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ラスペラスとの決戦編

第157話 ラスペラス国と再交渉①

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 無事? にクズの本拠地であるレザイ領から帰還した俺達。

 即座に屋敷の執務室に集まって、今後の動きを相談することにした。

 ライナさんにはお帰り願って、残りのメンバーはそのまま執務室にいる。

「幸いにもイレイザーが封印されてる石は確保できた。この石を使ってラスペラス国と交渉を始める」
「交渉? 何を交渉するの? ラスペラス国の女王は、もう交渉の余地なさそうだったけど」

 カーマが椅子に座りながら、不思議そうに聞いてくる。

 確かにあのうわきつBBA女王は問答無用だった。だが奴の狙いはイレイザーだ。

 仮にも世界を救うとかのたまってる勘違い女郎ならば……。

「とりあえず金をせびる。払わないならイレイザーを目覚めさせると脅して」
「いきなり最低の策でござるなぁ」
「あの女王も話し合いの場と言いつつ、こちらを捕らえようとしてきたんだ。おあいこだろう!」

 そう! あの自分に酔ってる勘違いBBAなら! 

 きっと金を払ってくれることだろう! ああいう奴って財布のひもと尻が軽そうだし!

「まあその策を使わないにしてもだ。ラスペラス国との全面戦争は何としても避けたい。国力的にこちらが不利だし……」

 レスタンブルク国とラスペラス国、おそらく戦力差は数倍はあるだろう。

 魔法使いの質も量も間違いなくラスペラス国が勝っているのだから。

 無論、手段を選ばなければ勝ち目がないわけではない。

 核ミサイルとかを【異世界ショップ】から購入して撃てば、レスタンブルク国を勝たせることはできる。

 だが流石にそれをしてしまうのはない。

 核なんぞ戦争に使うものではないんだよ、本来は……。

「全面戦争をしないとなると、どうするおつもりですぞ?」

 セバスチャンが俺の言葉に疑問を投げてきた。

「例えば選りすぐりの軍のみで戦って勝敗を決めるとかだな。泥沼の戦いはラスペラス国側も望んでないはずだ」
「確かに。あの国もイレイザーによる世界の崩壊を防ぎたいだけでござるしなぁ」

 センダイの言葉にうなずく。

 ラスペラス国が俺達の国に攻めてくるのも、イレイザーの調査を行いたいがため。

 本来ならば俺達とラスペラス国の目的は一致しているのだ。

 お互いにイレイザーを何とかしたいのだから、仲良く手を取り合えるはず。

 ……いやうわきつBBA女王とは手を繋ぎたくないけど、業腹だが背に腹は代えられないというか。

「質問。そもそも戦う必要ある?」

 ラークが手をあげて問いかけてきた。

 確かに先ほどまでの話を聞けば、話し合いで解決できそうだと思うだろう。

 少なくとも個人間の話ならば、「ごめんね」と「いいよ」で終わらせられる。

「これは国同士の話だからなぁ。戦争が始まってる以上、どちらが悪いかくらいは決めないと無理だろうな」
「ムダ」
「俺もそう思うがこればかりはな。それに……あのうわきつ女王が、戦わずに納得するとは到底思えん」

 あの女王が人の話をしっかり聞いてくれるとは思えん。

 こちらを完全に格下と思っていたし、まず間違いなく平等条件での講和はのまないだろう。

 俺達の話を聞いていたセバスチャンがポンと手を叩くと。

「なるほど。つまり女王を抹殺すれば解決ですな!」
「即座に恐ろしい発想にたどり着くのやめよう!?」

 相変わらずこの男は容赦がなさすぎる。

 確かにうわきつ女王は邪魔の極みだし、ウザいしキツイしだまし討ちするし……あれ? もしかしてわりと救いようがない?

 抹殺してもワンチャン許されるのでは……いや流石にダメだろ、しっかりしろ俺。

 セバスチャンの殺意にのまれてはいけない。

 俺は机を勢いよく叩いて叫ぶ。

「つまり女王ともう一度、会談の場をもうける必要がある! セバスチャン! 頼む!」
「善処いたしますが……受けてもらえるか怪しいと思いますぞ」

 流石のセバスチャンも困った顔をしている。

 前回の会談が喧嘩別れだからその懸念ももっともだ。

 だが俺には切り札がある。あのうわきつ女王にだけ通用する切り札が!

 俺は【異世界ショップ】から高級化粧品セットを購入し、机の上に置く。

 化粧瓶などには誰もが知る地球の有名メーカーのロゴが入っている。

「これを女王に贈れ。そして更に追加が欲しくば会談を開けと要請しろ。奴は間違いなく乗ってくる」
「なるほど……少し試してもよろしいですか?」

 セバスチャンが化粧品セットを観察しながら呟く。

 何を試すか分からんがとりあえず頷くと、セバスチャンが化粧瓶のフタを取って。

 …………中身を飲み始めた。え? 何やってんの!?

「セバスチャン!?」
「んぐんぐ……なるほど。これは……毒の類ですかな? 毒殺されたくなかったら、会談を開けということですな!」
「違うわ! 化粧品! お肌につけて肌荒れとか防ぐやつだよ! 勘違ううわきつBBAなら、ムダに肌とかムダに気を使ってるから、ムダに乗ってくると思ったんだよ!」
「どれだけムダを強調するの……」

 だって実際に高級化粧品の無駄じゃん。

 あのBBAなら百均ショップの化粧水でもつけとけばいいと思う。

 ……ところでセバスチャンが化粧水をがぶ飲みしたが、大丈夫なのだろうか?

「セバスチャン、大丈夫か?」
「ご安心を。この程度の毒は利きませぬ」
「だから毒じゃないっての!」

 結局セバスチャンに化粧水のおかわりを渡して、うわきつ女王に交渉要請の手紙と共に送らせた。

 するとなんと、五魔天のランダバルが翌日にフォルン領にやって来た。

 急いで迎賓室で迎え撃つと、ランダバル爺さんは開口一番にため息をついて。

「ワシ、これでも偉いはずなんじゃよ……なのに何で、女王の化粧品のパシリにされねばならぬのじゃ……」
「ご愁傷様としか……」
「わかるか? ワシにも予定があったのじゃよ。それを女王がそなたらの贈った化粧品を見るなり、一秒でも早くこれの追加をもらってこいと……そもそも女王はワシへの扱いが……」

 ランダバルから二時間くらい愚痴を聞いた後、会談を開くことを女王が許可したと聞けた。

 ……この爺さんも謎に苦労してるんだなぁ。

「あ、それとワシにも化粧セットくれんか?」
「爺さん、あんたのしわを伸ばしてもツルツルジジイが爆誕するだけだぞ」
「ちがわい! いざという時の女王への対策用じゃ!」
「なるほど。背後に忍び寄って瓶で頭をガツンと」
「そうそう、この瓶なら殺傷性が高そうで……そんなわけあるかい! 賄賂用に決まっておるじゃろぉ!」
 
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