転生している場合じゃねぇ!

E.L.L

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「えうー」

「はいはい、何ですか?
お腹がすきましたか?」

エルザは俺が呼ぶ度にミルクを用意してくるが俺はそんなに食いしん坊では無い
それをアピールするためにゲップしといた

「あら
じゃあオムツでしょうか?」

それもさっき替えたばかりだろうが
ズボンを下ろそうとしてくるのでベチッと叩いて拒否する
決して俺は暴力に訴える男では無いのだが、エルザに関していえばいちいち力が強いのである

その時ドアがノックされた
エルザはスイッチが切り替わったように雰囲気が張りつめる

「〝お団子食べたい〟」

あ、今日もう約束の日か
あれ
でも今日はいつもと声が違う

「今開けるわ」

隙間からスルリと入ってきた子供は仮面をつけていなかった
漆黒と言う表現がピッタリなくらいの髪と瞳で、いつもの仮面の子供よりも骨格がしっかりしていた
恐らく年齢はあの子供と変わらなさそうだけど
所作も仮面の子供よりちょっと凛々しい感じがする
あの子供はどちらかと言うとしなやかな猫のようだったな
この国の子供はみんなスパイのように動けるのだろうか

「あら
今日はあなただったのね」

「担当は僕なので
怪我をしていたからその間だけ代わってもらっていたんです」

「怪我?」

エルザが駆け寄る
The母性を発揮している

「もう治りましたから…」

黒髪の少年は困ったようにエルザのチェックを遮る

「もしかしてあの時…」

「僕の不注意ですから」

「だけど、馬車をここまで走らせるために…」

「襲撃から逃げてきたのですから想定内ですよ
レオ様もエルザも無事で何よりです」

白い歯が輝く
いけすかねぇ野郎だ
ナツには絶対に合わせたくない
なんだ爽やかを具現化したみたいな存在め
いや、決して負け惜しみではない
顔面偏差値がちょっと高くて、爽やかでチートな香りがしているからいけ好かないのではない
大体言葉遣いからして大人顔負けである
爽やか黒髪少年はおもむろにこちらを向いた

「ご挨拶が遅れました、レオ様
ジャイルズです
ジルとお呼びください」

「…」

俺たちの関係性を誰か教えて
俺そんな身分高いの?

「あら、びっくりしてるのね
人見知りかしら」

あなたと仮面の子供以外では初めて見たに等しい人類ですからね

「…!」

俺はヨチヨチと歩いてジルに近寄ると左腕をペチペチと叩いた
思った通りだ
これは生身の腕ではない

「レオ様!
いけません」

「いいのです
珍しいのでしょう」

ジルの左腕は義手だった
そういえばさっき馬車の時が何とかって言ってたな
もしかして俺の事助けた時にこの腕を…?
俺たちをあそこから出すために?
唐突に申し訳なくなった

「いう…」

ジルと名乗った少年は目を見開いてからニッコリと笑った

「はい、レオ様」

腕が痛まなければいいのに

「…レオ様?」

俺がじっと腕を眺めているので、ジルは訝しく思ったに違いない

「レオ様は賢いですから、痛いかどうか気にしているのかもしれません」

エルザ、さすがは育ての親

「…そうなのですか
レオ様、これはもう痛くありません
ずっと前に無くしていたものですから」

ずっと前ってお前、まだ4歳とか5歳だろ
そのずっと前って何なんだよ

「さて、今は時間がありません
行きましょう」

「そうね」

エルザは軽く相槌を打って俺を抱き上げた
その時窓の外に何か見えた
光っている
何だか反射的に首筋がゾワッとしたので俺は暴れてエルザの腕から落ちた
エルザの凄まじい反射神経ゆえ床に着く前に抱きとめられたが
それと同時に俺の後ろの花瓶と窓が割れた
狙撃だ
エルザは俺とジルを抱えると家具の後ろに隠れた

「どういうこと?
作戦がバレていたの?」

「そんなはず…」

「とにかくここを出なければ」

「しかし、遠くからの射撃ですから囲まれている可能性があります」

「ジル、レオ様を連れて逃げなさい」

「ダメです」

「言うことを聞いて!」

「エルザでないとレオ様を抱えて遠くまでは走れません
僕が残ります」

「ダメよ」

「僕はただの傭兵
あなたがたを逃がしたらもう無関係の人間です」

おいおい、何言ってんだ君たちは
どっちが犠牲になるとかそういう話か?
残念ながらそういうのはナツが好きじゃないんだ
俺はナツが悲しむ選択はしない

「えう、いう」

2人の顔をベチッと叩いてやる
俺だって3日間無駄にしていたわけじゃないんだぜ
赤ん坊というのは目線が低いんだ
つまり大人に見えないものが見える
あまりに鼻が曲がりそうだったのであまり近くには行かなかったが背に腹はかえられぬ
俺は花瓶の置いてあった壁とは直角になっている壁の下を指さした

「え?」

エルザは2、3度瞬きしたあと

「そう!
そうよ!
下水道があったわ
ジル、行くわよ」

「え?
あ、はい」

「レオ様、なんて賢いの」

「末恐ろしいですね」

お前には言われたくないよ、黒髪爽やか君
まぁ悪い気はしないがね

しかし俺は入ってすぐ後悔した
戸が閉まっていても近寄りたくない匂いなのだ
中に入ればもちろん―
俺は気が遠のいていった
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