転生している場合じゃねぇ!

E.L.L

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「な、ナツ…?」

「ナツ?」

俺は他の全員を間違えても彼女だけは間違えない
俺の呼び掛けにキョトンとする彼女は紛れもなくナツだ
格好や髪型はこの異世界のものだということを除いて、一つだけ違うものがあるとすれば彼女の顔には憂いがない
兄を喪った後の彼女しか知らない(たまらなく悔しい)が、いつもどこか影を潜めた瞳をしていた
だから俺は1秒でも長くナツに笑って欲しくてバカをやった事もあった
今となっては黒歴史だが、数回でも笑ってくれたのでそれは供養されたことにする

とにかく、いないはずの彼女を目の前にして俺は咄嗟に声が出なかった
だが、心の中で固く誓った
あの女神(仮)、許さねぇ

「僕、大丈夫?」

「…」

「あ、そっか…まだ喋れないかなぁ」

多分、俺の最新の記憶のナツよりは1、2歳幼いだろう彼女は俺の前にしゃがんだまま考え込む
だが、ナツの前ではかっこいい男でなければならない
そう、俺は2枚目の男だ

「しゃ、喋れる」

「偉いね」

たどたどしく答えた俺にナツは微笑む
ああ、天使がここにいます

「ママは?
はぐれちゃった?」

「いや、ビ…、ママ、は、待っていない
知り合い…と思うけど…の女性と話し合った結果、これが一番いい選択肢だった」

ナツが目をパチクリさせる
可愛い
だが、一瞬の後に何かを閃いたように目が輝いた

「あなた、もしかして成長速度が遅いのね」

普通に言葉通りに受け取るとかなり失礼だと思うよ、ナツ
まぁこの世界においてはどうだか知らないが

「本当は何歳なの?
見た目は2歳くらいだけど」

数ヶ月前まで乳飲み子だったんだ
むしろ成長速度はドン引きするくらい早いんだよ

「えっと…」

そして俺は正確な自分の年齢を知らない

「あ、ごめん…
こういうのって代償とか関わってくるから気軽に聞いちゃいけないよね…」

シュンとしているところもとても可愛い

「いや、…大丈夫」

ただ、答えられないだけなんだ
俺も知らないから
年齢も、代償も
女神(仮)は俺の頭がうんぬんかんぬんと言い張ったが、断じて認めない

「あたしはユーリ」

え、ナツじゃないの?
異世界だから偽名使ってるとか?
そもそも俺のことしらないとかある?
あ、こんなにちっこいからかな
まさか自分の彼氏が見た目2歳児になってるなんて思わないだろうし
コ〇ン君だって見た目6歳だし

「あの、俺たちどこかで会ったことある?」

「何それ、ナンパ?」

「断じて違う」

「本当の年齢あたしより上だとか?
あ、あたし15歳
悪いけど、あなたはちょっと…」

「だからナンパじゃないって」

とにかく、目の前の少女は俺の知っているナツではない、ということか
いや、絶対ありえない

「それで?
名前は?」

名乗ったのだから名乗れという圧がかかる
俺の全細胞がユーリはナツと告げているのだが、俺の事を何故か知らないらしいし、俺は一応追われている身だ
名前を偽った方がいいのだろうか

「えっと…」

「レオ様!!」

その時俺とユーリの間に残像が残理想な勢いでエルザが飛び込んできた
あの袋も担いでいるのに
どうなってんだほんと

「あ、おかえり」

「おかえり、ではありませんよ
見知らぬ人に…ユーリ?」

「エルザ!!」

袋を下ろしたエルザは飛びついてきたユーリをハグする
知り合いらしい
とりあえずエルザ
羨ましいからそこを代われ

「久しぶりね
元気だった?」

「ええ!
ユーリも元気そうで」

「当たり前じゃない!」

「あー…知り合い?」

控えめに割り込んでみた
年齢、合わなくね?

「私たちは同じ地区で育ったのです
レオ様、お待たせしてしまい申し訳ありませんでした
それにしても話しかけていたのがユーリで良かったです」

同じ地区で育った?
ってことは本当にナツとは別人?

「えー何それ―あ!もしかして!」

お、俺と気づいたか?

「あなた、王子様?!」

そうだけど
そうじゃない

「ユーリ、声が大きいわ」

バッと両手で口を塞ぐ
可愛いな

「ごめん!」

「気をつけてよ」

親友のように仲良く話す彼女は気さくだ

「王子様、よろしくね」

「レオ…ナルド」

「レオナルド様ね」

「…レオって、呼んで、いい」

レオナルドだとバレるかもしれないだろ
その声でレオって呼んで欲しいからでは断じてない

「レオ様ね」

「…」

様は要らないよ

「ユーリ、さん、は」

「あたしのことはユーリでいいよ」

「…」

「だって王子様だものね」

いたずらっぽい微笑みを浮かべている

「からかうな」

「えへへ
ごめんなさい」

ユーリの笑顔が俺の網膜に焼き付けられる
俺の供養されし黒歴史から生まれたとても少ないナツの笑顔と重なる
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