天才科学者の異世界無双記 ~SFチートで街づくり~

クロン

文字の大きさ
34 / 53
村発展編

34話 悪魔再び

しおりを挟む

 ホバーブーツで空を飛んで、空中に滞在している悪魔たちに近づいていく。
 下の戦場では兵士たちの悲鳴が聞こえてくる。

「な、なんだあれは……!? ま、まさか伝承の悪魔……!?」
「そんなの伝説の話じゃないのか!? 少し前の寄生人草《パラサイトフラワー》といいどうなっているんだ!?」

 寄生人草とやらに興味はもったが、今は悪魔たちに意識を向けなおす。
 ちょうど戦場の中心の上空だ。そこでは五体の悪魔が集まって何やら知性的な会話をしている。
 それを集音して内容を解析する。

「ようヤく蘇れタ。封印なドと小癪なマネをしてくれタ……あの魔術師ども、シテヤルにヤツザキ!」
「オチツケ。とっくに死んでいル」
「ナニ!? ならばこの世界の人間に償わせル!」

 知性的だが頭の良さは感じさせない会話だ。
 二体の悪魔が口論していて、残りは地上にいる人間たちを見ている。
 バレないように近づいているわけでもない私にまだ気づかない。どうやら周囲への探知能力は低いな。
 これについてはおそらく高い必要がないからと予想する。
 以前の悪魔と変わらない力を持つならば、不意打ちされてもそう簡単には死なない。

「ムゥ? ナニカ近づいてくるゾ」

 一体の悪魔がようやく私を見つけたようで、こちらを指さしてくる。
 だがすでに彼らと会話できる距離までたどり着いていた。
 せっかくなのでコミュニケーションをとってみるか。

「お前たちは悪魔と呼ばれる個体か?」
「アア!? 人間ごときがオレ様に話しかけるんじゃネェ! コロシテヤル!」
「オチツケ、コイツを捕らえて現状を把握するんダ」

 悪魔たちが好き勝手に話している。
 五体とも見た目は全く同じだが、知能レベルや性格には差があるようだ。
 それはいいのだが気になることがある。こいつらも人間に寄生して復活したはず。
 以前に見た悪魔は寄生元の意識が残っていた。だがこいつらは違うように思える。
 人間ごときというセリフは、自分たちが違う種別と認識していなければ言わない。

「お前たちはこの国かスグル町の兵士ではないのか?」
「アア!? オレたちは悪魔だ!」

 どうやら話はあまり成り立ちそうにない。
 言葉での情報収集は厳しそうだ。ならば捕獲しての調査が必要か。
 悪魔は強力ではあるが私とて以前から遊んでいたわけではない。
 空中コンソールを出現させて戦闘態勢に移行する。

「なんだその珍妙な魔法ハ? 魔力も全く感じないゼ!」
「どうやらオレたちが封印されていた間に、人間は貧弱になったようダナ!」

 悪魔たちがこちらを見下したように笑い始める。
 やはりこいつらからは知性を感じられない。身体的には強力な存在かもしれないが、頭脳の面では人間より下と見なせる。
 そもそも人間よりも上だったなら、おそらく封印などされていない。
 私の外部装甲《パワードスーツ》とそれなりの戦いができる強さだ。
 それに優秀な頭脳があれば、この世界を跋扈していたのは悪魔たちだっただろう。

「空中では戦いづらい。地上に落ちてもらうぞ」

 私は悪魔たちの笑いを無視して、コンソールを叩いて彼らの周りの重力を制御。
 通常の十倍の負荷へと変更する。

「アア!? か、身体が重ッ!?」

 悪魔たちは悲鳴をあげて地上へと墜落していく。
 彼らの翼は異常だ。人間以上の体重を持っている身体を、わずか一対で空へと飛ばしているのだ。
 空を飛ぶ生物は基本的に身体を軽量化しているがそれを無視している。
 その点から考えても恐ろしい性能の翼だが、十倍の重力には耐えられなかったらしい。
 地上に激突して五つの穴を作ったのを確認し私も降りた。
 すると穴から悪魔たちが出てきた。結構な高度から落ちたのだが、二重の意味で五体満足で生存している。

「てめぇ! よくもやりやがったナ!」

 悪魔の一体が口から私に向けて炎を吐いた。
 それを電磁障壁が自動で迎撃する。炎のエネルギー総量を確認するとやはり高いが、以前の悪魔の電撃に比べれば低い。
 手加減をしているのか、純粋にスペックが低いのかは不明だ。

「すまない、手加減をしているなら全力を出して欲しい。これではデータにならない」
「舐めやがっテ! お前らもヤレ!」

 口から炎を吹き続けながら声を出す悪魔。
 ずいぶんと器用だな、腹話術か何かだろうか。だが私が求めているのは宴会芸ではないが。
 他の悪魔たちが私に向けて口を開いた。どうやら同じように炎を出すようだ。
 ……以前は電気ウナギのように雷撃を出してきた。だが今回は炎を吹いてくる、個体によって差があるのだろうか。

「だが炎なんぞではな」

 ホバーブーツから強烈な勢いで空気を噴出させて、悪魔たちが吹いた炎をはじき返す。
 彼らは自らの炎に包まれるが、特に熱さや痛みを感じている様子が見えない。

「なっ!? 俺達の炎魔法が効かなイ!?」
「ふむ……炎を吐くだけあって、身体にも炎への耐性はあるのか」

 感心していると奴らは炎を吐くのをやめて、鋭い爪で私を切り裂こうとしてくる。
 当然電磁障壁に防がれるが、悪魔たちは爪による攻撃を続行する。
 しかも何故か笑みを浮かべているように見えた。 

「オレたちの攻撃を防ぐほどの魔法障壁、いつまでも出せはしないヨナァ!」
「……そうか」

 思わず呆れて声を出してしまった。そもそも魔法障壁ではない上に、彼らの攻撃の衝撃で障壁用のエネルギーは更に増えている。
 このまま続くならばむしろ永遠に発生させられる。
 さてここからどう捕獲するかだ。
 五体いるのは喜ばしいことだが厄介だ。一応は知性があるようだしダメ元で説得を試みてみるか。
 
「提案がある。実験体になる気はないか? 今なら三食昼寝つきを約束しよう」
「命乞いとハナ! 所詮は人間だナ! 聞くわけないダロ!」

 悪魔たちは電磁障壁に向けて、爪によるムダな攻撃を続けながら叫ぶ。
 どうやら説得は無理だな。この状況で命乞いと勘違いする者たちとは、まともな会話ができそうにもない。
 やはり強制的に捕獲する以外に選択肢はなさそうだ。
 そんなことを考えていると、悪魔の一体が我々の陣地のほうを指さした。

「オイ! アレは……!」
「オオ! いい贄がいるナ! アレならば我らが王の復活の苗床にナレル!」

 悪魔の指さした先を眼鏡の望遠機能で確認する。
 そこにいたのは、陣地から外を出て私たちを見守っているアリアだった。
 
「王に贄か。また新たな情報が出たのはいいがね……お前たちは不快だ」

 空中コンソールを叩いて私の周りの空間を歪曲させる。
 巨大な漆黒の大穴が空中に開いてそこから巨大な砲塔が出現する。
 これは亜空間に置いている自立型殲滅機体ヴィントの両腕の砲台。
 以前にジュペタの軍を半壊させた強制亜空間転送砲である。

「な、なんダそれハ!?」
「貴様らの声は聞くに堪えない。失せろ。強制亜空間転送砲起動」
『声紋承認。亜空間転送砲を発射します』

 砲台に七色の光が集まっていく。
 それを見た悪魔たちは砲台に向けて炎を吐くが、それすらも砲の先端でチャージ中の光に飲み込まれる。
 それでも愚かに炎を吐き続ける愚か者ども。
 やはり救いようのない知的生命体だ。こんな奴らならば封印されて当然である。
 
『発射まで3、2、1……亜空間転送砲、発射』

 砲身から七色の光が発射され悪魔たちの身体を飲み込む。
 何やら最後に大きく口を開いて叫んだようだが全く聞こえない。音すら亜空間へと飛ばされたのだから。
 奴らはしばらくの間、亜空間へ閉じ込めておく。餓死寸前まで弱らせた後に実験すればいい。
 そしてこの時点でのデータ解析でほぼ確定したことがある。
 この悪魔たちは個体としては以前の電気ウナギよりも弱い。
 生物として驚異的な力を持っていることに変わりはないが、総エネルギーや身体強度を測るとおよそ一割ほど劣っている。
  以前の悪魔より多少スペックが落ちていても、生物としては十分に高スペックなことに変わりはない。
 仮に私とアダム抜きで戦えば、私たちの軍は間違いなく全滅させられていた。

「……しかしこんな狭い範囲で悪魔が五体眠っているとは。世界各地での合計ならば何体封印されている?」

 地面を見ながら呟く。数体来ようが物の数ではないが、仮に千体以上出てきたら厄介だ。
 それに少し気がかりなことがある。先ほど亜空間に閉じ込めた悪魔たちの生命反応が減った。
 一体しか反応を感知できない。だがそいつの総エネルギーが跳ね上がっている。
 何かしたのだろうか。調査の必要があるな。

「王に贄か……この悪魔たちはやはり面白い。研究のかいがある」
 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

処理中です...