297 / 893
第十章
三次元の死角
しおりを挟む
「アクセレレーション」
電磁石弾を投げると同時に、加速機能を起動。
僕はエラの周囲を高速で走り回った。時折ショットガンを撃ちながら……エラからも、ブラズマボールを撃ってくる。
しかし、その速度は遅く、僕は余裕で避けられた。
一方で、僕の撃った散弾もエラに届くことなく、エラを取り巻くプラズマの壁を発生させていく。
前回戦ったとき、僕はとんだ思い違いをしていた。
エラの周囲に発生したプラズマの壁が、ショットガンの散弾を防いでいたと……
冷静に考えれば、そんな事があるはずがない。
高速で飛んでくる金属の固まりを、薄いプラズマの壁で防げるはずがない。
プラズマの壁は、高周波磁場で弾丸が防がれた結果発生したものだったのだ。
しかし、これは本当に高周波磁場なのだろうか?
高速で飛んでくる弾丸を瞬時にプラズマ化するとなると、そうとうのエネルギーが必要だ。磁場の及ぶ範囲も、もっと広範囲になるはず。
ところが、この現象はエラの周囲五メートルにしか及んでいない。
なにか、他の未知の現象では……
「学習しない男だな。私に死角などないというのが、まだ分からんのか」
エラに声をかけられ、思考を中断した。
エラの周囲は、すっかり輝くプラズマの壁に取り囲まれ、エラ本人の姿がはっきりとは見えない。
プラズマの壁は、エラの周囲で高速回転していた。
これは回転する磁場の動きに合わせて、プラズマが動いているからだ。
ということは、高周波磁場は確かに発生している。
ただし、その効果はエラから五メートル離れたところでぷっつり切れていた。原因は分からないが……
「確かに、あんたには死角がない」
僕はマガジンを交換しながら答えた。
「ただし、二次元からはね」
「なに?」
次の瞬間、プラズマの壁が消滅した。
その向こうにいたエラは、首から上がズタズタに引き裂かれ、周囲に鮮血を蒔き散らしている。
そのエラの真上に、ショットガンを構えた芽衣ちゃんが、重力を打ち消して浮かんでいた。
エラの高周波磁場に死角はない。平面で見る限りは……
しかし、真上からなら、回転する磁場の中心軸が見える。
それこそが、エラの死角だったのだ。
僕がエラの周囲を走り回って銃撃を続けたのは、プラズマの壁を発生させて回転する磁場を可視化するため。
磁場の動きが見えるようになったら、上空で待機していた芽衣ちゃんが、回転磁場の中心に銃撃するのが、僕達の立てた作戦だった。
甲板上に芽衣ちゃんが着地すると同時に、エラの遺体は崩れるように倒れた。
「北村さん! やりましたね。作戦成功です」
「ああ。大成功だ」
後は、青エラを同じ方法でやるだけ。
分身達は四人にまで減っていたが、青エラの動きを押さえてくれている。
「北村さん! 避けて!」
え?
突然、芽衣ちゃんに身体を押された。
その芽衣ちゃんのロボットスーツから甲高い金属音が響く。
視線を移す……しまった! ドローンが戻ってきている。
電磁石弾を投げると同時に、加速機能を起動。
僕はエラの周囲を高速で走り回った。時折ショットガンを撃ちながら……エラからも、ブラズマボールを撃ってくる。
しかし、その速度は遅く、僕は余裕で避けられた。
一方で、僕の撃った散弾もエラに届くことなく、エラを取り巻くプラズマの壁を発生させていく。
前回戦ったとき、僕はとんだ思い違いをしていた。
エラの周囲に発生したプラズマの壁が、ショットガンの散弾を防いでいたと……
冷静に考えれば、そんな事があるはずがない。
高速で飛んでくる金属の固まりを、薄いプラズマの壁で防げるはずがない。
プラズマの壁は、高周波磁場で弾丸が防がれた結果発生したものだったのだ。
しかし、これは本当に高周波磁場なのだろうか?
高速で飛んでくる弾丸を瞬時にプラズマ化するとなると、そうとうのエネルギーが必要だ。磁場の及ぶ範囲も、もっと広範囲になるはず。
ところが、この現象はエラの周囲五メートルにしか及んでいない。
なにか、他の未知の現象では……
「学習しない男だな。私に死角などないというのが、まだ分からんのか」
エラに声をかけられ、思考を中断した。
エラの周囲は、すっかり輝くプラズマの壁に取り囲まれ、エラ本人の姿がはっきりとは見えない。
プラズマの壁は、エラの周囲で高速回転していた。
これは回転する磁場の動きに合わせて、プラズマが動いているからだ。
ということは、高周波磁場は確かに発生している。
ただし、その効果はエラから五メートル離れたところでぷっつり切れていた。原因は分からないが……
「確かに、あんたには死角がない」
僕はマガジンを交換しながら答えた。
「ただし、二次元からはね」
「なに?」
次の瞬間、プラズマの壁が消滅した。
その向こうにいたエラは、首から上がズタズタに引き裂かれ、周囲に鮮血を蒔き散らしている。
そのエラの真上に、ショットガンを構えた芽衣ちゃんが、重力を打ち消して浮かんでいた。
エラの高周波磁場に死角はない。平面で見る限りは……
しかし、真上からなら、回転する磁場の中心軸が見える。
それこそが、エラの死角だったのだ。
僕がエラの周囲を走り回って銃撃を続けたのは、プラズマの壁を発生させて回転する磁場を可視化するため。
磁場の動きが見えるようになったら、上空で待機していた芽衣ちゃんが、回転磁場の中心に銃撃するのが、僕達の立てた作戦だった。
甲板上に芽衣ちゃんが着地すると同時に、エラの遺体は崩れるように倒れた。
「北村さん! やりましたね。作戦成功です」
「ああ。大成功だ」
後は、青エラを同じ方法でやるだけ。
分身達は四人にまで減っていたが、青エラの動きを押さえてくれている。
「北村さん! 避けて!」
え?
突然、芽衣ちゃんに身体を押された。
その芽衣ちゃんのロボットスーツから甲高い金属音が響く。
視線を移す……しまった! ドローンが戻ってきている。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる