上 下
539 / 827
第十四章

時間切れだ

しおりを挟む
「エラ」

 ミクがミーチャを指さした。

「それじゃあ、あんたは今、この子に何をしようとしていたのよ?」
「何って……こんな天使みたいな可愛い子がいたら、抱きしめたくなるのが人情というものだろう?」
「それだけ? 抱きしめて、電撃をする気じゃなかったの?」
「それは……そりゃあ、やりたいという気持ちはあるが、私だってモラル意識はある。そんな事はしないぞ」
「ふーん」

 ミクは疑わしい視線を向ける。

「ああ! 思い出した。その男の子は、私のコピーから、ヒドい事をされていたのだったのな。そりゃあ、私の姿を見たら怯えても仕方がない。済まなかったな」

 ミクもキラも、エラにあっさり謝られて拍子抜けしたようだ。ただ、ミーチャだけはキラの後で怯えている。

 その様子を見てミクは言った。

「今のあんたに、悪意はないのは分かったけどさ、見ての通りミーチャが怯えているの。この子は心に深い傷を負っているのよ。悪いけど、《水龍》に戻ってもらえる」
「ああ、そうしたいのだが……」

 エラは五十メートル先を併走している《水龍》を指さした。

「あれと接舷してもらわんと戻れないし、今はそれをできる者は……」

 甲板中を指さした。

「みんな酔いつぶれている」
「しょうがないなあ」

 ミクは懐から人型の憑代を取り出して甲板に投げた。

「出よ! 式神」

 人型はムクムクと膨れ上がり金色の竜……オボロに変化。

「さあ、乗って」

 ミクはオボロの後にエラを乗せて飛び立った。

 まあ、とりあえず僕が出て行かなくても治まったか。

「カイトさん」

 ミール、やっと目を覚ましたか。

「あたし、いつの間にか寝ちゃいましたね。さあ、Pちゃんが戻ってくる前に続きを……」

 いや、時間切れだ。

「ご主人様、ミールさん。何をやっているんです」

 ミールの背後に、怒りに肩を振るわせているPちゃんが立っていた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

私の婚約者はちょろいのか、バカなのか、やさしいのか

恋愛 / 完結 24h.ポイント:376pt お気に入り:2,752

能力1のテイマー、加護を三つも授かっていました。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:10,587pt お気に入り:2,217

絵姿

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:122

俺を裏切り大切な人を奪った勇者達に復讐するため、俺は魔王の力を取り戻す

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,212pt お気に入り:92

【完結】あなたは優しい嘘を吐いた

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,313pt お気に入り:565

処理中です...