134 / 897
第六章

奴が来た

しおりを挟む
 低く垂れこめた雲の中に、ドローンは突入した。
 視界ゼロ。
 他のドローンの位置はレーダーで分かるけど……下はどうなっているのだろう?
 計算通りなら、すでに城の上にいるはず。
 地球と違ってGPS衛星からの誘導はできない。

 通信機でミールを呼び出す。
「ミール。今、城の上空にいるはずなのだが、ドローンの音は聞こえるかい?」
『カイトさん。あれって、ドローンの音なんですか? 雷かと思いました』
 そう言えば、ミールにはジェットドローンを見せた事がなかったな。
 いつもは、音の静かな飛行船タイプを使っていたし……
『帝国兵たちも、驚いてみんな上を見上げています』
「ミールは今、どごにいるんだ? ダモンさんの部屋からは見えないと思うけど……」
『カイトさんがドローンで攻撃するというから、よく見えるように見張り塔へ移動したのです。見張り塔までは、ダモン様の部屋から、抜け穴が通じてましたから見つからないで行けました』
 忍者屋敷か。あの城は……
『ところで、攻撃する場所ですが食糧庫と弾薬庫と言ってましたね。ただし、弾薬庫は直撃させないで、近くの燃えやすい物を狙うと』
「そうだけど」
『食糧庫はいいのですが、弾薬庫の周辺は燃えるものがありません』
「しまったあ!」
 考えてみれば当然だ。弾薬庫は火気厳禁に決まっている。
『なので、分身たちを動員して、燃えるごみを弾薬庫の近くに積み上げておきました』
「おお! よくやってくれた」
『帰ったら、誉めて下さいね』
「もちろんさ。ところで僕の預けた拳銃は今持っているかい?」
『はい。肌身離さず持っています』
「拳銃に着いているレーザーポインターの使い方は分かるかい?」
『分かりますよ。面白いから、ついつい使いまくってましたが』
 おいおい……バッテリーは残っているだろうな……
「それじゃあ、分身達が積み上げたゴミの山に、レーザーを照射してくれ」
『はーい』
 三機のドローンのうち一機……菊花一号を手動に切り替えて機首を下げた。
 高度が徐々に下がり、やがて雲を抜ける。
 城が見えた。
 城の見張り塔から、一本の光の筋が伸びている。
 どうやら、バッテリーは切れていなかったようだ。
 光の筋の先に、ボロ布やら木片やらを積み上げた山があった。
「ミール。もういいよ。レーザーを止めて」
『はーい』
 レーザーは消えたが、ゴミの山がどこにあるかもう分かった。
 菊花一号から空対地ミサイルを発射する。
 炎の尾を引いてミサイルは進む。
 吸い込まれるようにゴミの山に飛び込み爆発。
 そのまま、ゴミの山は炎上する。
 続いて食糧庫を狙う。
 帝国兵は、慌てて集まってきて消火活動に入った。
 時折、帝国兵は銃撃をしてくるが、フリントロック銃ごときでジェットドローンは落とせない。
 僕はミサイルの続く限り、燃えやすそうな建物にミサイルを撃ちまくった。
 ミサイルを全弾撃ち尽くした菊花一号には、自動操縦でこっちへ戻ってくるように指令する。
 もちろん、攻撃の手を休める気はない。
 上空で待機していた菊花二号を手動に切り替えて攻撃を継続した。
「ミール。そっちはどうだ?」
『大騒ぎです。帝国兵たちは火を消すのに必死です』
 そうだろうな。弾薬庫の近くが燃えているのだから……
「ベジドラゴンの周辺は?」
『誰もいなくなりました。飼育係に化けているあたしの分身以外は』
「ちょっと待って。近くをドローンで偵察してみる」
 菊花二号を、ベジドラゴン達が閉じ込められている檻の方へ向けた。
 鉄の檻の傍で、一人の男がこっちに向かって手を振っている。
「今、手を振っているのは、ミールの分身だね?」
『そうですよ』
「その背後から三人の男がやってくるが、それは?」
『え?』
 手を振っていた男が、背後を振り向いた。
 後ろから近付いてきた男たちに銃を突き付けられる。
『こいつら、分身達がゴミを積み上げていたのを見ていたようです。『怪しい奴だ。ちょっと来い』と言ってますが』
 見てはならないものを見てしまったようだな。
 男の一人に狙いを定めてミサイルを発射。
 男は、たちまち火だるまになる。
 他の二人は、銃撃で倒した。
 他に人はいないようだ。
「ミール。もう大丈夫だ。ベジドラゴンを解放して」
『はーい』
 ミールの分身は檻を解放した。
 ミサイルを撃ちつくした菊花二号に帰還命令を出して、菊花三号を手動に切り替えた時、Pちゃんが叫んだ。
「ご主人様。別のドローンが急速接近しています」
「なに!?」
 その直後、上空に滞空して情報を集めていた飛行船タイプからの連絡が途絶えた。

 落とされたのか?

 という事は、そのドローンは敵?
「ご主人様。相手のドローンから通信が入っています。繋ぎますか?」
「繋いでくれ」
 通信機の画面に、金髪頭を短く刈り込んだ若い男の顔が現れる。
『よお。久しぶりだな。北村海斗』
「おまえは……!」
 奴が来た。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...