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第一章

これってヤキモチかな?

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 足元をチョコチョコ歩いているリアルに目を向けた。
 猫って以外と寒さに強いのね。それとも、遺伝子操作で寒さに強い猫になったのかな?
 不意にリアルはジャンプして、ブロック塀の上に乗っかった。
 何しているんだろう?
 しきりに周囲を見回している。
「なあ、瑠璃華」
 ああそうか。周りに人がいないか確認していたのね。
「なに?」
「なんでため息ついてんだ?」
「別に……」
「そんなに嫌か? 俺が学校に来るのが?」
「そんな事言ってないじゃない。リアルが大変だと思って……」
「俺が? ああ!! 大丈夫だよ。もう人前で言葉を喋るようなドジはしない」
「そうじゃなくて、学校に行ったらまた星野さんにいじり回されるよ」
「ああ!! その事か。気にしなくていいよ。確かに最初は俺の中の猫の本能が驚いていたけど、なれればどうってことないや」
「いいの?」
「別に人間に撫でられる事は悪くないよ。気持ちいいし。ただし、信頼できる人間ならね」
「星野さんは信頼できるの?」
「ちょっと変わってるけど、悪い奴じゃなさそうだし」
 なあんだ。あたし一人で心配してただけか。
「そう。じゃあ心配ないのね」
「おい、瑠璃華。おまえなんか怒ってない?」
「別に怒ってなんかいないわよ」
「そうかあ?」
 あれ? あたしなんかイライラしている。
 これってヤキモチかな? 星野さんとリアルが仲良くするのが、あたしは嫌なのかな?
 ばかばかしい。
 なんで、猫なんかにヤキモチ焼くのよ。
 別に彼氏を取られたわけじゃなし……
 あたしの彼氏は、星野さんにも奪うことはできない。
 もう神様に奪われてしまったのだから。
 でも、真君の事、彼氏と言っていいのかな? 
 真君とはずっと友達以上恋人未満というぬるま湯のような関係が続いていた。
 でも、あたしは真君の事が好きだった。
 だけど、もし告白してしまったら、そのぬるま湯のような心地よい関係が壊れてしまうかもしれない。
 それが怖くてずっと告白できないでいた。
 そして、あたしは永遠に告白するチャンスを失った。
 もし、真君が事故に遭わないで約束の場所に来てたら、あたしは告白できただろうか?
「おい、瑠璃華。怒ってないなら、なんで不機嫌な顔してるんだ?」
「元々、こういう顔よ」
「そうか? いつもはもっと優しい顔してるぞ」
 やっぱあたし、ヤキモチ妬いてるのかな? 
 リアルが信頼できる人間が、あたし以外にできたというのが気に入らなかったのかな?
 あたしって結構独占欲強いかも……
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