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第十三章

GF-9フーファイター

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 円盤型の物体が飛んでいた。

 その物体にはジェットエンジンもプロペラも気嚢きのうも見あたらない。

 では、どうやって宙に浮いていられるのか?

「重力制御ドローンのようだな」
「ご主人様。カタログと照合したところ、西暦二〇九五年にアメリカ宇宙軍が採用した重力制御ドローンです」

 重力制御装置には非バリオン物質が必要。

 矢納課長はリトル東京から非バリオン物質を持ち出していったと、成瀬真須美は言っていた。

 という事は、これを動かしているのは……

「ご主人様。相手のドローンから通信です」

 相手が誰だか分かる。

 居留守使おうかな……いやいやだめだろうな。

「Pちゃん。繋いでくれ」

 繋ぎたくないけど……

『よお。北村。久しぶりだな』

 メインモニターには、二度と見たくなかった顔が大写しで現れた。

 カマキリを思わせる顔。

 矢納課長。

『どうした? 死んだはずの男がここにいるので驚いたのか?』
「別にそんな事は驚いていませんけど……僕だって一度死んだ男だし……」
『そうだったな。殺したのは俺だが』
「あなたが三人再生された事は知っています」
『ほう。知っていたのか』
「《イサナ》であなたがやって来たことも露見しました。《イサナ》にある、あなたの電子データはすでに削除デリートされたようですよ」

 矢納課長は軽く舌打ちをする。

『なに。構うことはないさ。所詮はデータだ。それより北村。今度こそ貴様をぶっ殺してやるぜ』

 という事は、よほどの自信があるようだな。

「どうやって? 戦力はこちらの方が圧倒的に有利なはずですが」
『圧倒的有利? それは昨日までの話さ。俺とエラ・アレンスキーが援軍に駆けつけた今、おまえの優位は崩れたのさ』

 エラも来ていたのか。ううむ、こっちのエラと戦わせたら、どっちが勝つだろう?

『だからって『降伏しろ』なんて言わないぜ。降伏したって無駄だ』

 矢納課長の話を聞きながら、僕はPちゃんの用意してくれたデータに目を走らせた。

『俺は降伏なんて認めない。お前らを皆殺しにするまで……』

 矢納課長のセリフを遮るように僕は大声を張り上げた。

「総員撤退準備!」
『ちょっと待てい! 撤退ってどういう意味だ!?』
「てったい【撤退】[名・自サ変]軍隊などが陣地・根拠地などを取り払って退くこと。「前線[海外市場]から撤退する」」
『いや、ポメラ内蔵国語辞典を読み上げなくても『撤退』が逃げるという意味ぐらい分かっているが……なぜ逃げる? 勝負しろ』
「GF-9フーファイター。アメリカ宇宙軍が二〇九五年に正式採用した重力制御ドローン。大気圏内でも宇宙空間でも使用可能。最大加速六G。武装は十メガワット自由電子レーザー砲。動力源は対消滅炉」
『俺のドローンのスペックをもう調べたのか。早いな』
「そのドローンの性能では、あなたの言う通りこちらの優位は崩れました。僕は勝ち目のない戦いをするほど馬鹿ではないので撤退します。さようなら」
『まて! 男らしく勝負しろ!』
「男らしくと言われましても、こっちのクルーの大半は女性ですから」
『大半が女性……ハーレムかよ。なんてうらやましい奴だ』
「いや……そんなにいいものでもないけど……」
『やかましい! 俺はおまえのそういう態度が一番気にさわるんだよ』

 そういうところって、どういうところだよ?

『おまえ『いいものでもない』とか言いながら、内心は優越感に浸っているんだろ!』

 浸っていないって……

『俺のことも『不細工でモテない男』と思ってバカにしているんだろ!』

 だからしていないって……ウザいとは思っているけど……

「僕があなたの部下だったころ、あなたの事を馬鹿にしたり軽蔑したりはしていなかった」

 今はしているけど……

「勝手な憶測でひがまないでください。迷惑なんですよ」
『やかましい! お前なんかに俺の気持ちがわかってたまるか!』

 そりゃあ分からんよ。

『お前、女に告白されたことあるだろう?』
「そりゃあまあ……」
『俺なんかなあ、告白なんてされた事なんてないんだぞ。それどころか女を口説いても、いつも『ウザい』とか『キモイ』とか言われてフラれるんだ』

 それだけ性格悪ければな……

『よってお前は俺の敵だ』
「勝手に敵認定されても……」
『やかましい! イケメンはすべて俺の敵だ!』
「僕は別にイケメンじゃないし……」
「「「「「「「え゛?」」」」」」」

 な……なんだ? 周囲を見回すとPちゃんもミールも、芽衣ちゃんもミクもキラもアーニャも馬艦長も意外そうな目で僕を見ていた。

『とにかく、俺はお前の存在が許せん。絶対にぶっ殺す』

 面倒な人だな。
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