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・17-2.拒絶②
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その姿を見たクロエは、動揺で体が小刻みに震えてしまう。
ゆっくりと後ろに下がりながら、動揺を抑えるように何とか声を絞り出した。
「ちょっとご挨拶しようと思っただけ……です。それでは失礼します」
クロエは踵を返すと、その場から逃げるように足早に歩く。
頭の中がもうぐちゃぐちゃで、胸が苦しい。
胸がズキズキと痛み、気を抜くと涙が溢れそうになる。
何でこんなにショックを受けているのか自分でも分からない。こんな顔はフレッドには見せられないし、見られたくもなかった。
だが、そんなクロエの手を、誰かが力強く引き、クロエは振り向くことになってしまう。
「クロエ、待ってくれ!」
誰が自分の手を掴んだのか分かった瞬間、クロエはその手を振り払っていた。
「! 触らないで!」
振り返ると驚きに目を瞠るフレッドの姿があった。
ロザリーを抱きしめていたその手で触れてほしくなかった。
何故恋人がいるにもかかわらず、フレッドは自分を追いかけて来たのか?
先日のドレスの件やロザリーの存在を隠していた件。
フレッドの考えていることが分からなかった。
その混乱と、自分を振り回すフレッドに対するやり場のない憤りがクロエの中で渦巻いた。
だから、クロエはフレッドを真っ直ぐに見つめると、怒りを押さえながら、拒絶の言葉を口にした。
「恋人でもない男性に気軽に触れられたくありません。お兄様も、ロザリー様という恋人がいらっしゃるのですから、軽率な真似はおやめください」
「クロエ……」
これほどまでに冷たい声を出したことは今まで無かった。
フレッドを冷めたい怒りを滲ませた目で見据えていると、遠くからダニエルが近づいてくるのが分かった。
「クロエ嬢? ……と、フレッド様」
ダニエルはクロエの纏う空気と、フレッドとの間に流れる殺伐とした雰囲気に、戸惑いの表情を浮かべた。
そして自然とクロエの隣に立ったダニエルに対し、フレッドは怒りを抑えるような声を上げた。
「なんでこいつと一緒なんだ?」
「こいつなんて言い方やめてください。ダニエル様は、私の大切な方です」
「どういうことだ?」
眉間に皺を寄せ、低い声で尋ねてくるフレッド。
それに対し、クロエは平然と言い切った。
「ダニエル様とお付き合いしているという話です。私にも恋人ができたことですし、私はお兄様がいなくても大丈夫です。お兄様はお兄様で幸せになってください……行きましょう、ダニエル様」
「待ってくれ、クロエ!」
背後からフレッドの声が聞こえたが、クロエはその声を聞こえないふりをして今度こそ立ち去った。
下唇を噛んだまま、クロエは無言で歩き続けた。
すっかり夜の帳の落ちた公園まで来ると、クロエに腕を取られたまま無言で隣を歩いていたダニエルが、ようやく口を開いた。
「クロエ嬢、大丈夫かい?」
ダニエルの声でクロエはようやく我に返り、自分がどこにいるのかを認識した。
展示会の片づけがすっかり終わった公園の広場には、クロエとダニエルしかいない。
クロエはようやく事態を把握し、ゆっくりと腕を解いてダニエルを解放すると、うつむいたまま謝罪した。
「ダニエル様……。勝手にあんな嘘をついて、申し訳ありません」
力なく呟かれた謝罪の言葉を聞いたダニエルが、小さく苦笑している空気を感じる。
「ちょっと座ろうか」
ダニエルに促され、クロエがベンチに腰掛けると、ダニエルも隣に腰を下ろした。
少しの沈黙の後、クロエは再び謝罪の言葉を口にした。
「本当にご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」
「迷惑って何のことだ?」
「恋人なんて嘘をついてしまって、もし他の方が聞いたら誤解されてダニエル様にご迷惑がかかるかもしれません」
「なるほど。では、嘘でなければいいんじゃないか?」
「え?」
「このまま恋人になってもらえないだろうか? お試しという形でもいいから」
真摯な眼差しを向けられる。
兄離れの機会なのは確かだが、ダニエルの優しさを利用するようで、躊躇ってしまう。
「正直、私は恋愛が何か分からないのです。だからそんな気持ちのまま、お付き合いするのはダニエル様に悪いと思うのです」
「分からないことがあれば学べばいいんだ。だから、僕と付き合って、恋を学んでみないか?」
「恋を学ぶ……。でも、そんな理由でお付き合いしても、ダニエル様はいいのですか?」
「ああ、もちろん」
クロエは逡巡したあと、ダニエルに頭を下げて言った。
「では、よろしくお願いいたします」
こうしてクロエはフレッドへの気持ちを断ち切り、ダニエルとの恋へと一歩踏み出すことにしたのだった。
ゆっくりと後ろに下がりながら、動揺を抑えるように何とか声を絞り出した。
「ちょっとご挨拶しようと思っただけ……です。それでは失礼します」
クロエは踵を返すと、その場から逃げるように足早に歩く。
頭の中がもうぐちゃぐちゃで、胸が苦しい。
胸がズキズキと痛み、気を抜くと涙が溢れそうになる。
何でこんなにショックを受けているのか自分でも分からない。こんな顔はフレッドには見せられないし、見られたくもなかった。
だが、そんなクロエの手を、誰かが力強く引き、クロエは振り向くことになってしまう。
「クロエ、待ってくれ!」
誰が自分の手を掴んだのか分かった瞬間、クロエはその手を振り払っていた。
「! 触らないで!」
振り返ると驚きに目を瞠るフレッドの姿があった。
ロザリーを抱きしめていたその手で触れてほしくなかった。
何故恋人がいるにもかかわらず、フレッドは自分を追いかけて来たのか?
先日のドレスの件やロザリーの存在を隠していた件。
フレッドの考えていることが分からなかった。
その混乱と、自分を振り回すフレッドに対するやり場のない憤りがクロエの中で渦巻いた。
だから、クロエはフレッドを真っ直ぐに見つめると、怒りを押さえながら、拒絶の言葉を口にした。
「恋人でもない男性に気軽に触れられたくありません。お兄様も、ロザリー様という恋人がいらっしゃるのですから、軽率な真似はおやめください」
「クロエ……」
これほどまでに冷たい声を出したことは今まで無かった。
フレッドを冷めたい怒りを滲ませた目で見据えていると、遠くからダニエルが近づいてくるのが分かった。
「クロエ嬢? ……と、フレッド様」
ダニエルはクロエの纏う空気と、フレッドとの間に流れる殺伐とした雰囲気に、戸惑いの表情を浮かべた。
そして自然とクロエの隣に立ったダニエルに対し、フレッドは怒りを抑えるような声を上げた。
「なんでこいつと一緒なんだ?」
「こいつなんて言い方やめてください。ダニエル様は、私の大切な方です」
「どういうことだ?」
眉間に皺を寄せ、低い声で尋ねてくるフレッド。
それに対し、クロエは平然と言い切った。
「ダニエル様とお付き合いしているという話です。私にも恋人ができたことですし、私はお兄様がいなくても大丈夫です。お兄様はお兄様で幸せになってください……行きましょう、ダニエル様」
「待ってくれ、クロエ!」
背後からフレッドの声が聞こえたが、クロエはその声を聞こえないふりをして今度こそ立ち去った。
下唇を噛んだまま、クロエは無言で歩き続けた。
すっかり夜の帳の落ちた公園まで来ると、クロエに腕を取られたまま無言で隣を歩いていたダニエルが、ようやく口を開いた。
「クロエ嬢、大丈夫かい?」
ダニエルの声でクロエはようやく我に返り、自分がどこにいるのかを認識した。
展示会の片づけがすっかり終わった公園の広場には、クロエとダニエルしかいない。
クロエはようやく事態を把握し、ゆっくりと腕を解いてダニエルを解放すると、うつむいたまま謝罪した。
「ダニエル様……。勝手にあんな嘘をついて、申し訳ありません」
力なく呟かれた謝罪の言葉を聞いたダニエルが、小さく苦笑している空気を感じる。
「ちょっと座ろうか」
ダニエルに促され、クロエがベンチに腰掛けると、ダニエルも隣に腰を下ろした。
少しの沈黙の後、クロエは再び謝罪の言葉を口にした。
「本当にご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」
「迷惑って何のことだ?」
「恋人なんて嘘をついてしまって、もし他の方が聞いたら誤解されてダニエル様にご迷惑がかかるかもしれません」
「なるほど。では、嘘でなければいいんじゃないか?」
「え?」
「このまま恋人になってもらえないだろうか? お試しという形でもいいから」
真摯な眼差しを向けられる。
兄離れの機会なのは確かだが、ダニエルの優しさを利用するようで、躊躇ってしまう。
「正直、私は恋愛が何か分からないのです。だからそんな気持ちのまま、お付き合いするのはダニエル様に悪いと思うのです」
「分からないことがあれば学べばいいんだ。だから、僕と付き合って、恋を学んでみないか?」
「恋を学ぶ……。でも、そんな理由でお付き合いしても、ダニエル様はいいのですか?」
「ああ、もちろん」
クロエは逡巡したあと、ダニエルに頭を下げて言った。
「では、よろしくお願いいたします」
こうしてクロエはフレッドへの気持ちを断ち切り、ダニエルとの恋へと一歩踏み出すことにしたのだった。
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