【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~

クロン

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ベフォメット争乱編

第82話 頭上確保

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 俺はヘリコプターを操縦してベフォメット軍の元へと向かった。

 奴らはバフォール領とベフォメットの境目付近の、広い荒れ地に駐留して休憩をとっている。完全に油断しているな、火を投下してやろう。

 俺は振り向いて、席に座っているラークとカーマの方を見ると。

「ラーク。今から敵の頭上を取る。雹とかあられとか落として、敵陣を混乱させてくれ」

 敵軍を空からかく乱して隙を作り、その間に好き放題させてもらうとしよう。

 俺の意図を把握したラークはうなずくと。

「大きさは人の頭くらい」
「いやそれ当たったら絶対死ぬ!? 通常サイズでお願いします!」

 そんな巨大なのだと本日の天気は巨大な雹、ところにより血の雨になるでしょう。

 ちなみにあられは直径が5mm以下らしいので、人の頭ほどのあられは存在しない。

「ボクは何すればいい? 空から消えない火でも落とす?」
「いやそんな阿鼻叫喚の地獄引き起こすのやめない? とりあえず見といてくれ」

 カーマは俺の言葉に少し不満な顔している。

 しかたないだろ、君は文字通り火力が高すぎるんだよ。

「あ、そうだ。それと今後の方針だが、ベフォメットに攻めていくぞ」
「え、打って出るの?」
「このままバフォール領にずっと滞在するの嫌だし」

 カーマと少し驚いた顔をしている。ラークはいつも通り無表情である、少しは驚いて欲しい。

 ……くすぐったら案外爆笑したりするのだろうか。いかんいかん、考えがそれた。

 俺としても正直攻めるの嫌だが、バフォール領にずっといるほうが嫌だ。

 攻めると言っても軍で攻めるのではなく、俺とカーマとラークだけでベフォメット王都に向かう。

 あのゲス王子をぶん殴って叩きのめしてぶちのめした後に捕縛し誘拐。後は人質で脅せば解決だ。

「そんな簡単にいかないような……」
「それを試すために、このヘリコプターを使ってるんだよ」

 敵にもし対空能力がないならば、三人での進軍は決して不可能ではない。

 ほぼ全ての敵兵を空から素通りして、ゲス王子のいる場所に侵入すればよいのだから。

 軍と戦うにしたって対空能力がない相手ならば負ける要素はない。

 地を這う虫けらは鳥に狩られる運命なのだ。

 そう考えながらヘリコプターを敵軍の真上に移動させる。

 敵軍は慌てふためいている。あの空飛ぶのはなんだ!? 鳥か!? ドラゴンか!? いやバケモンだ! などと口々にヘリを不思議に思う声が聞こえて。

「あれはゴーレムだ!」
「ゴーレムだ!」
「空飛ぶゴーレムだ!」

 満場一致でゴーレム認定……そういえばラークたちも、ヘリを初見でゴーレムって言ってたなぁ。 

「氷の礫」

 ラークが呪文を唱えると周囲に少し大きな雹が発生して真下へと落ちていく。

 敵の兵たちは霰に襲われて大騒ぎだ。このパニックに乗じて……。

「ねえ、ボクも何かしたいんだけど」

 カーマがヘリを運転している俺の服の裾を引っ張ってくる。

 何かしたいと言われても困るんだよな。こんな上空で火なんぞ落とした暁には大災害不可避というか、もはやただの空爆である。

 仕方がないので【異世界ショップ】から購入した袋をカーマに手渡す。

「じゃあこれでも撒いとけ」
「何これ?」
「こんぺいとう」

 ひょうや霰と大して変わらんだろたぶん。

 カーマは言われるがまま、袋からこんぺいとうを手に取って空中に放り出し始めた。

 振りゆく霰やひょう、ところによりこんぺいとうが敵軍を苦しめている。

 フルアーマーの鎧ならば効き目も薄いのだろうが、そんな重装騎士はそうはいない。
 
 全身鎧の奴などほぼいないのでみんな痛がっている。

「くそぉ! 卑怯だぞ! 降りてきて戦え!」
「矢を射て! 矢だ!」
「ダメです! 氷が落ちてきてとても上を見続けられません!」
「なんだこれ甘いんだけど!?」

 阿鼻叫喚の悲鳴が下から上がる。どうやらこんぺいとうがいい味をかもしだしてるようだ。

 敵軍は混乱に陥って総崩れ、今が狙い時だ!

 周囲を見回して物資が積んである馬車が集まってるところを発見すると。

「カーマ! あの馬車の周囲に火をつけて、敵兵が近づけないようにしろ! 物資は根こそぎ頂く!」

 馬車の集まった箇所を指さす。これが俺の狙い! 敵の物資ネコババ大作戦!

 誰がバフォール領のためなんかにただ働きしてやるかよ! 【異世界ショップ】で買い取って金にしてやる!

 俺がこぶしを握って叫んでいると。

「商魂たくましいというか、がめついというか……」
「せこい」
「清濁併せ呑むと言ってくれたまえ」
「濁濁全部呑むの間違いじゃないの? 清い要素見つからないんだけど」
「あるだろほら。クリーンな金を持つところとか」

 そう呟きながら物資を積んだ馬車のそばにヘリを着陸させて、俺は運転席から地面へと飛び降りる。

 周囲の地面を炎の輪が囲んでいるので、敵兵は近づくことが出来ない。

 この隙に俺は物資を馬車ごと【異世界ショップ】に送りまくる。

「へっへっへ。全て頂く! そう全てだ!」
「なんか火事場泥棒みたい」
「みたいじゃない、純然たる火事場泥棒だ」

 なんなら放火魔でもあるぞ。そう考えながらも物資を更に【異世界ショップ】に送りつけていると。

「そこまでだ! よくも好き勝手やってくれたな!」

 声のする方を見るとローブを着て杖を持ったオッサンたちが、10人くらい集団でこちらをにらんでいた。

 どうやら魔法使いの力で周囲の火を抜けてきたらしい。余計なマネをしてくれて……人の火事場泥棒を邪魔するとはふてえ野郎だ!

「あ、ボクがやるね」

 そんな魔法使いたちに対して、カーマが余裕しゃくしゃくと前に出る。

「「「水の怒りよ!」」」

 敵の魔法使いたちの一斉の叫びと共に、大量の水が発生してカーマに襲い掛かる。

 だが彼女はなお余裕をもって笑いながら。

「炎の壁よ。灼熱の礎をここに」

 カーマが呪文を唱えた瞬間、彼女を守るように巨大な炎の壁が出現した。

 向かってきた水は全て炎の壁に当たった瞬間蒸発する。

「ば、バカな……!? 火の魔法は水に弱いはず!」
「確かにボクが使うのは火の魔法だから水に弱いけど……力の差がありすぎて相性なんて関係ないよ」

 敵の魔法使いたちは茫然と火の壁を見つめている。

 いくら相性よいと言ってもレベル5がレベル99には勝てないみたいなものか。

 仮にも人数差10倍なのにボロ負けとは悲しい。

「ぐっ……紅の姫君の名は伊達ではないかっ……! この化け物め! 怪物め!」

 魔法使いのひとりが忌々しそうにカーマを睨む。

 どうやら自殺願望者のようだ。力の差は歴然なのでもうさっさと逃げて欲しいんだが。

「まあいいけどね。じゃあさようなら」

 カーマの出した火の壁が動き始めて、敵の魔法使いたちに向かって行く。

 彼らはすでに魔力が尽きたのか、ただ茫然と近づく火の壁を見つめていた。

 おいおい。本当に燃え尽きるぞ。逃げろよ……。

「カーマ、やめろ」

 俺の言葉に反応してか、敵の魔法使いを飲み込む一歩手前で火の壁が制止した。

 カーマはこちらを見て首をかしげている。

「どうしたの?」
「どうしたのって……殺さなくてもいいだろ。そいつには利用価値がたぶんある。人質にしてベフォメットに売り飛ばす」

 魔法使いって貴重だし価値あるだろ。

 元カール領との戦いの時も、あの程度の魔法使いが国に売れたし。

「いいけど……この人たち、そんなに価値ないと思うよ? 魔力もそんなにないし」
「ぐぬぬ……」

 敵の魔法使いたちはすごく悔しそうな顔をしている。

 気持ちはわからんでもない。年端もいかない少女に敵としてすら見られていないのだ。
 
「多少の価値はあるだろ。ただこのまま異世界ショップに送るのは……ラーク、凍らせてくれ」

 ラークはうなずくと魔法を唱えて、敵の魔法使いを全て氷漬けにする。

 こうすることで彼らはクール便で送れるはずだ。つまり物として送れるはずだ。

 拉致監禁できるようになったとは聞いているが、実際のところ怪しいのでクール便にしておく。

 ついでに塩をまぶしつつ、凍った魔法使いを【異世界ショップ】に送ると。

『ちょっと!? すごい形相の凍り付いた人間が大量に送られてきたんだけど!?』

 脳内にミーレの声が響き渡る。前に送った血まみれドラゴンよりだいぶマシだろうに。

「クール便だ」
『冷凍してたら何でもクール便で通じると思わないでよ!?』
「まあまあ。細かいことは気にするな」

 ミーレをなだめつつヘリに乗り込んで上空へと飛び上がる。

 そしてオマケとばかりにラークが雹をまき散らし、カーマが追加で渡したこんぺいとうを食べていた。

「おい。こんぺいとうも撒けよ」
「これ結構美味しいから……」

 結局追加で渡したこんぺいとうは、全てカーマが食べてしまった。 
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