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第三章

お台場の由来

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 夜景を前にして二人の男がいた。
 一人はポール・ニクソン。
 そしてもう一人、ハミルトンは、あたしから取り上げたスマホで誰かと電話していた。
「そうだ。第六台場へ来なさい。方法は任せる。君が大人しく来たらお嬢さんは解放する」
 アラブ人はポールに向かって英語で何かを言った。なんか口調からして怒っているみたい。ポールも何か言い返している。しばらく会話してからアラブ人はあたしの方を向く。
「第六台場であなたを解放すると言ってるわ」
「え? 第六台場って?」
「お台場は知ってるかしら?」
「ええっと……フジテレビがある……」
「その近くにある第六台場よ」
「ええっと……お台場に第一とか第六とかあるんですか?」
「あなた……お台場という名前の由来を知らないの?」
「知りません」
「まったく、近頃の歴史教育はどうなってるのかしら」
 そんな事あたしに言われても……
「日本が開国した頃の事は習ったかしら?」
「習ったというか、大河ドラマで見ました」
「じゃあ、昔、アメリカ艦隊が江戸幕府に大砲を突きつけて『開国しろ』と脅迫した事は知ってるわね」
「ええっと……それは知ってますけど……」
 まあ、言ってることは間違ってないけど、もうちょっとソフトに言っても……やっぱアラブの人はアメリカが嫌いなのかな? 
「アメリカ艦隊から江戸の町を守るため、幕府は品川沖を埋め立てていくつかの人工島を作り大砲を設置したの。その人工島が台場と呼ばれる海上要塞。現在のお台場という地名はそこから来ているのよ」
「はあ」
  なんか、この人、学校の先生みたい。てか、なんでアラブ人がそんなに日本史に詳しいの?

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