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第二章
やっぱり黒沢先生は良い人だった
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「君と初めて会った時は、石動と接触するために周囲でのあいつの評判を探ってたんだ」
「最悪だったでしょ」
「そりゃあもう。とにかく、石動の性格がわかったから、気の弱い転校生のふりをして奴に近づこうとしたわけ。そうすれば奴の方から噛みついてくると思って」
「じゃあ、あたしはよけいな事しちゃったのかな?」
「え?」
「だって、糸魚川君、本当は石動なんかよりずっと強いんでしょ?」
「よけいな事じゃないよ。演技とは言え、石動にはかなりムカついていた。だけど、一般人に暴力を振るえば僕は処分される。奴らにリンチされても反撃はできないんだよ」
「そうなの?」
「うん。だから、美樹本さんには感謝してるんだ」
「本当に?」
「ただ、あれはちょっとやっかいだったな」
「あれって?」
「石動が悪さをしている動画を撮って投稿した事」
「う!! そこまで知ってたの?」
まあ、相手は本職のスパイなんだからすぐわかっちゃうよね。
「君の投稿した動画、石動にかつ上げされた子の親が見てしまい、警察沙汰になったんだ」
「それは知ってるけど……」
「石動が逮捕されると僕としては困るので、上に頼んで警察の動きを止めてもらっていた」
それで、警察が動くのが遅かったんだ。
「じゃあ、あの日まだ学校に来ていなかったはずの黒沢先生の姿をリアルが見たのは?」
「ああ!! あれは僕の変装。黒沢先生には気の毒なことしてしまったけどね」
よかった。やっぱり黒沢先生は買収されるような人じゃなかったのね。
「ところがその後、図書室であっさりリアルの居場所がわかってしまった。だから、君達がトイレに行ってる間に、内調に連絡して警察にかけていた圧力を解除してもらったってわけさ」
「そうなんだ。でもさ、なんでリアルを見つけたのに何もしなかったの?」
「上からの命令でね、見つけても手を出すな。しばらく泳がせろと」
「なんで?」
「総理から、内調動物部隊を処分する命令が出たのは知っているかい?」
「ええ。それはリアルに聞いたわ」
「だけど内調の一部の人達がそれに異を唱えて、動物部隊を逃がしたんだ。もちろん、すぐに追跡命令が出たけど、動物部隊はその前にある国の大使館に逃げ込んだ」
「大使館に? なんで?」
「外国の大使館に逃げ込まれたら、日本政府は手が出せない。もちろん、工作員を送り込む事もできなくはないが、失敗したら外交問題に発展する。特に柳川総理は、そういう事をいやがるんだ」
「でも、リアルは……」
「正直言うと、リアルも大使館に逃げ込んだものと思っていた」
「思っていた?」
「普通、そう思うだろ。一緒に逃げていたんだから」
「最悪だったでしょ」
「そりゃあもう。とにかく、石動の性格がわかったから、気の弱い転校生のふりをして奴に近づこうとしたわけ。そうすれば奴の方から噛みついてくると思って」
「じゃあ、あたしはよけいな事しちゃったのかな?」
「え?」
「だって、糸魚川君、本当は石動なんかよりずっと強いんでしょ?」
「よけいな事じゃないよ。演技とは言え、石動にはかなりムカついていた。だけど、一般人に暴力を振るえば僕は処分される。奴らにリンチされても反撃はできないんだよ」
「そうなの?」
「うん。だから、美樹本さんには感謝してるんだ」
「本当に?」
「ただ、あれはちょっとやっかいだったな」
「あれって?」
「石動が悪さをしている動画を撮って投稿した事」
「う!! そこまで知ってたの?」
まあ、相手は本職のスパイなんだからすぐわかっちゃうよね。
「君の投稿した動画、石動にかつ上げされた子の親が見てしまい、警察沙汰になったんだ」
「それは知ってるけど……」
「石動が逮捕されると僕としては困るので、上に頼んで警察の動きを止めてもらっていた」
それで、警察が動くのが遅かったんだ。
「じゃあ、あの日まだ学校に来ていなかったはずの黒沢先生の姿をリアルが見たのは?」
「ああ!! あれは僕の変装。黒沢先生には気の毒なことしてしまったけどね」
よかった。やっぱり黒沢先生は買収されるような人じゃなかったのね。
「ところがその後、図書室であっさりリアルの居場所がわかってしまった。だから、君達がトイレに行ってる間に、内調に連絡して警察にかけていた圧力を解除してもらったってわけさ」
「そうなんだ。でもさ、なんでリアルを見つけたのに何もしなかったの?」
「上からの命令でね、見つけても手を出すな。しばらく泳がせろと」
「なんで?」
「総理から、内調動物部隊を処分する命令が出たのは知っているかい?」
「ええ。それはリアルに聞いたわ」
「だけど内調の一部の人達がそれに異を唱えて、動物部隊を逃がしたんだ。もちろん、すぐに追跡命令が出たけど、動物部隊はその前にある国の大使館に逃げ込んだ」
「大使館に? なんで?」
「外国の大使館に逃げ込まれたら、日本政府は手が出せない。もちろん、工作員を送り込む事もできなくはないが、失敗したら外交問題に発展する。特に柳川総理は、そういう事をいやがるんだ」
「でも、リアルは……」
「正直言うと、リアルも大使館に逃げ込んだものと思っていた」
「思っていた?」
「普通、そう思うだろ。一緒に逃げていたんだから」
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