【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~

クロン

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ラスペラスとの決戦編

第155話 クズの源①

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 俺達は知ってはいけないことを知ってしまった。

 レスタンブルク国のクズが、レザイ領から発生している疑惑という恐ろしいことを。

 開けてはならないクズ箱だった……だが知ってしまっては仕方ない。

 クズの発生原因と封印されたイレイザーに、関連性が疑われるのでレザイ領に来ている。

 メンバーはカーマにラーク、エフィルンにセンダイ。そして助っ人のライナさん。

 武力関係の理想メンバーである。クズの懐に飛び込むのだ、どれだけ戦力があっても過剰ということはない。

 そしてまずは近くの村に入ってみたのだが……俺たちは怪しい行商人たちに即座に捕まった。

「貴方にはこの石が似合いますよ! ええはい! 本来なら金貨十枚のところを何と半額!」

 覆面をかぶった男が小さな石を布で持ちながら話す。

 いきなり半額にするとか怪しすぎるだろ……しかもその石はそこらで拾った少し綺麗な石だろ。

「頼む……このままだと妻や娘が飢え死にするんだ……! この僅かな作物を金貨一枚で買ってくれ! そうじゃないとお前は人殺しだ!」

 農夫のような男がクワを手に持って言い寄ってくる。その服装はわりと綺麗で、とても飢え死にしかけとは思えない。

 そもそも懇願してるのか脅してるのかはっきりしろ。詐欺の軸がブレブレじゃねぇか。
 
「君たち可愛いね。どうだい? 安心安全。ほんの少し男の人に触るだけで大金を得られる仕事があるんだ」

 細身のチャラチャラした男が、カーマやラークに詰め寄ってくる。

 男の人のナニに触るんですかね……。

「全員まとめて却下だ。失せろ」

 俺が断りの言葉をいれた瞬間、奴らは目を合わせて頷くと。

「ひゃっはー! なら力づくだぁ!」
「せっかく人が穏便にすましてやろうと思ったのによぉ!」
「恨むならこの領地に来た自分を恨むんだなぁ! おいでませ金ヅル!」

 仲良く襲い掛かって来た。最初からグルだったようだ……。

「カーマ、やれ」
「うん」
「「「あっちぃ!?」」」

 カーマの炎で軽く炙られるクズども。

 服などには燃え移ってないこそいないが、地面をのたうちまわった後に。

「畜生! 貴族のくせになんてケチな野郎だ!」
「失せろゴミ! 生まれた時から貴族なんてなんてクズな野郎だ!」
「女どもめ覚えていろ! 後でひぃひぃ言わせてやる!」

 そんなことを言い残して、すごい勢いで逃げていくクズども。

 ……レザイ領に入った瞬間これである。すでにお腹いっぱいなんだけど。

 イレイザーの封印場所を知るのは極めて重要だ。この情報はラスペラス国も求めているので、奴らに対しての交渉のカードとなる。

 なるのだが…………。

「……なあセバスチャン。もう帰りたいんだけど」
「ダメでございます。イレイザーの情報を仕入れなければ」

 セバスチャンは真面目な顔で俺に告げてくる。

 これは説得不可能だ……クズとセバスチャンなら、まだクズを相手にするほうがマシだ。

 クズはしょせんは口先だけだが、セバスチャンは斧先が飛んでくるから……。

「じゃあ分かれて個々に情報収集する?」
「カーマ! ここはクズの本拠地だぞ!? 戦力分散なんてしたら各個撃破されるだろ!?」
「何に各個撃破されるの……」

 カーマの恐ろしい言葉を即座に否定する。

 クズ相手に戦力分散など愚者のやることだ! 奴らは集団で襲い掛かってくるのだ!

「カーマ、お前はクズの力をわかっていない」
「ただの一般人でしょ? そんなの別になんとも……」
「それがすでにクズの罠にかかっているんだよ! あいつらは一般人なのを盾に無辜の民ヅラして、こちらに反撃させないとか平気で考えてくるぞ!」
「ええ……」

 カーマは呆れているが事実である。

 奴らは公権力に対しては、被害者ヅラしてから襲い掛かってくる。

 それに俺達が抵抗したらそら見たことかと正義を振りかざしてくるのだ。

 カーマやラークなんぞそんなクズの餌食だ。たぶんもみくちゃにされて、胸とか触られて痴漢されるぞ。

「も、申し訳ありません! そ、そんな恐ろしい場所になんて、私場違いですよね!?」
「そういえば何故ライナ様が呼ばれているのですか?」
「申し訳ありません、エフィルン様! 呼ばれてしまって申し訳ありません! この世に存在して申し訳ありません!」

 ライナさんが平身低頭で謝ってくる。

 いやそんなことは決してない。むしろ彼女こそがレザイ領での切り札となるのだ。

 ライナさんを呼んでおいた俺の慧眼を褒めたたえて欲しい。そんな自信を持ちつつ、俺は胸を張ると。

「クズの弱点って知ってるか?」
「ゴミ箱ですぞ」
「違う。奴らはな、純粋な暴力には弱いんだよ! ライナさんが狂戦士になれば、全ての言葉なんぞ無意味だ! 相手の話を聞かなければ、話し合いなんて不要なんだよ!」
「はっはっは。拙者らのほうが悪者でござるな」

 センダイが酒瓶を飲みながら笑い飛ばす。

 違う、これは純然たる正当防衛だ。さっきも見ただろうがクズは初手で詐欺、そして二手目で脅してくる。

 なら最初から過程をすっ飛ばして、脅しに対して暴力ぶつけても誤差である。

「それととりあえず情報収集の必要はない。まずはここの領主屋敷に向かうつもりだからな」
「なるほど。領主ならば情報も多く持ってるだろうと」
「いや倒すならラスボスからかなって」

 何のために最大戦力を整えたと思っているのだ。

 せこせこザコを相手にしていくのは煩わしい。さっさとトップをぶちのめすべきだろう。

 俺の完璧な策に対してみんなが渇いた笑みを浮かべている。

「アトラス様! その通りでございます! やはり首領の首を取るのが一番!」
「流石です、主様」

 セバスチャンとエフィルンだけは俺の策に賛成してくれている。

 やはり持つべきは古くからの執事と……なんだろ?

 エフィルンって何て言えばいいんだ? 従順な肉奴隷……いやそれだと俺がクズじゃん。

 太鼓持ち……? どちらにしても微妙な感がぬぐえない……。

「まあそういうわけだから、さっさと行くぞ! 敵は領主屋敷にあり!」
「待って!? まだ敵と決まったわけじゃないよね!?」

 カーマのツッコミを華麗にスルーして、【異世界ショップ】でヘリコプターを用意。

 そして攻撃対象……じゃなくて領主屋敷に飛んで到着した。

 その領主屋敷は一見すると普通の屋敷だった。

 だが忘れてはならない。この屋敷はクズの本拠地の最高権力者の住処。

 つまりキング・オブ・クズが眠っていると考えてよい!

「総員! これより屋敷に踏み込むが、ひと時たりとも気を抜くな! 油断すればすぐに呑まれるぞ!」
「何に飲まれるの……」
「クズのオーラ」

 皆に警戒を告げると俺は息をのみつつ、屋敷の門に立っている衛兵に話しかける。

「俺はフォルン領のアトラス伯爵。レザイ領主に会いに来た。アポは取っている」

 すると門番は俺に対して手を出してきた。

 なんだ握手か? とうとう俺も握手を求められるほど有名人に、

「伝言料を払え。さもなくばここから入ることは禁じる」
「なんでやねん」

 いかん思わず関西弁が出てしまった。

 どこの世界に! 主人に伝言するのに料金取る門番がいるんだよ!?

「いやさっさと伝えろよ! アトラス伯爵がやって来たと!」
「何を言うか! 門番様に礼のひとつも渡せぬ貧乏人が、伯爵なわけがあるまい! 金を渡さぬならば伯爵を偽った罪で捕縛する!」
「理不尽過ぎる!」

 なんて意味不明な領だ! 用事終わったら即座に出てってやる!
 
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