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第六章
バイクの二人乗りは危険
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この場は、引くしかなかった。
僕らはダモン夫人に別れを告げると、手紙だけを持って関所を後にした。
もちろん、この手紙はネクラーソフ宛なんかではない。
ダモンさんへの手紙だ。
「ミール。ダモンさんは、本当にそんな事をやると思うかい?」
歩きながら、僕はミールに話しかけた。
「あの人なら、やると思います」
「思いとどまらせる事は出来ないかな?」
「……」
ミールは無言で俯いている。
聞くまでもないことを聞いてしまった。
そんな方法があったら、とっくにミールはやっているはず……
しばらく歩いて、関所が完全に見えなくなった。
周りに人がいないことを確認してから、僕らは鎧兜を脱ぎ、バイク用のヘルメットを被った。隠して置いた電動バイクのカモフラージュを取り除く。
「あたし、会ってみようと思います」
ダンデムシートの上から、ヘルメットのインカムを通じてミールがそう言ったのは、バイクが走り出してしばらくしてからの事。
「会うって? 誰に?」
「ダモン様に。分身ではなく、あたし自身が……」
「ちょっと待て。それって城に入るって事か?」
「そうです」
「危険すぎるぞ!」
「でも、それ以外にダモン様を説得する方法は、ないと思います」
「分身じゃだめなのか?」
「ダモン様に考え直して頂くには、あたし自身を人質にするしかありません」
「どういう事?」
「ダモン様は、大切な事を忘れているのです。罪の重さから逃れたいあまり、自らの命を絶とうとしている。でも、そんな事をしたら、悲しむ人間がいるという事を忘れているのです。それを思い出してもらいます」
「だけど……」
「大丈夫です。あたし、命根性汚いですから。自分が助かるために、あらゆる手を尽くしてから行きますわ」
「僕も……」
「カイトさんは残っていて下さい」
「なんで?」
「決まっているじゃないですか。あたしが、敵の手に捉えられた時に、助けに来てくれる人がいないと」
助けに行くのも大変なんだけどな……なるべく捕えられないでくれ……
「ところで、カイトさん。バイクというものに乗るのは初めてなのですけど……」
「ごめん。怖かったかい」
初めてバイクの後ろに乗ると、かなり怖い思いをすると聞いていた。だからスピードはかなり落としたつもりだったのだが、まだ速かったかな?
僕はスロットルを緩めた。
「いえ、怖くはありませんが、あたしの座り方これで正しいのですか? なんかイメージしていたのと違うのですけど……」
ちなみ、ミールはダンデムシートに横座りして乗っていた。
Pちゃんから、そういう風に座るように聞いていたのだ。
さらに、Pちゃんがプリンターで出したバイクは背もたれがあるで、運転手に抱き着かなくても安定して乗れる。
ようするに、ミールが僕に抱き着かないように、そういうのを出したのだろう。
しかし、なんだってあいつはロボットのくせに、こうもヤキモチ焼くんだろう?
『ミールさん。その座り方で、間違ってはいません』
突然、インカムにPちゃんの声が割り込んできた。
盗聴してたんかい!
『だから、間違っても、ご主人様に抱き着いたらダメですよ』
「抱き着く?」
ミールは、しばらく考えこんだ。
「おお! 何か違うと思っていたら、それでしたわ」
ミールは、僕の身体に腕を回して抱き着いてきた。
「ちょっ……ちょっと……ミール」
二人とも防弾服を着ているので、体温は伝わってこないが……
「カイトさん。怖いからこうさせて下さいね」
さっきは怖くないって、言ったじゃないか。
『ご主人様、大丈夫ですか? 心拍数が上がっていますが』
「おまえ、なんで僕の心拍数が分かるんだ?」
『防弾服に、センサーが付いているのです』
「そうだったのか」
『それより、心拍数が……ミールさん。何かやっているのですか!?』
「何って、バイクから振り落とされない様に、カイトさんにしがみ付いているだけですが、なにか?」
『なんですって! 離れなさい! 今すぐ』
「ほほほ! 悔しかったら、邪魔しにきてごらんなさい。お人形さん」
『ぐぬぬ……帰ったら、覚えてらっしゃい』
なんか、帰るのコワいな……
僕らはダモン夫人に別れを告げると、手紙だけを持って関所を後にした。
もちろん、この手紙はネクラーソフ宛なんかではない。
ダモンさんへの手紙だ。
「ミール。ダモンさんは、本当にそんな事をやると思うかい?」
歩きながら、僕はミールに話しかけた。
「あの人なら、やると思います」
「思いとどまらせる事は出来ないかな?」
「……」
ミールは無言で俯いている。
聞くまでもないことを聞いてしまった。
そんな方法があったら、とっくにミールはやっているはず……
しばらく歩いて、関所が完全に見えなくなった。
周りに人がいないことを確認してから、僕らは鎧兜を脱ぎ、バイク用のヘルメットを被った。隠して置いた電動バイクのカモフラージュを取り除く。
「あたし、会ってみようと思います」
ダンデムシートの上から、ヘルメットのインカムを通じてミールがそう言ったのは、バイクが走り出してしばらくしてからの事。
「会うって? 誰に?」
「ダモン様に。分身ではなく、あたし自身が……」
「ちょっと待て。それって城に入るって事か?」
「そうです」
「危険すぎるぞ!」
「でも、それ以外にダモン様を説得する方法は、ないと思います」
「分身じゃだめなのか?」
「ダモン様に考え直して頂くには、あたし自身を人質にするしかありません」
「どういう事?」
「ダモン様は、大切な事を忘れているのです。罪の重さから逃れたいあまり、自らの命を絶とうとしている。でも、そんな事をしたら、悲しむ人間がいるという事を忘れているのです。それを思い出してもらいます」
「だけど……」
「大丈夫です。あたし、命根性汚いですから。自分が助かるために、あらゆる手を尽くしてから行きますわ」
「僕も……」
「カイトさんは残っていて下さい」
「なんで?」
「決まっているじゃないですか。あたしが、敵の手に捉えられた時に、助けに来てくれる人がいないと」
助けに行くのも大変なんだけどな……なるべく捕えられないでくれ……
「ところで、カイトさん。バイクというものに乗るのは初めてなのですけど……」
「ごめん。怖かったかい」
初めてバイクの後ろに乗ると、かなり怖い思いをすると聞いていた。だからスピードはかなり落としたつもりだったのだが、まだ速かったかな?
僕はスロットルを緩めた。
「いえ、怖くはありませんが、あたしの座り方これで正しいのですか? なんかイメージしていたのと違うのですけど……」
ちなみ、ミールはダンデムシートに横座りして乗っていた。
Pちゃんから、そういう風に座るように聞いていたのだ。
さらに、Pちゃんがプリンターで出したバイクは背もたれがあるで、運転手に抱き着かなくても安定して乗れる。
ようするに、ミールが僕に抱き着かないように、そういうのを出したのだろう。
しかし、なんだってあいつはロボットのくせに、こうもヤキモチ焼くんだろう?
『ミールさん。その座り方で、間違ってはいません』
突然、インカムにPちゃんの声が割り込んできた。
盗聴してたんかい!
『だから、間違っても、ご主人様に抱き着いたらダメですよ』
「抱き着く?」
ミールは、しばらく考えこんだ。
「おお! 何か違うと思っていたら、それでしたわ」
ミールは、僕の身体に腕を回して抱き着いてきた。
「ちょっ……ちょっと……ミール」
二人とも防弾服を着ているので、体温は伝わってこないが……
「カイトさん。怖いからこうさせて下さいね」
さっきは怖くないって、言ったじゃないか。
『ご主人様、大丈夫ですか? 心拍数が上がっていますが』
「おまえ、なんで僕の心拍数が分かるんだ?」
『防弾服に、センサーが付いているのです』
「そうだったのか」
『それより、心拍数が……ミールさん。何かやっているのですか!?』
「何って、バイクから振り落とされない様に、カイトさんにしがみ付いているだけですが、なにか?」
『なんですって! 離れなさい! 今すぐ』
「ほほほ! 悔しかったら、邪魔しにきてごらんなさい。お人形さん」
『ぐぬぬ……帰ったら、覚えてらっしゃい』
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