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お見舞い

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 翌日、英子は入院中の弟を見舞いに訪れた。

「呪いの車? なにそれ」

 オカルト好きな弟は、英子の話に食いついてきた。

「なんでもね。そのナンバーの高級車が止まっているのが、都内のあちこちで見つかるのよ。それで、何人もの監視員が標章を貼るのだけど、それをやった監視員はその場で心臓麻痺を起こして死んでしまうんだって」
「へえ……」

 弟はしばらく考え込んでから言った。

「お姉ちゃん。その話おかしくない?」
「なにが?」
「その場で監視員が死ぬのに、どうしてその話が伝わるの?」
「え?」

 言われて初めて、英子はその矛盾に気がついた。当事者が死ぬのだから、話が伝わるはずがない。都市伝説によくある矛盾だ。

「ごめんね。中途半端な話しちゃって」
「ううん。僕、お姉ちゃんの話大好きだから、また聞かせてね」

 その時、突然弟が咳込んだ。

あきら! 大丈夫!?」

 英子は慌ててナースコールを押してから弟の背中をさする。 

「大丈夫だよ。最近、咳が多いんだ」

 程なくして看護師が来て、英子は入れ替わるように病室を出た。
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