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第十一章

宇宙機vs宇宙機(天竜過去編) 2

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 不意にアーニャのアバターが趙麗華の前に出る。

「な……何よ。アーニャ。何か文句でもあるの?」
「趙麗華さん。あなた認識が甘いわね」
「どういう事よ?」
「私たちが今、どれだけ危険な状況があるか分かっていないようね」
「危険? 宇宙機がやられても、母船の中にいる私達は……」
「母船の中が安全だなんて、いつから錯覚していたの?」
「は?」
「宇宙機を操作できるのは二万キロが限界。だけど、敵のグレーザー砲の有効射程は五万キロ。《天竜》を守るためには、五万キロ以上離れた宙域で迎撃する必要がある。だから、宇宙機母船を作った。その母船に乗っている私達は、グレーザー砲の有効射程内にいるのよ」

 趙のアバターの顔が青くなった。まさか、今まで気がついていなかったのか?

「それぐらい知っているわよ。でも、グレーザー砲は《天竜》攻撃用よ。私達相手に使うわけ……」
「レーザー機は五機あるわ。その中の一機だけでも、《天竜》に十分な損害を与えることができる。残りの四機は予備なのよ。その予備機を、私達が乗っている母船攻撃に使う可能性は十分にあるのよ」
「そ……そんな……私達……死ぬの?」

 ショックを受けている趙麗華の顔を、王が覗き込む。

「なあ、趙麗華。気が付いていなかったのか?」
「気が付いてないわよ! 宇宙機を遠隔操作するだけの、安全な仕事って聞いていたのよ。普通、分からないわよ!」
「いや、ちょっと考えれば分かるだろ」

 次に趙麗華は僕に詰め寄った。

「こんな事、分かるわけ、ないよね? あんたも知らなかったでしょ?」
「いや、僕は最初から知っていたけど……」
「うそ……私だけ気が付いていなかったってこと……」

 趙麗華がショックを受けている間に、こちらの戦果が伝わってきた。

 護衛機三機大破、二機小破。レーザー機損害なし。

 あれだけ攻撃したのに、たったこれだけの損害しか与えられなかったのか。

 不意に僕達の前に、楊さんのアバターが出る。さっきまで声だけだったのに……

「今、柳魅音が予備機を起動させました。この予備機が君達の予備機四機を曳航して、次の攻撃ポイントに向かっています。他の母船からも予備機を出して攻撃ポイント向かっています。攻撃ポイントに着き次第、あなた達は現在使用している機体を遺棄して予備機にリンクして下さい。それまでは、アーニャの指示に従って敵を牽制してね」

 趙麗華が楊さんの前に出る。

「楊さん、私達……死ぬのですか?」
「はあ? 何を言っているの? 今更」
「だって、宇宙機がやられても大丈夫だけど、母船が攻撃されたら……」
「母船はそんな簡単にはやられないから。それと、玄武隊の生き残りを君達と合流させるから、短い間だけど仲良く戦ってね」
「あ! ちょっと」

 楊さんのアバターがパッと消えた。

「おおい! 朱雀隊の人達」

 遠くから声が聞こえてきたのはその時……

 声の方を見ると女の子が一人駆けてくる。

 どうやら、彼女が玄武隊の生き残りのようだな。 
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