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第三章

シーガーデアン殲滅作戦  その1

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(三人称)
「これはすごい」
 男はディスプレイの映像に驚嘆した。
 そこに映っているのは十メートル離れたところにいる黒猫がその目で見た映像だった。
 彼女は猫を抱き上げて男に歩み寄る。
「どうかしら? この子を使ってみない?」
「内調の任務はどれも危険なものばかりだぞ。大事な猫を危険に晒したいのか?」
「私だってこの子に危険な事はさせたくないわ。でも、何か実績を作っておかないと、この子達が処分されちゃうのよ」
「事業仕分けか。困ったものだな。うちもかなり予算を削られた」
「だから、この子達が政府の役に立つとわかってもらえれば」
「内調の任務は極秘だ。役に立っても、それを公表する事はできない」
「知ってるわ。でも、総理には伝わるでしょ」
 知性化動物は役に立つと、総理に認めてもらえれば、仕分けの対象から外れると彼女は期待していたのだ。
「まあ、伝わるが……」
 男は苦虫を噛み潰したような表情をした。
「あの総理が認めるかどうか?」
「なんで?」
「まあ、やってみない事にはわからん。ちょうど打ってつけの任務もあるし」
 どんな任務かはその時は教えられなかった。彼女は部外者なのだから当然だ。
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