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第二章 時空穿孔船
幾島研究所
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幾島時空管の本社ビルはお台場にあるが、あたしが向かったのはそこではない。時空管の製造設備がある軌道リングでもない。
研究所がある東京郊外の八王子だ。
その研究所はエキゾチック物質を利用した製品が研究されているらしい。長官の話ではそこの所長が幾島慧だという。
しかし、慧が所長になったのは父親のコネだというのは分かるが、はっきり言って慧は組織の長に収まる器ではない。子供の頃からあたしの後ろを子犬のように付いてくる、どちらかというとたよりない男の子だった。
もう三年以上会っていないが、その間に変わったのだろうか?
「この馬鹿息子が!!」
あたしが研究所の玄関に入った時、最初に聞こえてきたのは幾島社長の罵声だった。
玄関の受付嬢は、あたしが入ってきたことにも気付かないで所長室の方を見てオロオロしている。
どうやら少し遅かったようね。
「宇宙省から来た佐竹ですけど」
あたしに声をかけられ、受付嬢はようやくあたしの存在に気がついたようだ。
「あ! すみません。佐竹様ですね。アポは承っております。けど……」
「社長はいつここへ来たの?」
「一分ほど前ですけど……」
「早く通して。あたしがなだめてくるから」
「お願いします。早くしないと坊ちゃんが……いえ、所長が殺されちゃいます」
まあ、それは大げさだと思うけど。あたしは受付嬢に案内されて所長室に向かう。
「こんなガラクタ作るのに、テメエいったいいくら使ったんだあ!!」
中から聞こえてくる罵声に、受付嬢は怯えながらも所長室をノックする。
「宇宙省の方がお見えになりました」
「後にしろ! 今は取り込み中だ!!」
あたしはかまわず扉を開く。
背広を着たゴリラのような男、幾島時空管社長の幾島巌が白衣を着た二十代前半の小柄な男、息子の幾島慧を締め上げているところだった。小柄と言っても、身長は百七十以上ある。単に二メートルもある親父さんがそばにいることと慧がガリガリに痩せているせいで小柄に見えるだけだ。
あと、慧がとても成人には見えないような童顔ということもあるかな。
「おじ様。お久しぶりです」
幾島社長の手が緩み、あたしの方を振り向く。鬼のような形相がみるみる緩んでいく。
この親父さんは昔からあたしに甘いのだ。
「おお! 美陽ちゃんじゃねえか。いつ地球に帰ってきたんだ?」
その背後で、慧が激しくむせている。こりゃひょっとすると、一分遅かったら本当に殺されてたかも……
「昨日帰ってきたところです。それよりどうしたんです? 外まで聞こえてましたよ」
「おお聞いてくれ! この馬鹿が会社のエキゾチック物質を勝手に持ち出しやがって、ガラクタこしらえやがったんだ」
「だって、父さん。会社のエキゾチック物質を使っていいって言ったじゃないか」
だから、そういう火に油を注ぐような事は……
「馬鹿やろう!! ものには限度ってものがあるんだ!! 少しぐらいならいいが、あんな大量に持ち出す奴があるか!!」
いったい、どれだけ持ち出したんだろう?
「すぐに潰せ!! 潰してエキゾチック物質を回収しろ!!」
「そんなあ、せっかく作ったのに」
「なんだと!!」
再び、慧を締め上げようとする幾島社長をあたしは制止する。
「壊されちゃ困ります。あたしはそのガラクタを見せてもらいに来たんですから」
「なんだって?」
幾島社長は怪訝な目であたしを見る。
研究所がある東京郊外の八王子だ。
その研究所はエキゾチック物質を利用した製品が研究されているらしい。長官の話ではそこの所長が幾島慧だという。
しかし、慧が所長になったのは父親のコネだというのは分かるが、はっきり言って慧は組織の長に収まる器ではない。子供の頃からあたしの後ろを子犬のように付いてくる、どちらかというとたよりない男の子だった。
もう三年以上会っていないが、その間に変わったのだろうか?
「この馬鹿息子が!!」
あたしが研究所の玄関に入った時、最初に聞こえてきたのは幾島社長の罵声だった。
玄関の受付嬢は、あたしが入ってきたことにも気付かないで所長室の方を見てオロオロしている。
どうやら少し遅かったようね。
「宇宙省から来た佐竹ですけど」
あたしに声をかけられ、受付嬢はようやくあたしの存在に気がついたようだ。
「あ! すみません。佐竹様ですね。アポは承っております。けど……」
「社長はいつここへ来たの?」
「一分ほど前ですけど……」
「早く通して。あたしがなだめてくるから」
「お願いします。早くしないと坊ちゃんが……いえ、所長が殺されちゃいます」
まあ、それは大げさだと思うけど。あたしは受付嬢に案内されて所長室に向かう。
「こんなガラクタ作るのに、テメエいったいいくら使ったんだあ!!」
中から聞こえてくる罵声に、受付嬢は怯えながらも所長室をノックする。
「宇宙省の方がお見えになりました」
「後にしろ! 今は取り込み中だ!!」
あたしはかまわず扉を開く。
背広を着たゴリラのような男、幾島時空管社長の幾島巌が白衣を着た二十代前半の小柄な男、息子の幾島慧を締め上げているところだった。小柄と言っても、身長は百七十以上ある。単に二メートルもある親父さんがそばにいることと慧がガリガリに痩せているせいで小柄に見えるだけだ。
あと、慧がとても成人には見えないような童顔ということもあるかな。
「おじ様。お久しぶりです」
幾島社長の手が緩み、あたしの方を振り向く。鬼のような形相がみるみる緩んでいく。
この親父さんは昔からあたしに甘いのだ。
「おお! 美陽ちゃんじゃねえか。いつ地球に帰ってきたんだ?」
その背後で、慧が激しくむせている。こりゃひょっとすると、一分遅かったら本当に殺されてたかも……
「昨日帰ってきたところです。それよりどうしたんです? 外まで聞こえてましたよ」
「おお聞いてくれ! この馬鹿が会社のエキゾチック物質を勝手に持ち出しやがって、ガラクタこしらえやがったんだ」
「だって、父さん。会社のエキゾチック物質を使っていいって言ったじゃないか」
だから、そういう火に油を注ぐような事は……
「馬鹿やろう!! ものには限度ってものがあるんだ!! 少しぐらいならいいが、あんな大量に持ち出す奴があるか!!」
いったい、どれだけ持ち出したんだろう?
「すぐに潰せ!! 潰してエキゾチック物質を回収しろ!!」
「そんなあ、せっかく作ったのに」
「なんだと!!」
再び、慧を締め上げようとする幾島社長をあたしは制止する。
「壊されちゃ困ります。あたしはそのガラクタを見せてもらいに来たんですから」
「なんだって?」
幾島社長は怪訝な目であたしを見る。
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