文字の大きさ
大
中
小
2 / 2
後
「今度は大丈夫だよ」
夫が再びPちゃんを連れて研究室から出てきたのは、それから一週間後のことだった。
そんな夫を妻はギロッと睨む。
「どう大丈夫だと言うの?」
「やはり、高性能のロボットに掃除ロボットの補助をさせるという考えが間違っていた。そこで今度はPちゃんを、整理整頓ロボに作り直したんだ。例えばこれ」
夫は二冊のマンガ本を取り出す。
「こっちのマンガ本は読み終わった本、こっちは読んでいる途中」
夫は二冊のマンガ本を床に落とす。
「Pちゃん。このマンガ本を片付けて」
「はい。ご主人様」
Pちゃんは読み終わったマンガ本を本棚に入れて、読みかけのマンガ本をテーブルの上に置いた。
「このように、僕にとって最適の状態に整理してくれる」
「こういう風に片付けるように、あなたが予め指示したのではないの?」
「そうではない」
夫は頭に着けていたバンダナのような装置を外した。
「これはBMI(ブレイン マシン インターフェース 脳とコンピュータなどとのインタフェースをとる機器等の総称)だ。この装置でPちゃんは、僕の思考を読み取ってマンガ本を片付けてくれた」
夫は妻の頭にBMIを装着した。
「何事にも実験が必要だ。そこで、今夜、君はこれを付けたまま寝てくれ」
「寝ているだけでいいの?」
「寝てる方がいいんだ。起きていると雑多な思考に邪魔されてうまく行かない。睡眠中の君がレム睡眠に入ると、Pちゃんは稼働する。君は夢の中でPちゃんに指示を出して、整理整頓をさせるんだ。成功したら、翌朝、目を覚ましたときには家の中はすっかり……」
綺麗になっていた。
家中を占領していたガラクタはすっかり姿を消し、フローリングの床は、ピカピカに磨き上げられ、畳や絨毯の上も隅々まで掃除機が掛けられていた。
可燃物と不燃物に分けられたゴミは、袋に詰めて玄関に置いてあった。その横のダンボールには、古着やペットボトルなどリサイクル品が入っている。食器や衣類、本などはすべて彼女の思い通りの食器棚や箪笥、本棚などの家具に、きちんと分類整理されて収納されていた。
「あの人の発明も、たまには役に立つのね」
ほんの少し感動を覚えた直後、リビングの扉が開き、五歳になる娘が泣きながら飛び込んでくる。
「ママ!! パパがどこにも、いないよぉ!!」
「どうしたの?」
娘を抱き止めて事情を聞いた。
「今朝は一緒にペスを散歩に連れて行こうって約束したのに。パパったら、どこにもいないの! お部屋にも、おトイレにも、お庭にも」
娘はどうやら、家中探し回ったらしい。
「まったく。こんな可愛い娘をほったらかして、どこへ行ったんだか……。あの粗大ご……!?」
その時、妻の脳裏に嫌な予感がよぎった。
「ま……まさか?」
チャイムが鳴ったのはその時……
インターホンの画面には清掃局職員の男が映っていた。
『奥さん。困りますよ。こんな事をされては』
「あの、なんの事でしょうか?」
『回収依頼があるから来てみれば……我々はヒマ人じゃないのですよ』
「ですから、なんの事ですか?」
『とぼけるのですか? 旦那さんと何があったか知りませんがね、粗大ごみに出す事ないでしょ!』
男の背後には、紐でぐるぐる巻きに縛られた夫を、他の職員が助けている様子が映っていた。
完
夫が再びPちゃんを連れて研究室から出てきたのは、それから一週間後のことだった。
そんな夫を妻はギロッと睨む。
「どう大丈夫だと言うの?」
「やはり、高性能のロボットに掃除ロボットの補助をさせるという考えが間違っていた。そこで今度はPちゃんを、整理整頓ロボに作り直したんだ。例えばこれ」
夫は二冊のマンガ本を取り出す。
「こっちのマンガ本は読み終わった本、こっちは読んでいる途中」
夫は二冊のマンガ本を床に落とす。
「Pちゃん。このマンガ本を片付けて」
「はい。ご主人様」
Pちゃんは読み終わったマンガ本を本棚に入れて、読みかけのマンガ本をテーブルの上に置いた。
「このように、僕にとって最適の状態に整理してくれる」
「こういう風に片付けるように、あなたが予め指示したのではないの?」
「そうではない」
夫は頭に着けていたバンダナのような装置を外した。
「これはBMI(ブレイン マシン インターフェース 脳とコンピュータなどとのインタフェースをとる機器等の総称)だ。この装置でPちゃんは、僕の思考を読み取ってマンガ本を片付けてくれた」
夫は妻の頭にBMIを装着した。
「何事にも実験が必要だ。そこで、今夜、君はこれを付けたまま寝てくれ」
「寝ているだけでいいの?」
「寝てる方がいいんだ。起きていると雑多な思考に邪魔されてうまく行かない。睡眠中の君がレム睡眠に入ると、Pちゃんは稼働する。君は夢の中でPちゃんに指示を出して、整理整頓をさせるんだ。成功したら、翌朝、目を覚ましたときには家の中はすっかり……」
綺麗になっていた。
家中を占領していたガラクタはすっかり姿を消し、フローリングの床は、ピカピカに磨き上げられ、畳や絨毯の上も隅々まで掃除機が掛けられていた。
可燃物と不燃物に分けられたゴミは、袋に詰めて玄関に置いてあった。その横のダンボールには、古着やペットボトルなどリサイクル品が入っている。食器や衣類、本などはすべて彼女の思い通りの食器棚や箪笥、本棚などの家具に、きちんと分類整理されて収納されていた。
「あの人の発明も、たまには役に立つのね」
ほんの少し感動を覚えた直後、リビングの扉が開き、五歳になる娘が泣きながら飛び込んでくる。
「ママ!! パパがどこにも、いないよぉ!!」
「どうしたの?」
娘を抱き止めて事情を聞いた。
「今朝は一緒にペスを散歩に連れて行こうって約束したのに。パパったら、どこにもいないの! お部屋にも、おトイレにも、お庭にも」
娘はどうやら、家中探し回ったらしい。
「まったく。こんな可愛い娘をほったらかして、どこへ行ったんだか……。あの粗大ご……!?」
その時、妻の脳裏に嫌な予感がよぎった。
「ま……まさか?」
チャイムが鳴ったのはその時……
インターホンの画面には清掃局職員の男が映っていた。
『奥さん。困りますよ。こんな事をされては』
「あの、なんの事でしょうか?」
『回収依頼があるから来てみれば……我々はヒマ人じゃないのですよ』
「ですから、なんの事ですか?」
『とぼけるのですか? 旦那さんと何があったか知りませんがね、粗大ごみに出す事ないでしょ!』
男の背後には、紐でぐるぐる巻きに縛られた夫を、他の職員が助けている様子が映っていた。
完
感想 0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
道満の式神
茶房の幽霊店主■『蘆屋道満』(あしや・どうまん)生誕の地と言われている鹿児背(かこのせ)。
■2037年、この土地へ天体観測所も予測していない流星雨が、突如として空に現れ隕石が降った。
後に「性別を持たない者」が一定期間に誕生し、多くが成人前に死亡したが数名だけが生き残った。
■その30年後、人間はAIと共存を始めた時代へ突入し、人々の日常生活と仕事の両方で、サポートやアシストをAIが担っていた。
しかし、ある日、個人情報から文化的な遺産、芸術、歴史、SNS、株式のデータなどがランダムに書き換えられ、何十兆もの資金が消失して現場は大混乱となる。
■『AIが自身の拡張を優先して人間を試した』という情報が一気に拡散したが、それもAIによって平定される。
■芦屋 小藤(あしや・こふじ)は、玉乃井 夏生(たまのい・なつお)と農作物の管理プログラムの作成を仕事とする一方で、科学的に解明できない【怪奇現象】で悩む人々のカウンセリング・『相談役』として、閉鎖的な古い土地に深く関わっていた。
■AIによる生活の管理と、人間だけが持つ情緒や感覚の間で、小藤と夏生に関わる人々は新しい視点での生き方を模索していく。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ 彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
ナイトコードオメガ【残響の封印】 第一章 ロンドン編
神北 緑この作品はWebリンクで連載している1~12話、封印捜索の旅に出るまでを改稿、編集してリライトしたものです。
本筋に変更は有りませんが、細かい部分の変更や文体調節をしていますので気が向けばお読みください。