【完結】天才令嬢は時戻りを繰り返す~溺愛してくる幼馴染の年上伯爵に伝えたいこと~

イトカワジンカイ

文字の大きさ
12 / 46

・10.クロエの過去

しおりを挟む
幼いクロエの前に家庭教師が算数の問題が書かれた紙を置くと、尋ねてきた。

「24÷(3+5)×6は?」
「18です」
「では48÷4+6×2は?」
「24です」
「(18+12)÷(6-3)+5は?」
「15です」
「素晴らしい!」

出題された問題にクロエが即答すると、家庭教師が感嘆の声を上げた。
どうしてこんなにも驚かれるのかは分からない。
尋ねられたことに答えただけなのに。

4歳のクロエはそう思って不思議そうに首を傾げた。

「この子は天才です。私が教えることはもうありませんわ」

家庭教師の女性は、クロエの父であるジェレミー・ランディットにそう告げた。

ジェレミーが家庭教師からそう告げられるのは、今回が初めてではなかった。
これまでの教師はみな口を揃えてクロエを「天才だ」と言い、職を辞そうとするのだ。

今回は大学でも学んだことのある、学力の高い教師を選んだ。ところが、彼女からも半分匙を投げるようなことを言われてしまった。

そのことに、ジェレミーは戸惑いの表情を浮かべた。
そして、言葉を選びながら、まるで家庭教師を諭すように話を始めた。

「ですが、娘はまだ4歳ですし、他に学ぶことがあるかと」

「率直に申し上げて、読み書きや算数は初等教育をクリアしてしまっております。特に数学と魔法科学については中等部の基礎レベルには達しているかと。今後については、私のような一介の家庭教師ではなく、専門的な教師に師事して学んだほうがよろしいかと思いますわ」

「そう、ですか」
「では失礼いたしますわ」

ジェレミーが困惑しながら家庭教師の言葉を聞き、彼女が部屋を出て行く後ろ姿を見送った。

父が眉を下げて困っている表情を見たクロエは、自分のせいで父がこのような表情をしていることを察した。
ギュッと手を握って尋ねた。

「お父様、困ってる? 私のせい?」
「いや、クロエのせいじゃないよ」
「でも先生が帰っちゃった。私が嫌いだから帰っちゃったの?」
「そんなことない。クロエは頭がいいから、もっと他の勉強をした方がいいと仰ったんだよ」
「頭がいい?」
「あぁ、テストは100点満点だ。クロエの歳で満点を取ることなんて無理だからね」

クロエは父が言っている意味が理解できなかった。

父の言い方だと、普通の子供は100点が取れないらしいが、クロエにとってはみんなが何故間違えるのかが分からない。

キョトンとするクロエに目線を合わせたジェレミーは、彼女のキャラメル色の髪を撫でた。

「お前の才能はきっと神様からのギフトだな。なら、これからは父様がお前に色々教えてやろう」
「うん! 私、〝まほうかがく〟のお勉強がしたいの」
「そうかそうか。父様の得意分野だ。いっぱい教えてやるからな」
「うん!」

ようやく父が満面の笑みになってくれたことに、クロエはほっとして笑った。
その時ドアがノックされ、母エマが入ってきた。その表情はジェレミーと同様、困惑している様子だった。

「ジェレミー、家庭教師の先生の件だけど、新しい人を雇った方がいいかしら?」

家庭教師が辞めてしまうのは、これで4人目だった。

その理由はクロエの知能が異常に高く、教えることはないからだという。

クロエは行儀が良く、駄々をこねたり癇癪を起こしたりなどはせず、どちらかと言えば手のかからない子どもではあるが、両親から見て、クロエは普通の子供だ。

甘いお菓子が大好きで、ニンジンは嫌い。
本を読むのが大好きであるが、天気の良い日は日向ぼっこもするし、お花も動物も好きな普通の子供だ。

だが、その一方で、頭脳は天才と言えるのも事実である。
それについては、二人とも少々悩んでいた。

クロエをどうやって育てるべきか。家庭教師に相談しても先ほどの様に匙を投げられる。

今日もまた家庭教師が辞めてしまい、今後について相談しようとしたエマに対し、ジェレミーが何かを決心したように口を開いた。

「いや、その件なんだが、これからは僕がクロエに勉強を教えようと思うんだ。というか、彼女の好きなようにさせるのが一番じゃないかな?」

その提案を聞いたエマも、逡巡したがすぐに納得したように頷いた。

「そうねぇ……無理に家庭教師をつける必要はないわね。子供がやりたいことを応援するのが親だと、私も思うわ」
「それに、僕たちができるのは彼女を見守ることが一番だ。クロエは人とは違う。これから人と違うことで傷つくことも多いだろう。それを僕たちが守ってあげるのが親の役目だ」
「そうね」

エマは大きく頷いて、晴れやかな顔になった。

そして、自分が何か問題を起こして両親が困っているのではないかと不安に思っているクロエに向かってエマは微笑んだ。

「クロエ、心配しなくても大丈夫よ。そうだわ、お茶とスコーンを用意したの。行きましょう」
「うわぁうれしい! 私、スコーン大好き!」

クロエはそう言って母親と部屋を出た。

父ジェレミーは国家魔術研究所にて医療魔術研究員として働いており、クロエの知能が高いことについても、理解があった。

母エマは高い知能を持つクロエをどう育てればいいのか悩むこともあったが、楽天的な性格であり、今ではすっかりクロエを受け入れている。

そういう意味では、両親がクロエの才能を認め、庇護してくれるのは救いだった。

そんな両親に温かく見守られながらクロエは育てられ、成長していった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

【完結】姫将軍の政略結婚

ユリーカ
恋愛
 姫将軍ことハイランド王国第四王女エレノアの嫁ぎ先が決まった。そこは和平が成立したアドラール帝国、相手は黒太子フリードリヒ。  姫将軍として帝国と戦ったエレノアが和平の条件で嫁ぐ政略結婚であった。  人質同然で嫁いだつもりのエレノアだったが、帝国側にはある事情があって‥‥。  自国で不遇だった姫将軍が帝国で幸せになるお話です。  不遇な姫が優しい王子に溺愛されるシンデレラストーリーのはずが、なぜか姫が武装し皇太子がオレ様になりました。ごめんなさい。  スピンオフ「盲目な魔法使いのお気に入り」も宜しくお願いします。 ※ 全話完結済み。7時20時更新します。 ※ ファンタジー要素多め。魔法なし物理のみです。 ※ 第四章で魔物との戦闘があります。 ※ 短編と長編の違いがよくわかっておりません!すみません!十万字以上が長編と解釈してます。文字数で判断ください。

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

置き去りにされた恋をもう一度

ともどーも
恋愛
「好きです。付き合ってください!」  大きな桜の木に花が咲き始めた頃、その木の下で、彼は真っ赤な顔をして告げてきた。  嬉しさに胸が熱くなり、なかなか返事ができなかった。その間、彼はまっすぐ緊張した面持ちで私を見ていた。そして、私が「はい」と答えると、お互い花が咲いたような笑顔で笑い合った。  中学校の卒業式の日だった……。  あ~……。くだらない。  脳味噌花畑の学生の恋愛ごっこだったわ。  全ての情熱を学生時代に置いてきた立花美咲(24)の前に、突然音信不通になった元カレ橘蓮(24)が現れた。  なぜ何も言わずに姿を消したのか。  蓮に起こったことを知り、美咲はあの頃に置き去りにした心を徐々に取り戻していく。 ──────────────────── 現時点でプロローグ+20話まで執筆ができていますが、まだ完結していません。 20話以降は不定期になると思います。 初の現代版の恋愛ストーリーなので、遅い執筆がさらに遅くなっていますが、必ず最後まで書き上げます! 少しでも楽しんでいただければ幸いです。

【電子書籍化・1月末削除予定】余命一カ月の魔法使いは我儘に生きる

大森 樹
恋愛
【本編完結、番外編追加しています】 多くの方にお読みいただき感謝申し上げます。 感想たくさんいただき感謝致します。全て大切に読ませていただいております。 残念ですが、この度電子書籍化に伴い規約に基づき2026年1月末削除予定です。 よろしくお願いいたします。 ----------------------------------------------------------- 大魔法使いエルヴィは、最大の敵である魔女を倒した。 「お前は死の恐怖に怯えながら、この一カ月無様に生きるといい」 死に際に魔女から呪いをかけられたエルヴィは、自分の余命が一カ月しかないことを知る。 国王陛下から命を賭して魔女討伐をした褒美に『どんな我儘でも叶える』と言われたが……エルヴィのお願いはとんでもないことだった!? 「ユリウス・ラハティ様と恋人になりたいです!」 エルヴィは二十歳近く年上の騎士団長ユリウスにまさかの公開告白をしたが、彼は亡き妻を想い独身を貫いていた。しかし、王命により二人は強制的に一緒に暮らすことになって…… 常識が通じない真っ直ぐな魔法使いエルヴィ×常識的で大人な騎士団長のユリウスの期間限定(?)のラブストーリーです。 ※どんな形であれハッピーエンドになります。

処理中です...