Dear my...

E.L.L

文字の大きさ
上 下
56 / 68

55章

しおりを挟む
結子ちゃんが目を覚まさないまま1週間が過ぎた
英司には仕事を休んでいいと言ったが、きっと何かをしていないと落ち着かないのだろう
皆勤している

そういえば、春子さんが一時期結子ちゃんのオンラインショップの更新がSNSだけで活動していた時より早いって言ってたな
もしかして結子ちゃんも…

何かに打ち込まなければならないほど追い詰められていたのか

俺にはいつも余裕が無い

好きなように生きてきた

好きなことをしてきた

なのにいざという時どうしていいか分からない
一生分好きになった女のことも傷つけた

俺はぼんやり考えながら結子ちゃんのお見舞いに来ていた
病室の前に英司が座っていた

「どうした?」

「あ…照史さん…」

英司がぺこりと頭を下げる

「あの…」

英司が瞬きして少し黙る
頭の中で整理しているのだろう

「結子さんが…前に、居なくなる怖さを…同じ、思いをさせたくないから…忘れて欲しかったって言ってたんです…」

俺は口を挟まずに耳をすませる
他の誰も結子ちゃんのようには読み取れないから、一言も漏らさないように聞く

「…俺…それより一緒にいれるほうが、大事って…簡単に…思ってて…本当の意味ではその怖さ、分かってなかったんだなって…今思いました…結子さんは…俺が事故に遭う前から…それを分かっていたんですよね…」

英司が頭を抱える

「こうやって、結子さんが目を覚まさなくて…このまま…会えなくなったらどうしようって…思いました…
そういう、俺のこと分かって…俺から離れようとしてたんだと思ったら…なんか…」

それから英司はしばらく黙った
こいつ変なこと考えていないだろうな
俺の勘はこういう分野にかけてはポンコツだが、今回ばかりはむしろ外れていてくれ

「…英司…」

俺が声をかけようとした時英司がポケットから指輪のケースを取り出した

「昨日…気づいたんですけど…」

しおりを挟む

処理中です...