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第十七章

地下道

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 大人二人がやっと並んで通れる幅の地下道は、ねっとりとした暗闇に包まれていた。

 いや、暗いだけならいいのだよ。

 ロボットスーツには暗視装置があるし、同行してくれた医者にも投光器を持たせてある。

 ミールの分身体も暗闇など問題ないのだが、今回は地下道入り口に待機させてあった。

 要塞内に敵の残存勢力がいる可能性がある以上、誰か一人を地下道入り口の見張りに残す必要があったから。

 その場合、目立つロボットスーツよりも、姿を自在に消せる分身体の方が都合いいので。

 しかし、やはりミールの分身体を連れてきた方が良かったかもしれない。

 この地下道、暗いだけでなく曲がり角がいくつもあるのだ。

 これは塹壕と同じで狙撃手などが隠れやすいように、わざとジグザクに作ってあるのだろう。 

 こんなところで、対物アンチマテリアルライフルなんかで狙われたらひとたまりもない。

 なのでドローンを先行させて、安全を確認してから進んでいるのだが……

 それより気になるのは……

 ポタ! ポタ!

 さっきから激しく垂れてくる水滴。

 この地下道、川底より低い位置にあるらしい。

 この水滴は地下水なんかではなく、川の水が漏れてきているようだ。

「この地下道。大丈夫でしょうか?」

 僕の背後で、芽衣ちゃんが不安そうに言う。
 
「なんか、今にも崩れそうですね」

 芽衣ちゃんの背後を歩いていた橋本晶が天井を見上げる。

「でも、いざとなったら、橋本さんが雷神丸で天井に脱出口を切り開いて下さると、私は信じていますから」
「いや、森田さん! 無理ですって! 信じられても困ります」

 本人は無理だと言っているが、彼女ならマジでできそうな気がする。

「もう少し先へ行くと、水滴はおさまるよ」

 そう言ったのは、僕の横を歩いていた医者。

「なんでも、この地下道は補強工事の途中だったらしくて、工程の三分の二までは終わっていたらしい。補強工事の終わった箇所なら水漏れはない」

 医者の言うとおり、しばらく進むと水滴は止まる。

 ここから先は、補強されているようだ。

 その分、地下道が若干狭くなったように感じるが、まあ崩れるよりもいいだろう。

「なるほど。僕達との戦闘が始まったので、工事を中断したのですね」
「いや、そうではないらしい」
「え?」
「工事を中断したのは、半年前だそうだ。原因は予算の都合と聞いている。だから君達とは関係ないと思う。それとも、君達は半年前からこの要塞に攻撃を仕掛けていたのか?」

 いやいや、半年前ならこの要塞の存在すら知らなかったし……

「予算がないからと言って、あの水漏れを放置するのは拙いでしょ」
「半年前は、あそこまで酷くなかったそうだ」
「では、半年の間にあそこまで悪化したと……」
「そう聞いている」
「しかし、予算がないからと言っても命に関わる問題では」
「ない袖はふれないのだろう」

 まあ、そうだな。

 しかし、それならそれで、崩壊の危険がある地下道をなぜ使い続けるのだ?

 普通は立ち入り禁止にすべきだろう。

 何か裏かあるのか?
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