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第六章

欠陥品

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「どわわわ!」
 カルルは十メートル先の壁に、大の字になってめり込んだ。 
 
 残時間百秒

 そろそろ、限界かな?

 いや、まだのようだ。

 壁から這いだしたカルルが、こっちへ向かってくる。
「ジャンプ!」
 僕は高々と飛び上がった。
 それを見たカルルも、ジャンプして追いかけてくる。
 
「バカめ! ジャンプ力も、こっちが上なんだよ」

 うん。そうだと思った。

 だから、やったんだよ。

 僕は背中からショットガンを抜いた。
「そんな物は、効かないと言っているだろう」
「知ってる。これはブレーキさ」
「なに?」
 空中でカルルと交差する寸前、僕は上に向かってショットガンを撃った。
 ショットガンの反動で僕の上昇速度は落ちて、カルルは頭上を通り過ぎる。
 さらにショットガンを連射して、僕は地表に降りた。
 カルルは、まだ空中にいた。
 空中で軌道を変えるのに使えるような銃を、奴は持っていない。
 さらに、奴のスーツを見ていたが、ホバー機能らしきものが見当たらなかった。
 パワーとスピードが三倍だろうが、一度地面から足が離れてしまったら最後、奴は地表に降りるまで何もできないのだ。
 カルルは、空中で手足をむなしくバタバタさせていた。
 僕を追いかけてジャンプしたのが奴のミス。
 カルルの着地予想地点に先回り。落ちてきたカルルを……
「ブースト」
 カルルの足が地面に着くより先に、ブーストパンチで吹っ飛ばした。 
 再び、壁にめり込む。

 残時間五十五秒。

 そろそろかな?

「もう、許さんぞ」
 カルルは壁から這いだしてきた。

 しぶといな……

 次の瞬間、カルルは爆炎に包まれた。
『私の事を忘れていませんか? アホのカルル・エステスさん』
 Pちゃんの声。
 いつの間にか、僕とカルルの間に、菊花二号がホバリングしている。
「うるさい! アホは余計だ!」
『アホをアホと言って何が悪いのです。ご主人様のロボットスーツに対抗するためとは言え、そんな欠陥品を身に纏うなんて。アホでなければ、自殺願望ですか?』
「欠陥品?」
 カルルは、怪訝そうに言う。
『それは、日本のロボットスーツに対抗するために、S社が開発したロボットスーツですね。実戦で欠陥が露呈して、パイロットが死にかけたという曰く付きです』
「実戦? なにを言ってる? これは実戦配備が間に合わなかった……」
『間に合っていますよ。日本側の記録では。ただ、あまりにも恥ずかしい負け方をしたので、かの国では実戦投入には間に合わなかったと発表していたのです。そのせいで、いつの間にか一般には、幻の超兵器のような印象が出来上がっていたようですね。あなたも、その印象に騙されたのでしょう』
「おい……このロボットスーツ……本当は、戦場でどうなった?」
『戦闘中、最初のうちは優勢だったのですが、突然パイロットが……』
「うぎああああ!」
 
 カルルは、突然悲鳴を上げて苦しみだした。

『悲鳴を上げて苦しみだし、戦闘不能になったのです。というか、すでになっていますね』
 
 だから、使わない方が身のためだと言ったのに……

 人の話聞かないから……

「カイトさん」「これを」
 分身たちミールズが外部電源を持ってきてくれたのは、残時間が五秒を切った時だった。
「ありがとう。ミール」
「それにしてもカイトさん。いったい、カルルはどうしたのです?」
「どうこうもないよ。ロボットスーツのパワーとスピードは、人間の身体が耐えられる、ぎりぎりの数値に設定してあるんだ」

 そのぎりぎりの数値を割り出すために、僕のオリジナルは実験材料にされたわけだが……

「そんな事も知らないでスペックを上げてしまったら、装着している人間の身体がもつわけがない。今頃、カルルは関節の一つや二つ外れて……」
 僕の説明が終わる前に、分身たちミールズは消えてしまった。

 時間切れか。

 ロボットスーツも電池切れ。

 カルルにとどめを刺すのは、充電後だな。

 だが、外部電源を装着したとき、警報が鳴った。
『クエンチ警報、内部電源はクエンチの危険があるため、充電を停止します』
 アチャー! 今回はかなりダメージ食らったからな。
 バイザーには、エラーマークが嫌と言うほど出ている。
 
 エシャーのお父さんが降りてきたのは、そんな時だった。

 結局、のた打ち回るカルルにトドメを指すことなく、僕は城から離脱した。
 別に情けをかけたわけじゃない。
 もう余力がなかっただけだ。
 なのに、なぜか僕はホッとしていた。
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