後に、我らはアーガ王国へと侵攻を仕掛ける! このくだらない戦の繰り返しを終わらせるためにな!」
アミルダの力強い宣言に俺は大きく頷く。
もうアーガ王国は本当に面倒くさいからな。何度も何度も攻めてくるので、ここらで終わりにしなければならない。
ボラススの支援は厄介ではあるが、ハーベスタ国もかなり大きくなった。
今までより遥かに多くの兵士を揃えられる。ならばアーガが強化されたとしても勝てるはずだ。
「では次の話だ。入って来い」
アミルダの言葉に従って陽炎が入室してきたが……何の用だこいつ。
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