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第十六章
『敵さん、お願い』
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地下施設入り口へ僕たちが着くのに、山頂を出発してから一分とかからなかった。
ただし、到着したのはロボットスーツ三機と、ミクの式神オボロだけ。
ミールとキラの分身体は、もう少し時間がかかりそうだ。
付近の様相は、最初に偵察した頃とかなり変わっている。
当然だろうな。ドローンであれだけドカドカ爆撃したのだから……
対空砲のあった辺りは、クレーターがボコボコ空いていた。
特に弾薬庫があった辺りには、一際巨大なクレーターができている。
カルルが女性兵士をナンパしてふられた食堂は跡形も無くなっていた。
一方、崖に開いている高さ五メートルほどの四角い穴……地下施設入り口が崩れている様子はない。
ここだけは攻撃が当たらないようにしたのだから当然だが、実際にこの目で見るまでは流れ弾が当たって崩れたりしていないか心配だったのだ。
これからあの中に入るわけだが、中は真っ暗で何も見えない。
「敵兵はいないのかな? 確か、捕虜の尋問では二個小隊ほどが残っているはずだが……」
僕のつぶやきに芽依ちゃんが答えた。
「主力が海岸付近からこっちへ戻ってくるようです。それが来るまで、潜伏しているのではないかと」
なるほど。だが、海岸からここへ来る道は、艦砲射撃で潰してある。どんなに急いでも、到着に二時間はかかるだろう。
「それより、古淵さんもここにいるはずですよ」
だよな。こいつが一番の強敵だが、できれば殺したくはない。
だが、古淵はおそらくここにいない。
もし、僕の予想通りだとすれば今頃は……
「隊長」
橋本晶に呼ばれて振り向いた。
「地下施設入り口内部に、熱源多数出現。敵兵が陣地を構築しているようです」
それを聞いて僕は、通信機でミクを呼び出した。
「ミク。オボロを地下施設入り口前に降ろしてくれ」
『オッケー! お兄ちゃん』
「ただし、攻撃はしなくていい」
『ええ! 攻撃しちゃだめなの?』
「敵の出方を見たいだけだ。だから、攻撃の必要はない」
『ぶう! 反応しなかったら、攻撃してもいい?』
「反応がなかった時は、一発ぐらい撃ち込んでいい」
空を舞っていた金色の竜が、地上に降りてきた。
いつもなら、ミクが乗っているのだが、今回この竜には誰も乗っていない。ミク本人は、山頂基地にいながら、プシトロンパルスでオボロを操っているのだ。
崖に開いている入り口の前に着地。
『敵さん、お願い』
通信機から、ミクの呟きが聞こえてくる。
『いい子だから、このまま反応しないでね。反応しないでいてくれたら、ミクちゃん特製プラズマボールを、ご褒美に撃ち込んであげるからね』
オイオイ……
だが、敵はいい子ではなかった。
ミクが戯言を呟いたとたんに、真っ暗な穴の中から、銃弾の雨が竜に襲いかかってくる。
これはフリントロック銃なんかではない。
AK-47だな。
どっちにしても、オボロの結界に弾き返されるだけだが……
『お兄ちゃん。プラズマボール撃ち込んでいい?』
「いや、だめだ。敵の出方が分かったので、もう十分。オボロはもう下げていいよ」
『ぶう! 分かったよ』
オボロが空中に上がっていく。
と、そのとき、オボロの正面で何かが爆発した。
どうやら、RPG7を撃ち込まれたようだ。
オボロを守っていた結界も、この攻撃には耐えられずガラスのように砕け散る。
続いて、オボロの姿も消滅した。
「ミク! 大丈夫か?」
『オボロの憑代をやられちゃったよ。アクロなら、このくらい耐えられるのに。待っていて、お兄ちゃん。すぐにアクロを送り込むから』
「分かった」
どうやら、敵は少ない戦力を地下施設入り口に集約したらしい。
「隊長。ちょっといいですか?」
橋本晶の方を振り向いた。
「熱源体の動きが変です」
どう変なのだろう?
「熱源体の数は二十五ですが、実際に動いているのは五体だけ。残りの二十はフェイクではないかと……」
フェイク?
「人ではなく、動物か何かではないかと……」
という事は……
「これが古淵の作戦だとするなら、どういう意図があると思う?」
橋本晶は少し考えてから答える。
「こちらに大勢いると見せかけて、別働隊が山頂に向かっていると考えられます」
僕は芽依ちゃんの方を向いた。
「芽依ちゃんもそう思うかい?」
「はい。敵の目的がミクちゃんの拉致なら、そもそも地下施設を守る必要などありません。私たちが地下施設を攻撃に向かっている間に、山頂基地を攻撃に向かうと考えられます」
まあ、僕もそれは予想していた。
「北村さん。どうします?」「引き返しますか?」
二人の問いに対して、僕は首を横にふる。
「その必要はない。敵が別働隊を送り込むことは想定の範囲内。すでに対策は立ててある。僕たちはこのまま、地下施設の占領に向かう。別働隊はアーニャに任せるよ」
「しかし、別働隊には古淵さんがいます」「九九式が相手では……」
「大丈夫。九九式への対策も用意してある」
「でも……できれば古淵さんを殺したくは……」
「言い忘れた。僕の対策は、あくまでも生け捕りを想定した対策だ。もっとも……古淵なら僕の罠を見破るかもしれないけどね」
ミールとキラの分身体が到着したのはその時だった。
ただし、到着したのはロボットスーツ三機と、ミクの式神オボロだけ。
ミールとキラの分身体は、もう少し時間がかかりそうだ。
付近の様相は、最初に偵察した頃とかなり変わっている。
当然だろうな。ドローンであれだけドカドカ爆撃したのだから……
対空砲のあった辺りは、クレーターがボコボコ空いていた。
特に弾薬庫があった辺りには、一際巨大なクレーターができている。
カルルが女性兵士をナンパしてふられた食堂は跡形も無くなっていた。
一方、崖に開いている高さ五メートルほどの四角い穴……地下施設入り口が崩れている様子はない。
ここだけは攻撃が当たらないようにしたのだから当然だが、実際にこの目で見るまでは流れ弾が当たって崩れたりしていないか心配だったのだ。
これからあの中に入るわけだが、中は真っ暗で何も見えない。
「敵兵はいないのかな? 確か、捕虜の尋問では二個小隊ほどが残っているはずだが……」
僕のつぶやきに芽依ちゃんが答えた。
「主力が海岸付近からこっちへ戻ってくるようです。それが来るまで、潜伏しているのではないかと」
なるほど。だが、海岸からここへ来る道は、艦砲射撃で潰してある。どんなに急いでも、到着に二時間はかかるだろう。
「それより、古淵さんもここにいるはずですよ」
だよな。こいつが一番の強敵だが、できれば殺したくはない。
だが、古淵はおそらくここにいない。
もし、僕の予想通りだとすれば今頃は……
「隊長」
橋本晶に呼ばれて振り向いた。
「地下施設入り口内部に、熱源多数出現。敵兵が陣地を構築しているようです」
それを聞いて僕は、通信機でミクを呼び出した。
「ミク。オボロを地下施設入り口前に降ろしてくれ」
『オッケー! お兄ちゃん』
「ただし、攻撃はしなくていい」
『ええ! 攻撃しちゃだめなの?』
「敵の出方を見たいだけだ。だから、攻撃の必要はない」
『ぶう! 反応しなかったら、攻撃してもいい?』
「反応がなかった時は、一発ぐらい撃ち込んでいい」
空を舞っていた金色の竜が、地上に降りてきた。
いつもなら、ミクが乗っているのだが、今回この竜には誰も乗っていない。ミク本人は、山頂基地にいながら、プシトロンパルスでオボロを操っているのだ。
崖に開いている入り口の前に着地。
『敵さん、お願い』
通信機から、ミクの呟きが聞こえてくる。
『いい子だから、このまま反応しないでね。反応しないでいてくれたら、ミクちゃん特製プラズマボールを、ご褒美に撃ち込んであげるからね』
オイオイ……
だが、敵はいい子ではなかった。
ミクが戯言を呟いたとたんに、真っ暗な穴の中から、銃弾の雨が竜に襲いかかってくる。
これはフリントロック銃なんかではない。
AK-47だな。
どっちにしても、オボロの結界に弾き返されるだけだが……
『お兄ちゃん。プラズマボール撃ち込んでいい?』
「いや、だめだ。敵の出方が分かったので、もう十分。オボロはもう下げていいよ」
『ぶう! 分かったよ』
オボロが空中に上がっていく。
と、そのとき、オボロの正面で何かが爆発した。
どうやら、RPG7を撃ち込まれたようだ。
オボロを守っていた結界も、この攻撃には耐えられずガラスのように砕け散る。
続いて、オボロの姿も消滅した。
「ミク! 大丈夫か?」
『オボロの憑代をやられちゃったよ。アクロなら、このくらい耐えられるのに。待っていて、お兄ちゃん。すぐにアクロを送り込むから』
「分かった」
どうやら、敵は少ない戦力を地下施設入り口に集約したらしい。
「隊長。ちょっといいですか?」
橋本晶の方を振り向いた。
「熱源体の動きが変です」
どう変なのだろう?
「熱源体の数は二十五ですが、実際に動いているのは五体だけ。残りの二十はフェイクではないかと……」
フェイク?
「人ではなく、動物か何かではないかと……」
という事は……
「これが古淵の作戦だとするなら、どういう意図があると思う?」
橋本晶は少し考えてから答える。
「こちらに大勢いると見せかけて、別働隊が山頂に向かっていると考えられます」
僕は芽依ちゃんの方を向いた。
「芽依ちゃんもそう思うかい?」
「はい。敵の目的がミクちゃんの拉致なら、そもそも地下施設を守る必要などありません。私たちが地下施設を攻撃に向かっている間に、山頂基地を攻撃に向かうと考えられます」
まあ、僕もそれは予想していた。
「北村さん。どうします?」「引き返しますか?」
二人の問いに対して、僕は首を横にふる。
「その必要はない。敵が別働隊を送り込むことは想定の範囲内。すでに対策は立ててある。僕たちはこのまま、地下施設の占領に向かう。別働隊はアーニャに任せるよ」
「しかし、別働隊には古淵さんがいます」「九九式が相手では……」
「大丈夫。九九式への対策も用意してある」
「でも……できれば古淵さんを殺したくは……」
「言い忘れた。僕の対策は、あくまでも生け捕りを想定した対策だ。もっとも……古淵なら僕の罠を見破るかもしれないけどね」
ミールとキラの分身体が到着したのはその時だった。
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