499 / 897
第十三章

余計な荷物

しおりを挟む
 とは言っても、あの人が大人しく落とされるわけ、ないだろうけどね。

 ほら、通信に割り込んできた。

『こら! おまえら、何を勝手な事を! フライング・トラクターを絶対に手放すなよ』
『そんな事言ったって矢納さん。このままでは俺たち全滅ですよ。矢納さんとエラさんが死んでも、俺と古淵君だけでも生き残っていた方がいいでしょ』
『馬鹿野郎! 矢部! おまえと古淵は死んでもいいが、俺は助けろ』

 そんな態度じゃ、誰も助けてくれないって……

「矢部さん。古淵さん。どうします? そろそろミサイルを撃ちたいので、余計な荷物を手放すか、手放さないか決めてくれませんか?」
『こら! 北村! 俺を『余計な荷物』呼ばわりするな!』

 だって余計な荷物じゃん。

『待って下さい、隊長。余計な荷物を手放しますから、ミサイルはもう少し待って下さい』
『こら! 古淵! てめえまで俺を……ここで手放したら俺が死ぬんだぞ。俺が死んでもいいのか!?』
『いいですよ』

 古淵はあっさりと肯定した。まあ、するだろうね。

『いいですよね? ねえ、矢部さん』
『そうだね。古淵君。何も問題ないよね』
『お……おまえら……』
『気に入らない事があるとすぐに暴言吐くし、暴力ふるうし、最低の人だったな』
『どうでもいい自慢話をしてマウント取りたがって、本当にウザかったし、自分のミスをすぐ人のせいにするし……』

 うんうん、分かるぞ。その気持ち。

『というわけで、今から余計な荷物を捨てます』
『遠慮なくミサイルを撃って下さい』
『やめろ! おまえら……もう少しで自動修復が終わる。それまで……』

 矢部も古淵も聞く耳は持たなかった。

『せえの』『ぽい』

 そのまま余計な荷物は落下していく。

 もう少しで川面に叩きつけられる……と思ったその時、不意に余計な荷物フライング・トラクラーの落下が停止する。

 ギリギリで自動修復が間に合ったのか?

 いや、違う。フライング・トラクターの十メートル上にフーファイターが浮いている。それの発生させる重力場で、落下を食い止めたようだ。

 しかし、フーファイターが作れる重力場は一度に一カ所だけ。同時に複数は発生させられない。

 つまり、フライング・トラクターを支えている限り、フーファイターにはミサイルから防御する手段がないわけだ。

 今ならただの標的。

『ささ、隊長』『遠慮なくミサイルを……』

 矢部と古淵の言葉に甘え、僕は九十一式地対空誘導弾を発射した。

 ミサイルはフライング・トラクター目指して真っ直ぐ飛んでいく。

 その時、フライング・トラクターの窓が開いてエラが腕を突き出してきた。

 プラズマボールで迎撃する気か?

 しかし、九十一式は偽の熱源では騙せない……いや、違う。

 エラは大量のプラズマボールを高密度で放ってきた。ミサイルとフライング・トラクターの軸線上に……

 エラの意図は、偽の熱源ではない。プラズマボールを使ってフライング・トラクターの姿を隠すこと……

 今、ミサイルの位置からは、フライング・トラクターの姿がプラズマボールに隠されて確認できない。姿を確認できなければ、画像認識追尾イメージホーミングも役に立たない。

 ミサイルはフライング・トラクターの側を空しく通り過ぎていった。

 続いてもう一発撃ったが、それもエラのプラズマボールに阻まれてしまう。

 通信機から矢納さんの笑い声が聞こえてきた。

『あひゃひゃひゃ! 北村。どうやら弾切れのようだな。フーファイターの修理が終わったら、また遊んでやるぜ。今後こそアバヨ!』

 フーファイターはフライング・トラクターを重力場で下げたまま、《アクラ》に向かって飛び去っていく。

 残念だが、九十九式の性能では追いつけない。

 となると、当面僕たちが戦う相手は……
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...