325 / 897
第十一章

キャビン(天竜過去編)

しおりを挟む
 船内のキャビンは、カーテンでいくつかの区画に仕切られるようになっていた。
 楊さんが操縦室へ行くのを確認すると、趙は真ん中のカーテンを閉めてアーニャと柳を自分の方へ来るように促す。

「男はこっちへ来るんじゃないわよ! 良いわね!」

 そう言って、趙はカーテンを閉めた。

「誰が行くか! この性悪女」

 王もすっかり喧嘩腰だ。趙の方は言い返さず、ただカーテンの下から手を差し出してカーテンから延びている紐を床の突起に結びつけて固定していた。今、船は加速中なのでこのキャビンにも1Gの重力が作用しているが、エンジンが止まって慣性航行状態になればここは無重力だ。そのときにカーテンがまくれあがらないための処置らしい。

「麗華。何もこんな事しなくても……王さんは良い人よ」

 カーテンの向こうから柳の声。

「魅音。あいつは良い人に見せかけていただけで、私達を襲う機会を狙っていたのよ」
「何かの間違えじゃないの?」
「間違えなんかじゃない……ちょっとアーニャ! そっちは男部屋よ」

 カーテンが開いてアーニャが出てきた。
 趙の方を振り向く。

「私、白龍君とお話がしたいから、こっちにいるわね。戦闘開始までそんなに時間ないし、着替える必要もないでしょ」
 
 するとカーテンの向こうから趙が出てきて、僕を指差した。

「ダメよ! こんな女の子みたいな可愛い顔をしているけど、これだって男よ!」

 これ!?……僕も、この女を嫌いになる事にしよう。

「白龍君は、私を襲ったりはしないわ」
「ダメダメ! 男はみんな狼なのよ」
「大丈夫よ。白龍君は、もう好きな女の子がいるから、私達に興味はないと思うわ」

 その通り。特に趙 麗華。おまえにはない。

「男の子が怖いなら、あなた達はカーテンの向こうに隠れていれば。私は別に平気だから」
「アーニャ駄目よ。そっちへ行っては……」
「私は平気だと言っているのよ。それとも趙 麗華さん。あなたは他に私をこっちへ行かせたくない理由があるの?」
「な……ないわよ! そんなの」

 趙は渋々カーテンを閉めた。

「私ね……」
 
 アーニャは僕と向き合うように床に座り込んだ。

「嘘をついている人は分かるのよ」

 え?

「別に超能力じゃないわ。嘘をついている人は、顔の表情とか見ていたら分かっちゃうの」
「俺が嘘をついているように見えるか?」

 王はアーニャの前に顔をつきだした。アーニャは首を横にふる。

「もし、王君は嘘をついていると思ったら、私はこっちへ来ないわよ」
「そうか。じゃあ、アーニャは俺を信じてくれるんだな?」
「ええ。白龍君は?」
「僕は王を信じるよ。だって、あの趙 麗華って子、言っている事が矛盾だらけだし……」

 趙 麗華は王のノックを聞いていないと言っていた。それにも拘らず、自分は「着替え中だから」と言ったのに王がドアを開けたと言っている。
 ノックが聞こえていないなら、ドアの向こうの相手に「着替え中だから」という事を言うはずがない。
 その矛盾に、本人だけが気が付いていないみたいだ。

「そうか。白龍も俺の味方になってくれるか。まったく、何なんだよ。あの女」
「王君。今、向こうに怒鳴り込むのはやめてね。戦闘開始まで時間がないから」
「分かっているよ。《天竜》に戻ったらとっちめてやる」

 しかし、なんだってこんな事を……
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...