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第八章
以下の周波数で連絡を請う
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偶然を装ったって? それじゃあ、やはりこの子はスパイなのか?
「ミーチャ。なぜそんな事をしたの?」
ミールは、さらに質問を続けた。
「日本人の捕虜に、なりたかったからです」
「スパイをするため?」
「いいえ違います。生きるためです」
「生きるため? どうして捕虜になる事が、生きる事になるの?」
「このまま軍にいたら、僕はいつか殺されてしまいます。でも、砂漠の中を闇雲に逃げても助かりません。日本人なら、捕虜に酷いことはしないと、ナーモ族の商人から聞いていたので」
「それなら、偶然を装わなくて、ドローンの前に堂々と出て行けばよかったのではないの?」
「ドローンが、日本人のものか分からなかったからです。もし、これが帝国軍のもので、しかもヤナさんの操縦するドローンだったら、僕は酷い目に遭います。ナルセさんだったら、優しいから黙っていてくれると思いますが、それでも連れ戻されたでしょう」
偶然を装ったというのは、そのためだったのか。
「ミール。どうやら、スパイという事はなさそうだね」
「そのようです。あたしの勘繰り過ぎのようでした」
「しかし、問題が残っているぞ。この子はドローンを見つけてやって来たわけだが、どこで見つけたんだ? 他の帝国兵にも見られていないか?」
「そうですね」
ミールはミーチャに向き直った。
「ミーチャ。ドローンをどこで見つけたの?」
「カルカ街道を歩いている途中で、前からドローンが来るのが見えて慌てて隠れたのです」
どうやら、カルカの町から続いていた道はカルカ街道というらしい。
「どうして、一人でカルカ街道を歩いていたの?」
「軍から脱走するためです」
「だけど、砂漠のど真ん中で脱走してもダメなのは分かっていたでしょ」
「はい。でも、もうすぐカルカ街道から、日本人がやってくるはずなので、ここを歩いていけば途中で出会えると思いました。その時に投降しようと思っていたのです」
「なぜ、日本人がやってくると知っていたの?」
「アレンスキー大尉とナルセさんが、話していたのを聞いていたのです。もうすぐ、キタムラという日本人がカルカ街道からやってくると」
やはり、知られていたか……
「帝国軍は、それを知っていてどんな対策をたてたの?」
「街道に穴を掘って、爆薬を埋めていました」
そのぐらいはやるだろうかな。
「爆薬は、どの辺りに埋めたか分かる?」
「はい。僕がドローンと出会った辺りから、五百メートル行ったところです。僕も作業を手伝いました」
危ないところだった。
さらに、質問を進めると、ミーチャは日本人が……つまり僕たちがカルカ街道から、ドームへ向かってくるという話を聞いてから、ずっと脱走の機会を伺っていたのだという。
さっき、通信機を探すために、部隊から離れたところで一人切りになったのを機会に脱走を謀ったのだ。
街道を走っている途中で、向こうからやってくるドローンの姿を見かけた。
すぐに投降しようとしたが、もしあれが帝国軍のドローンだとしたら、連れ戻されて酷い目に遭う。
だから、偶然そこで出会ったふりをして、仕方なく降伏したように見せていたのだ。
「あたし達が日本側だと分かったのに、なぜそのことを言わなかったの?」
「言いにくかったので」
まあ、その気持ちは分からんでもないな。
「とにかく、帝国軍にはドローンは見つかっていないようだね。今のところ……」
「そのようです」
ちょうどその時、Pちゃんがテントに入ってきた。
「ご主人様、蛇型ドローンの配置すべて終わりました」
「分かった」
僕は飛行船タイプのコントローラーを手に取った。
地上スレスレを飛んでいたドローンを上昇させる。
モニターに表示したドローンからの映像も、どんどん地上から遠ざかっていく。
眼下に、倒壊したビル群が見えてきた。
その中に一棟だけ倒壊していないビルがある。
爆心地側の壁面はボロボロだが、ミーチャの話ではこの倒壊していないビルの中に帝国軍は潜んでいるそうだ。
赤外線を見ると、ビル周辺にかなりの赤外線源がいるのが確認できた。
ミーチャの話ではここには、一個中隊ほどいるらしい。
ほどなくして、瓦礫の陰から帝国兵が出てきた。
拡大してみると、エラ・アレンスキーはいないようだ。
帝国兵がこっちを指さしている。
そろそろいいかな。
コマンドを打ち込んでエンターキーを叩き込んだ。
画像が少し揺れる。
ドローンから吊り下げていた垂れ幕が今落ちたのだ。
垂れ幕には、こう書いてある。
『以下の周波数で連絡を請う』と……
「ミーチャ。なぜそんな事をしたの?」
ミールは、さらに質問を続けた。
「日本人の捕虜に、なりたかったからです」
「スパイをするため?」
「いいえ違います。生きるためです」
「生きるため? どうして捕虜になる事が、生きる事になるの?」
「このまま軍にいたら、僕はいつか殺されてしまいます。でも、砂漠の中を闇雲に逃げても助かりません。日本人なら、捕虜に酷いことはしないと、ナーモ族の商人から聞いていたので」
「それなら、偶然を装わなくて、ドローンの前に堂々と出て行けばよかったのではないの?」
「ドローンが、日本人のものか分からなかったからです。もし、これが帝国軍のもので、しかもヤナさんの操縦するドローンだったら、僕は酷い目に遭います。ナルセさんだったら、優しいから黙っていてくれると思いますが、それでも連れ戻されたでしょう」
偶然を装ったというのは、そのためだったのか。
「ミール。どうやら、スパイという事はなさそうだね」
「そのようです。あたしの勘繰り過ぎのようでした」
「しかし、問題が残っているぞ。この子はドローンを見つけてやって来たわけだが、どこで見つけたんだ? 他の帝国兵にも見られていないか?」
「そうですね」
ミールはミーチャに向き直った。
「ミーチャ。ドローンをどこで見つけたの?」
「カルカ街道を歩いている途中で、前からドローンが来るのが見えて慌てて隠れたのです」
どうやら、カルカの町から続いていた道はカルカ街道というらしい。
「どうして、一人でカルカ街道を歩いていたの?」
「軍から脱走するためです」
「だけど、砂漠のど真ん中で脱走してもダメなのは分かっていたでしょ」
「はい。でも、もうすぐカルカ街道から、日本人がやってくるはずなので、ここを歩いていけば途中で出会えると思いました。その時に投降しようと思っていたのです」
「なぜ、日本人がやってくると知っていたの?」
「アレンスキー大尉とナルセさんが、話していたのを聞いていたのです。もうすぐ、キタムラという日本人がカルカ街道からやってくると」
やはり、知られていたか……
「帝国軍は、それを知っていてどんな対策をたてたの?」
「街道に穴を掘って、爆薬を埋めていました」
そのぐらいはやるだろうかな。
「爆薬は、どの辺りに埋めたか分かる?」
「はい。僕がドローンと出会った辺りから、五百メートル行ったところです。僕も作業を手伝いました」
危ないところだった。
さらに、質問を進めると、ミーチャは日本人が……つまり僕たちがカルカ街道から、ドームへ向かってくるという話を聞いてから、ずっと脱走の機会を伺っていたのだという。
さっき、通信機を探すために、部隊から離れたところで一人切りになったのを機会に脱走を謀ったのだ。
街道を走っている途中で、向こうからやってくるドローンの姿を見かけた。
すぐに投降しようとしたが、もしあれが帝国軍のドローンだとしたら、連れ戻されて酷い目に遭う。
だから、偶然そこで出会ったふりをして、仕方なく降伏したように見せていたのだ。
「あたし達が日本側だと分かったのに、なぜそのことを言わなかったの?」
「言いにくかったので」
まあ、その気持ちは分からんでもないな。
「とにかく、帝国軍にはドローンは見つかっていないようだね。今のところ……」
「そのようです」
ちょうどその時、Pちゃんがテントに入ってきた。
「ご主人様、蛇型ドローンの配置すべて終わりました」
「分かった」
僕は飛行船タイプのコントローラーを手に取った。
地上スレスレを飛んでいたドローンを上昇させる。
モニターに表示したドローンからの映像も、どんどん地上から遠ざかっていく。
眼下に、倒壊したビル群が見えてきた。
その中に一棟だけ倒壊していないビルがある。
爆心地側の壁面はボロボロだが、ミーチャの話ではこの倒壊していないビルの中に帝国軍は潜んでいるそうだ。
赤外線を見ると、ビル周辺にかなりの赤外線源がいるのが確認できた。
ミーチャの話ではここには、一個中隊ほどいるらしい。
ほどなくして、瓦礫の陰から帝国兵が出てきた。
拡大してみると、エラ・アレンスキーはいないようだ。
帝国兵がこっちを指さしている。
そろそろいいかな。
コマンドを打ち込んでエンターキーを叩き込んだ。
画像が少し揺れる。
ドローンから吊り下げていた垂れ幕が今落ちたのだ。
垂れ幕には、こう書いてある。
『以下の周波数で連絡を請う』と……
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