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第十五章
まじめな話
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ジジイを《水龍》の一室に閉じこめると、あらためて会議を始めた。
「今回の偵察で、北ベイス島の防空体制は把握できた。はっきり言って、空からいきなり攻めるのは危険だ。そこで、今回は地上走行ドローンを使って、防空陣地の無力化を計りたい」
アーニャが手を上げた。
「その前に、フーファイターをどうにかしないと。制空権を取らないまま、地上走行ドローンなんて出してもすぐに全滅よ」
「そのために、ナージャを島に残してきた」
「というと?」
「リトル東京から供与された探知機器を使えば、フーファイターの誘導波を探知できる。だから、フーファイターとは直接戦わず、誘導波の発信源を突き止めてそこを叩く」
「なるほど。でも、そのためにはフーファイターを挑発して、しばらくの間飛び回らせる必要があるわね。私にいい考えがあるけど、フーファイター対策は私に任せてもらえるかしら?」
「分かりました。それはアーニャさんに任せます。次に……」
それから僕たちは、作戦の細かいプランを練っていった。
メインの作戦が上手く行かなかった時のプランBからFまでを決め、失敗したときの撤退計画まで決めた時には、みんなヘトヘトに疲れていた。
「さて、最後にみんなに気をつけてほしいことがある。今回の作戦はカートリッジの奪還だが、この地下施設は後で無傷のまま手に入れたい。なぜなら、この地下施設を使えばレムに支配された人たちを解放できるからだ。なので、地下施設は可能な限り壊さないでほしい。もちろん、人命が最優先だから、命の危険を犯してまで守る事はない。壊れた時は別の手を考える」
アーニャが手を上げた。
「質問してもいいかしら?」
「どうぞ」
「この地下施設が、プシトロンパルスを遮る事ができるというのは分かったわ。だから壊したくないのよね?」
「そうです」
「プシトロンパルスを遮る物質は、どのような形態をしているの? それが、施設のどのあたりに埋まっているのか分からないのでは戦いにくいわ」
「そうですね。それはジジイ……博士に聞きましょう」
ジジイの分身体に説明を求めた。
「人の脳から発生するプシトロンパルスは、如何なるバリオン物質も素通りしてしまう。ハイパーカミオカンデをもってしても、それを検出する事は不可能じゃった」
ハイパーカミオカンデ! この人の時代には完成していたのか。
「じゃが、非バリオン物質の中にはプシトロンを吸収できるものがある。その非バリオン物質は、通常のバリオン物質とも相互作用があるのじゃ。それを利用して、タウリ族はプシトロンパルスを遮る物質を作った。それは白い粘土のような物質で、地下施設の壁に埋め込まれている」
「タウリ族は、なぜそんな事をしたのです?」
芽依ちゃんの質問にジジイは答えた。
「なんでも、この惑星はバイオン粒子の濃度が異常に濃いらしい。地球の数十倍から百倍はあるじゃろうな。なので、バイオンクラスターがそこら中に漂っている。ちょっと強めのプシトロンパルスを発生させると、すぐに実体化してしまうのじゃ」
この惑星で超能力が強くなるのは、そういう事だったのか。
「タウリ族のプシトロンパルスはかなり強い。だから、この惑星でまともに生活するには、それを遮る物質が必要だったのじゃ」
「その物質を、タウリ族は今でも調達する事はできるのか?」
僕の質問にジジイの分身体は首を横にふる。
「それに関しては聞いていない。スーホを探し出して聞くしかないな」
どうやら、ジジイに分かる事はここまでのようだな。
ここで僕は会議を終了することにした。
「カイトさん。Pちゃん。ちょっといいですか?」
発令所を出たところで、僕はミールに呼び止められた。
「まじめな話があるので、三人だけでお話したいのです」
僕とミール、Pちゃんはジジイの分身体を伴って《海龍》内の一室に入っていった。
「それで、ミール。まじめな話って?」
「あのお……」
ミールは言いにくそうだ。
「こんな事を言うのは、とても辛いのですけど……」
辛い?
「そうですか。ミールさん。ついに決断されたのですね。ご主人様から身を引くと」
「ええ、大変辛いことですが……ちっがーう! あたしがカイトさんから、身を引くわけないでしょ!」
そう言ってミールは僕の腕にしがみついた。
「カイトさんは、あたしのです。誰にも渡しません」
「ご主人様は、ミールさんの物ではありません」
頭痛い……
「Pちゃん! あたしはまじめな話をすると言ったのですよ。話をそらさないで!」
「はいはい。それでミールさんは、何を言いたいのですか?」
「はい。カイトさん。Pちゃん。今回の偵察ですが、レムにあたしたちの動きを知られていました。なぜだと思います?」
「それは……」
「カイトさん。顔色が変わったところを見ると、やはりカイトさんも気が付いていましたね」
「ミール。何が言いたい?」
「艦隊内の誰かが、あたしたちの情報をレムに流していると思うのです」
やはり、ミールもそう思っていたのか……
「今回の偵察で、北ベイス島の防空体制は把握できた。はっきり言って、空からいきなり攻めるのは危険だ。そこで、今回は地上走行ドローンを使って、防空陣地の無力化を計りたい」
アーニャが手を上げた。
「その前に、フーファイターをどうにかしないと。制空権を取らないまま、地上走行ドローンなんて出してもすぐに全滅よ」
「そのために、ナージャを島に残してきた」
「というと?」
「リトル東京から供与された探知機器を使えば、フーファイターの誘導波を探知できる。だから、フーファイターとは直接戦わず、誘導波の発信源を突き止めてそこを叩く」
「なるほど。でも、そのためにはフーファイターを挑発して、しばらくの間飛び回らせる必要があるわね。私にいい考えがあるけど、フーファイター対策は私に任せてもらえるかしら?」
「分かりました。それはアーニャさんに任せます。次に……」
それから僕たちは、作戦の細かいプランを練っていった。
メインの作戦が上手く行かなかった時のプランBからFまでを決め、失敗したときの撤退計画まで決めた時には、みんなヘトヘトに疲れていた。
「さて、最後にみんなに気をつけてほしいことがある。今回の作戦はカートリッジの奪還だが、この地下施設は後で無傷のまま手に入れたい。なぜなら、この地下施設を使えばレムに支配された人たちを解放できるからだ。なので、地下施設は可能な限り壊さないでほしい。もちろん、人命が最優先だから、命の危険を犯してまで守る事はない。壊れた時は別の手を考える」
アーニャが手を上げた。
「質問してもいいかしら?」
「どうぞ」
「この地下施設が、プシトロンパルスを遮る事ができるというのは分かったわ。だから壊したくないのよね?」
「そうです」
「プシトロンパルスを遮る物質は、どのような形態をしているの? それが、施設のどのあたりに埋まっているのか分からないのでは戦いにくいわ」
「そうですね。それはジジイ……博士に聞きましょう」
ジジイの分身体に説明を求めた。
「人の脳から発生するプシトロンパルスは、如何なるバリオン物質も素通りしてしまう。ハイパーカミオカンデをもってしても、それを検出する事は不可能じゃった」
ハイパーカミオカンデ! この人の時代には完成していたのか。
「じゃが、非バリオン物質の中にはプシトロンを吸収できるものがある。その非バリオン物質は、通常のバリオン物質とも相互作用があるのじゃ。それを利用して、タウリ族はプシトロンパルスを遮る物質を作った。それは白い粘土のような物質で、地下施設の壁に埋め込まれている」
「タウリ族は、なぜそんな事をしたのです?」
芽依ちゃんの質問にジジイは答えた。
「なんでも、この惑星はバイオン粒子の濃度が異常に濃いらしい。地球の数十倍から百倍はあるじゃろうな。なので、バイオンクラスターがそこら中に漂っている。ちょっと強めのプシトロンパルスを発生させると、すぐに実体化してしまうのじゃ」
この惑星で超能力が強くなるのは、そういう事だったのか。
「タウリ族のプシトロンパルスはかなり強い。だから、この惑星でまともに生活するには、それを遮る物質が必要だったのじゃ」
「その物質を、タウリ族は今でも調達する事はできるのか?」
僕の質問にジジイの分身体は首を横にふる。
「それに関しては聞いていない。スーホを探し出して聞くしかないな」
どうやら、ジジイに分かる事はここまでのようだな。
ここで僕は会議を終了することにした。
「カイトさん。Pちゃん。ちょっといいですか?」
発令所を出たところで、僕はミールに呼び止められた。
「まじめな話があるので、三人だけでお話したいのです」
僕とミール、Pちゃんはジジイの分身体を伴って《海龍》内の一室に入っていった。
「それで、ミール。まじめな話って?」
「あのお……」
ミールは言いにくそうだ。
「こんな事を言うのは、とても辛いのですけど……」
辛い?
「そうですか。ミールさん。ついに決断されたのですね。ご主人様から身を引くと」
「ええ、大変辛いことですが……ちっがーう! あたしがカイトさんから、身を引くわけないでしょ!」
そう言ってミールは僕の腕にしがみついた。
「カイトさんは、あたしのです。誰にも渡しません」
「ご主人様は、ミールさんの物ではありません」
頭痛い……
「Pちゃん! あたしはまじめな話をすると言ったのですよ。話をそらさないで!」
「はいはい。それでミールさんは、何を言いたいのですか?」
「はい。カイトさん。Pちゃん。今回の偵察ですが、レムにあたしたちの動きを知られていました。なぜだと思います?」
「それは……」
「カイトさん。顔色が変わったところを見ると、やはりカイトさんも気が付いていましたね」
「ミール。何が言いたい?」
「艦隊内の誰かが、あたしたちの情報をレムに流していると思うのです」
やはり、ミールもそう思っていたのか……
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