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第一章

首輪メモリー

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「ねえ、リアル。なんかいい復讐ない?」
「ううん」
 リアルはしばしの間考え込んだ。
「そういえば、あいつから臭いがしたな」
「臭い? なんの?」
「煙草」
「煙草!! まあ、あいつならそのぐらいやってそうね」
「あいつが煙草吸ってる写真を撮って、先生に見せてやるというのはどうだ?」
「どうやって? あいつだって人前で煙草吸うほど馬鹿じゃないよ」
「もちろん隠し撮りだよ。ちょっと俺の首輪の飾りを引っ張ってくれ」
「え?」
 リアルの首輪には、ウズラの卵ぐらいの大きさの飾りが着いている。
 あたしは言われるままにその飾りを引っ張った。
 あれれ? 首輪と飾りを繋いでいるひもが伸びる?
「次は飾りの上に着いてるポッチを押してくれ」
 ポッチを押すと飾りが外れた。
 外れた後の紐の先に着いてるのは……
「USB端子?」
「それをパソコンにつないでくれ」
 パソコンにつなぐと、何かのソフトをインストールし始めた。
「どうなってるのよ? あんたの首輪」
「一種のコンピューターになってるんだ」
「コンピューター?」
「俺の脳にはチップが埋め込まれていて、首輪は常にチップと情報をやり取りしている」
リアルが説明している間にインストールが終了する。
 そして、パソコンの画面に現れたのは……
「ええ!? あたし?」
 パソコンの画面に映ったのは、紛れもなくあたしの顔だった。
「うそ? どこにカメラが?」
 あたしの顔は下から映されていた。と言う事はカメラの位置は……
「リアル!?」
 あたしはリアルの毛をかき分けてカメラを探した。
「にゃにゃ!! そんなとこ探したってカメラはないって」
「じゃあこの映像は?」
「今、俺が目で見ている映像だよ」
「ええ!? そんな事ってできるの?」
「まあ、一般には知られてないけどな」
「凄い」
「他に、こんな事もできる」
 映像が急速に巻き戻されていく。
 学校の映像が出た。
「首輪のメモリーに過去二十四時間の映像が入ってるんだ」
「へえ」
「次は飾りを拾ってくれ」
「これにも何かあるの?」
「それはインターネットに接続するアンテナになっているんだ」
「ええ!?」
「それを使えば、パソコンや携帯に映像を送れる」 
「ちょっと待って。それってヤバくない?」
「んにゃ? なにが?」
「それから電波を出したりしたら、内調に居場所がばれるんじゃないの?」
「んにゃにゃ!! 忘れてた!!」
 おいおい。

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