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第一部
ほかのだれにも渡さない(1)
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仕事が一段落したエレノーラは研究室をでて中庭のベンチに座り、一息ついた。雲が浮かぶ青い空を眺めながら、ぽつりとつぶやく。
「レイモンド成分が足りない」
「ちょっと、意味がわかりかねますね」
エレノーラのつぶやきに近くに控えていた騎士が、なにを言っているんだこいつはといったような目で彼女を見る。今日の監視兼護衛の騎士はニコラスという、レイモンドの先輩にあたる騎士だ。レイモンドの次に護衛担当になることが多い。ニコラスは享楽の魔女の討伐にも一緒にいたそうだが、あの時、エレノーラはレイモンドしか見ていなかったので、彼のことは記憶になかった。
「レイモンドがいなくてさみしい」
「そうですか」
エレノーラが言い直すと、ニコラスは適当な相槌を打つ。この数週間、レイモンドは魔物の討伐のため不在で、代わりにニコラスがエレノーラの護衛を担当していた。今回の討伐は十日ほどで終わる予定だったが、想定外の事態があったため長引いているそうだ。笑顔でレイモンドを送り出したが、彼に会えない日々が続いて思っていたよりもさみしさを感じていた。
(レイモンドに触りたい……いや、もう、食べたい)
エレノーラの妄想はますます激しくなっていく。ベッドに引きずり込んで、ひん剥いて、全身なめまわして、熱く滾ったレイモンド自身を咥えこんで喘がせたい。もしくは、ベッドに引きずり込まれて、待てないといったような手荒な手腕でがつがつ攻められて喘いでみたい。
「困ったわ……どっちがいいかしら」
「なんのことかわかりかねますが、どうせ、ろくなことを考えていないでしょう」
「大切なことですー」
エレノーラの願望はどちらにしても、レイモンドがその気にならないとできないことだ。エレノーラはレイモンドと恋仲になってから、少しずつ欲深くなっていた。
(性欲はここまで強くなかったはずなんだけれど……実際、助け出されてからの二年間はなにもなくてもまったく支障がなかったし……)
しかしいまは、レイモンドを見ているだけでむらむらしてしまう。むりやり引き出されているものではなく、自分の中から湧き上がってくる衝動だ。
(愛から引き起こされる情欲って、このことなのかしら)
エレノーラがこんなことを想うのは、レイモンドだけだ。
「はあ、レイモンド……早く会いたいわ」
ニコラスからの情報では、討伐隊は無事に討伐を終えて帰路につき、今日中に戻ってくる予定だ。エレノーラはそれを聞いて朝から念入りに体を磨きあげ、いつでもことに及べるように準備していた。
(レイモンドが足りないわ。抱きしめ合うだけでもいいから……)
レイモンドの熱を感じたいと、エレノーラはため息をつく。ニコラスはただじっと、なにも言わずに己の職務をまっとうしていた。
(ニコラスさんは、私とレイモンドの結は反対だったのよね)
ニコラスはエレノーラを嫌っている訳ではない。むしろ同情的で、良くしている方だ。しかし、そのこととレイモンドとのことは別だった。
ニコラスは同じ剣の師を仰ぎ、騎士見習いだった頃から世話を焼いていたレイモンドのことを弟のようにかわいがっていた。そんな存在が苦労するとわかっている道を進むことを、ニコラスは望ましくは思わなかったのだろう。
(自分の立場はわかっているし、反対されても仕方がない)
ニコラスは一度反対してもレイモンドが譲る気はないことを知り、最終的には応援してくれたのだから、エレノーラにとってはありがたいことだった。
(レイモンドがいない時は、こうして護衛騎士をしてくれるんだし)
ニコラスは多くが嫌がるエレノーラの護衛を、レイモンドが不在の際は進んで担当している。孤立無援とまでは言わないものの、エレノーラには味方が少ない。いまでも、結婚を許可されたことが驚きなくらいだ。それほどに、レイモンドがこの国に貢献した業績が大きいのだろう。
「……魔女殿。レイモンドがそろそろ、戻ってくるころですよ」
エレノーラがニコラスの言葉に、跳ね上がるように勢いよくベンチから立ち上がると、彼はくすりと笑った。
「魔女殿は本当に、レイモンドのことが好きですよね」
「えっ」
ニコラスの言葉にエレノーラは驚いた。レイモンドを応援すると決めたとはいえ、ニコラスはエレノーラに対して思うところがあるだろうに。
「……はい」
エレノーラはどう答えるべきかと少し悩んだが、すなおに短く答える。その答えに満足したのかはわからないが、それ以上はなにも言わず、ニコラスは歩き出したエレノーラに従った。
エレノーラはレイモンドを出迎えたいが、討伐隊にはレイモンド以外にも任務にあたった騎士がいる。中にはエレノーラを快く思っていない者もいるかもしれないと、そこに顔を出す訳にはいかなかった。そのため、いつもの外での任務を終えたレイモンドと待ち合わせている、中庭の一角へと向かう。
そこは以前、エレノーラが嫌がらせにバケツの水を引っ掛けられそうになった場所だ。その時はレイモンドが身を挺したことで、ことなきを得た。
(あの時のレイモンドは格好よかったなあ)
当時のことを思い出して一人にやける。そんなエレノーラを一瞥し、ニコラスはあきれたようにため息をついた。
(レイモンド……早く会いたいわ)
二週間ぶりに会うレイモンドに早く会いたくて仕方がなかった。まずは労って、それから二人の時間になったらと、エレノーラが妄想を脳内で広げながら歩いていると、ばったりとある人物と鉢合わせになる。
「あっ」
相手はエレノーラの顔を見るなり、かわいらしい顔をみるみる間に般若のように歪めていく。
(すっごく、嫌われちゃっているわね)
エレノーラが苦笑いすると、相手はさらに機嫌を損ねてしまったようだ。
「エレノーラ……」
憎々しげに名をつぶやいたアグネスは、目尻をきつく釣り上げてエレノーラをにらみつけた。
アグネスはエレノーラと同じように、レイモンドに心を寄せていた女性だ。レイモンドと結ばれるのは自分だと宣戦布告したこともある。言うなれば二人は恋敵同士、アグネスがレイモンドと結ばれたエレノーラを憎らしく思ってしまうのは仕方がないだろう。
(私だって、自分はふさわしくないってわかっていても……レイモンドがだれかと結ばれたら、その人のことを憎らしく思っちゃうかもしれないもの)
エレノーラはアグネスが自分に嫌がらせをしてしまう気持ちがわからなくはなかった。アグネスがレイモンドと結ばれるのは自分だと言った時、多少なりとも彼女を恨めしく思った気持ちもあったのだから。
「魔女殿になにか用があるのですか、アグネス。あなたは、魔女殿には近づかぬよう言われているでしょう」
ニコラスがエレノーラの前に出て二人の間を遮る。これはアグネスが嫌がらせの一環で、エレノーラの護衛魔道士としての任務中にそばを離れたことがあり、その間にエレノーラがメイドの一人に嫌がらせで水を掛けられそうになるといった事件があったからだ。その処罰として、アグネスはエレノーラの護衛から永久的に外され、減給処分にもなり、接近禁止となった。エレノーラとしてはそこまでしなくてもとは思ったものの、アグネスは自分の責務を放棄してしまったのだから処罰を受けるのは致し方ない。
ニコラスの言葉に眉根を寄せたアグネスはエレノーラをさらににらみつける。エレノーラは困ったように眉尻を下げ、口を出さない方がいいだろうと黙るしかなかった。
「あるわけないじゃない、そんな女。こんなところを歩いているそっちが悪いのよ!」
ふんっとそっぽを向いたアグネスの言葉も、確かにそうだとエレノーラは納得した。
(私の立場からして、不用意に出歩くのは良くなかったわね……次からは大人しく待っていようかしら)
エレノーラは反省しつつ、自分が口を出せば火に油を注いでしまうだろうと、ことの成り行きをただ見守るしかなかった。
「アグネス、行ってください。あなたが立ち去ったのを確認してから、私たちは移動します」
「ふん!」
ニコラスに指示されても、アグネスはその場を動こうとしなかった。その上、一歩だけエレノーラに近づく。
「まだなにかあるのですか、アグネス」
ニコラスが怪訝そうにアグネスに目を向けるが、彼女はその存在を無視してひたすらエレノーラをにらみつけていた。アグネスはさらに一歩近づき、ニコラスが少し警戒する。しかし、アグネスはそれ以上近づく様子はなく、ただエレノーラをにらみつけるだけだ。
「……あの、アグネスさん?」
「ばーーーか!」
エレノーラがどうしたら良いのかわからず声をかけた途端にアグネスから罵声がとんで、思わず目を丸くした。
「レイモンド成分が足りない」
「ちょっと、意味がわかりかねますね」
エレノーラのつぶやきに近くに控えていた騎士が、なにを言っているんだこいつはといったような目で彼女を見る。今日の監視兼護衛の騎士はニコラスという、レイモンドの先輩にあたる騎士だ。レイモンドの次に護衛担当になることが多い。ニコラスは享楽の魔女の討伐にも一緒にいたそうだが、あの時、エレノーラはレイモンドしか見ていなかったので、彼のことは記憶になかった。
「レイモンドがいなくてさみしい」
「そうですか」
エレノーラが言い直すと、ニコラスは適当な相槌を打つ。この数週間、レイモンドは魔物の討伐のため不在で、代わりにニコラスがエレノーラの護衛を担当していた。今回の討伐は十日ほどで終わる予定だったが、想定外の事態があったため長引いているそうだ。笑顔でレイモンドを送り出したが、彼に会えない日々が続いて思っていたよりもさみしさを感じていた。
(レイモンドに触りたい……いや、もう、食べたい)
エレノーラの妄想はますます激しくなっていく。ベッドに引きずり込んで、ひん剥いて、全身なめまわして、熱く滾ったレイモンド自身を咥えこんで喘がせたい。もしくは、ベッドに引きずり込まれて、待てないといったような手荒な手腕でがつがつ攻められて喘いでみたい。
「困ったわ……どっちがいいかしら」
「なんのことかわかりかねますが、どうせ、ろくなことを考えていないでしょう」
「大切なことですー」
エレノーラの願望はどちらにしても、レイモンドがその気にならないとできないことだ。エレノーラはレイモンドと恋仲になってから、少しずつ欲深くなっていた。
(性欲はここまで強くなかったはずなんだけれど……実際、助け出されてからの二年間はなにもなくてもまったく支障がなかったし……)
しかしいまは、レイモンドを見ているだけでむらむらしてしまう。むりやり引き出されているものではなく、自分の中から湧き上がってくる衝動だ。
(愛から引き起こされる情欲って、このことなのかしら)
エレノーラがこんなことを想うのは、レイモンドだけだ。
「はあ、レイモンド……早く会いたいわ」
ニコラスからの情報では、討伐隊は無事に討伐を終えて帰路につき、今日中に戻ってくる予定だ。エレノーラはそれを聞いて朝から念入りに体を磨きあげ、いつでもことに及べるように準備していた。
(レイモンドが足りないわ。抱きしめ合うだけでもいいから……)
レイモンドの熱を感じたいと、エレノーラはため息をつく。ニコラスはただじっと、なにも言わずに己の職務をまっとうしていた。
(ニコラスさんは、私とレイモンドの結は反対だったのよね)
ニコラスはエレノーラを嫌っている訳ではない。むしろ同情的で、良くしている方だ。しかし、そのこととレイモンドとのことは別だった。
ニコラスは同じ剣の師を仰ぎ、騎士見習いだった頃から世話を焼いていたレイモンドのことを弟のようにかわいがっていた。そんな存在が苦労するとわかっている道を進むことを、ニコラスは望ましくは思わなかったのだろう。
(自分の立場はわかっているし、反対されても仕方がない)
ニコラスは一度反対してもレイモンドが譲る気はないことを知り、最終的には応援してくれたのだから、エレノーラにとってはありがたいことだった。
(レイモンドがいない時は、こうして護衛騎士をしてくれるんだし)
ニコラスは多くが嫌がるエレノーラの護衛を、レイモンドが不在の際は進んで担当している。孤立無援とまでは言わないものの、エレノーラには味方が少ない。いまでも、結婚を許可されたことが驚きなくらいだ。それほどに、レイモンドがこの国に貢献した業績が大きいのだろう。
「……魔女殿。レイモンドがそろそろ、戻ってくるころですよ」
エレノーラがニコラスの言葉に、跳ね上がるように勢いよくベンチから立ち上がると、彼はくすりと笑った。
「魔女殿は本当に、レイモンドのことが好きですよね」
「えっ」
ニコラスの言葉にエレノーラは驚いた。レイモンドを応援すると決めたとはいえ、ニコラスはエレノーラに対して思うところがあるだろうに。
「……はい」
エレノーラはどう答えるべきかと少し悩んだが、すなおに短く答える。その答えに満足したのかはわからないが、それ以上はなにも言わず、ニコラスは歩き出したエレノーラに従った。
エレノーラはレイモンドを出迎えたいが、討伐隊にはレイモンド以外にも任務にあたった騎士がいる。中にはエレノーラを快く思っていない者もいるかもしれないと、そこに顔を出す訳にはいかなかった。そのため、いつもの外での任務を終えたレイモンドと待ち合わせている、中庭の一角へと向かう。
そこは以前、エレノーラが嫌がらせにバケツの水を引っ掛けられそうになった場所だ。その時はレイモンドが身を挺したことで、ことなきを得た。
(あの時のレイモンドは格好よかったなあ)
当時のことを思い出して一人にやける。そんなエレノーラを一瞥し、ニコラスはあきれたようにため息をついた。
(レイモンド……早く会いたいわ)
二週間ぶりに会うレイモンドに早く会いたくて仕方がなかった。まずは労って、それから二人の時間になったらと、エレノーラが妄想を脳内で広げながら歩いていると、ばったりとある人物と鉢合わせになる。
「あっ」
相手はエレノーラの顔を見るなり、かわいらしい顔をみるみる間に般若のように歪めていく。
(すっごく、嫌われちゃっているわね)
エレノーラが苦笑いすると、相手はさらに機嫌を損ねてしまったようだ。
「エレノーラ……」
憎々しげに名をつぶやいたアグネスは、目尻をきつく釣り上げてエレノーラをにらみつけた。
アグネスはエレノーラと同じように、レイモンドに心を寄せていた女性だ。レイモンドと結ばれるのは自分だと宣戦布告したこともある。言うなれば二人は恋敵同士、アグネスがレイモンドと結ばれたエレノーラを憎らしく思ってしまうのは仕方がないだろう。
(私だって、自分はふさわしくないってわかっていても……レイモンドがだれかと結ばれたら、その人のことを憎らしく思っちゃうかもしれないもの)
エレノーラはアグネスが自分に嫌がらせをしてしまう気持ちがわからなくはなかった。アグネスがレイモンドと結ばれるのは自分だと言った時、多少なりとも彼女を恨めしく思った気持ちもあったのだから。
「魔女殿になにか用があるのですか、アグネス。あなたは、魔女殿には近づかぬよう言われているでしょう」
ニコラスがエレノーラの前に出て二人の間を遮る。これはアグネスが嫌がらせの一環で、エレノーラの護衛魔道士としての任務中にそばを離れたことがあり、その間にエレノーラがメイドの一人に嫌がらせで水を掛けられそうになるといった事件があったからだ。その処罰として、アグネスはエレノーラの護衛から永久的に外され、減給処分にもなり、接近禁止となった。エレノーラとしてはそこまでしなくてもとは思ったものの、アグネスは自分の責務を放棄してしまったのだから処罰を受けるのは致し方ない。
ニコラスの言葉に眉根を寄せたアグネスはエレノーラをさらににらみつける。エレノーラは困ったように眉尻を下げ、口を出さない方がいいだろうと黙るしかなかった。
「あるわけないじゃない、そんな女。こんなところを歩いているそっちが悪いのよ!」
ふんっとそっぽを向いたアグネスの言葉も、確かにそうだとエレノーラは納得した。
(私の立場からして、不用意に出歩くのは良くなかったわね……次からは大人しく待っていようかしら)
エレノーラは反省しつつ、自分が口を出せば火に油を注いでしまうだろうと、ことの成り行きをただ見守るしかなかった。
「アグネス、行ってください。あなたが立ち去ったのを確認してから、私たちは移動します」
「ふん!」
ニコラスに指示されても、アグネスはその場を動こうとしなかった。その上、一歩だけエレノーラに近づく。
「まだなにかあるのですか、アグネス」
ニコラスが怪訝そうにアグネスに目を向けるが、彼女はその存在を無視してひたすらエレノーラをにらみつけていた。アグネスはさらに一歩近づき、ニコラスが少し警戒する。しかし、アグネスはそれ以上近づく様子はなく、ただエレノーラをにらみつけるだけだ。
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