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村発展編
24話 今後の展望
しおりを挟むジュペタの町長の屋敷のとある部屋。そこでは魔法陣を使用しての談合が行われていた。
頭が少し剥げて太った男――ジュペタの町長と、何者かが話している。
「では財務卿と王よ、手はず通りにお願いします」
「わかっておる。我らの一声があれば小さな町など逆らえぬ」
「余は美少女魔法人形に興味がある。回収してまいれ」
町長は性格の悪い笑みを浮かべる。
ジュペタの町は王都と繋がっている。町民から巻き上げた賄賂を贈り続けているのだから。
ジュラの町を狙った理由も国が魔結晶を欲しがったからだ。
元々の予定では魔法使いを数人援軍で派遣してもらう予定だった。
そしてジュラを侵略して終わり。だがルルが消えたことで話が変わっただけ。
「しかしスグル村とやらは面白いの。その巨大なごーれむも奪ってまいれ」
「かしこまりました。王の命令に逆らう者などおりますまい」
「当たり前じゃ。もし拒否するなら死刑にせよ」
醜い笑い声が部屋に響き渡った。
~~~~~
ジュペタの町長は敗北宣言をした後、まず第一に要求してきたのは自分の身の安全。
それについては保証した。別にこの町長なんぞいらん。
賠償金や権利の譲渡は後日に話しあい、詳細はジュペタの町が手紙を出すことになった。
そのため一度村に戻り、しばらくして手紙が来たので主要の面子が私の家に集まった。
だが――。
「王命により賠償金は存在しない。また速やかに兵士たちを解放し、彼らに旅賃を与えて返すこと。そして少女の姿をした魔法人形と巨大ゴーレムの譲渡を命じる」
アリアが読み上げる手紙の内容は論外だった。
思わず笑いがこみあげてくる。どうやら私を舐めているらしい。
椅子に腰を深くおろして今後のことを考える。
「お、王命って……なんで決着がついた町の戦いに、王様が出てくるのさ! しかも言ってることも滅茶苦茶だ!」
「ジュペタの町は王都と繋がってる。たぶんお願いしたんだと思います」
ルルが私に解答を述べてくる。まず間違いなくそれだ。
まぁ理由などどうでもいいのだが。
「どうでもいいさ、そんなことは」
「スグル怒ってないの!? ボクですら理不尽だと思うのに!」
「俗物の相手は慣れているし怒る必要などないな。単純明快だ、私にデメリットをもたらそうとした罪は償ってもらう」
別に俗物の謝罪など必要ない。私が欲しいのはメリットだけだ。
それを奪う相手にはそれ相応の対処をするだけのこと。
電子ディスプレイに今の所持兵装リストを表示し、何を使うかを考える。
「で、でも王の命令なら逆らったら国の敵になっちゃうんじゃ……」
「元々国を焼いて鉱山を手に入れるつもりだった。それならそれで構わない」
むしろジュペタの町を滅ぼした結果、国が仕掛けて来てくれたほうがいい。
そちらのが話も早い。
「スグル……」
アリアがもの言いたげにこちらを見つめてくる。
博愛主義の彼女だ、今回もいつものように言ってくるのだろうか。
「なんだ? また戦いたくない、敵を殺すなか?」
「違う。今回は無理ってわかってる。でもどうするの?」
「ジュペタを攻めた後に、国の兵団が攻めてくるだろう。それを滅ぼしてこちらが勝利だ」
完璧な作戦だと思ったが、アリアが首を横に振った。
「この国は様々な国と戦争中。私たちに大した戦力を割く余裕はない。少なくとも全面戦争にはならない」
「ふむ。こんな馬鹿な王命に多方面の戦争、どうやらこの国は元から終わっているな」
以前に王都でチンピラが大きな顔をしている時点で思っていた。
だがここまで馬鹿とはな。中世の王権が強い国ならば、絶対的な権力を持つ王が無能なら十分にあり得る話ではあるが。
「国が私に戦力を出さないなら、王都を焼き尽くして終わりだ」
「それをすると、この国が崩壊して周辺の敵に攻められてしまう」
「どうでもいいな」
今の私が王都を占領しても、貴族たちは間違いなく逆らうだろう。
いきなりのポッと出に従う者はそうはいない。我こそが次世代の王と名乗り出る者多数だ。
それを周りの国が見逃すわけがない。
つまりは群雄割拠の戦国時代に、米国も攻めてきたようなものだ。
この国は内乱と外国からの攻撃で、収拾もつかずに滅茶苦茶になる。
だが私は鉱山が手に入ればいい。この国がどうなろうと知ったことではない。
こんな馬鹿な王相手にクーデターすら起こさなかった民も同罪だ。
「周りの国も一番に鉱山が欲しいはず。なら仮に私たちが鉱山を手に入れても、この国が崩壊したら面倒なことになる」
「この国自体の被害を極力減らした上で乗っ取れと?」
アリアはうなずいた。
つまりは私がある程度の権力を手に入れて、経済的に国を上回って実質的に乗っ取る。
もしくはある程度の味方を手にいれた上で国を奪えということだ。
王都を今攻め滅ぼせば鉱山を手に入れた後に、群雄割拠の内乱に他国も混じった戦国バトルロワイアル。
キチンと手順を踏んでならば、私を認める者を増やせるので内乱はある程度抑えられる。
俗物はわかりやすい勝ち馬に乗るのだから。
「この国などいらん」
「王が無能なだけでこの国は価値がある。ドラゴンもいる」
この国にはドラゴンがいるのか、そこは魅力的だな。
それに多方面に侵略を展開しているのに、戦い続けられている。
戦力自体はあるのだろう。
結論を言えば、この国だけを相手どるのと戦国バトルロワイアルのどちらがいいか。
この場合の相手とは交渉なども込みだ。
「……内乱の上に複数の国との交渉は面倒だ。敵が一つのほうが単純か」
敵の総数ではなく相手取る敵母体の数を考えれば、この国だけ相手のほうが楽だ。
私が欲しいのは鉱山であって国ではない。
周辺国らと駆け引きしていくのは面倒である。
「いいだろう。お前の口車に乗ってやる、アリア」
「ありがとう」
正直な話、今この国を滅ぼしても手順を踏んでも大して変わらない。
あまり大差ない手間がかかると演算システムが結論づけた。
それならアリアの言うことを聞いてやってもいいだろう。
……何故か彼女の言葉には考慮してもいい気がしてくるのだ。
他人に気を使うなどと、この私自身も少し違和感を持っている。
「では拒否の返答をしろ。それと賠償金を払わねば貴様の兵士は全てオークにして返してやると」
「ひどい……」
リタがボソリと呟いたがこれには当然意味がある。まずは大量の実験データがとれる。
次に兵士の遺族に町長が恨まれる。
これらの要求を見た向こうの返事は決まっている。どうせ王の命令に逆らうとは、とかだ。
だが攻めてこない。これない。戦力がないのだから。
「そして我々はこの意味不明な要求を喧伝しつつ、ジュペタの町を占領する。王都は戦争で余裕がないからこちらに大した戦力は派遣できない」
「つまり国と敵対はするけど、王都には攻めないってこと?」
「そうだ」
ジュペタとジュラの町を利用しつつ、スグル村を中心に新たな王都を作る。
他の貴族に鼻薬をかがせながら、首元に剣を突きつけて脅して私のことを認めさせる。
王都を侵略した時に綺麗に政権が交代する。
政権を譲渡させるのが理想だが……ほぼ叶わないだろうな。
あんな要求をしてくる王がまともとは思えない。
「そうなるとやはり軍備拡張が必要か。面白くなってきたな」
「……スグル、最初嫌がってたのに笑ってる」
「どうせやるなら楽しまければ損だ」
徐々に領地を広げて俗物でもわかるように力を見せつける。
王都を侵略するよりも戦いの回数自体は増えるだろう。
つまりはデータをとれる数も多くなる。これを無駄にする選択肢はない。
今後の展望を想像し再び笑みを浮かべた。
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