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遭遇
しおりを挟む日暮れまで残り僅かしか時間がないが墜落したヘリコプターに出くわす事など滅多にない。それにコロニーもさほど遠くには離れていない事もあり、誰よりも先にヘリコプター内を調べる事にした。
物資など貴重な物は既に持ち去られている可能性があるが、その逆もある為調べるに越した事はない。
ロギアは双眼鏡を取り出し二百メートル先の墜落現場を観察した。墜落しているヘリコプターの周りには墜落の衝撃で飛び出したと思われる数人の死骸が転がっており、周辺にはまだ奴等の姿は見えない。双眼鏡をしまいボウガンを取り出すと周囲を警戒しながらヘリコプターに近付いた。
近くまで来ると悲惨な状況が墜落した時の衝撃を物語っていた。ヘリコプターの残骸がそこらじゅうに飛び散り、数人の死骸の傍には奴等に寄生されたとみられる蠅が何十匹も丸焦げになり息を途絶えている。
日がかなり沈みかけている事もあり、ロギアは急いで機内を調べる事にした。
「何だ……これは……」
機内に入ったロギアが最初に見たのは機内の中央にあったであろう、何かを拘束していたと思われる原形をとどめていないストレッチャーだった。
ゴムで作られたと見られるベルトは破れて垂れ下がっており、その周りには外と同じように蠅と人間の死骸で埋め尽くされている。
「これは酷いな」
機内のあまりの焦げ臭さに鼻を手で覆う。
もしストレッチャーが何かを拘束していたのならその何かは機内と外にある死骸のどれかのはずなのだが、死骸の着ている服はどれも研究服と防弾チョッキの二種類だけでそれ以外の服を着ている者は全く見当たらなかった。ただそうなってしまうとかなり嫌な状況なのかもしれない。
“彼等と言っても既に死骸になっているが、ストレッチャーに拘束する程の者に自分達と同じ服を着せるだろうか? ……いや、そんなものは着せる必要がないし有り得ない。つまりこのストレッチャーに拘束していた何かは普通あり得ないがまだ生きていてこの辺りに潜んでいるか移動した可能性があるな……このヘリコプターがただ単にストレッチャーを積んでいただけと考えればそれですむ話なのだが、わざわざ大切な燃料を消費してまでストレッチャーを運ぶなんて普通に考えて有り得ないか……”
鹿の解体作業の時に感じた不安が再び戻って来るのを感じ、ロギアは直ぐに使えそうな物を見つけとっととこの場から立ち去る事にした。
ロギアは蠅と人間の死骸をどけて一つ一つバッグの中の確認作業を開始しようとした時、機内の片隅に何かが蹲っているのに気が付く。
「――ッ!?」
咄嗟にボウガンをそれに向けいつでも対応が出来る態勢をとる。
「――――」
それは全く微動だにしない。
警戒しながら近づいて行くと、暗闇に蹲っているそれの正体が徐々に明らかになっていく。
女性特有の滑らかな線で人型の体躯、自分と左程離れていない身長いう単純な情報から、それが自分とあまり変わらない年齢の少女だという判断をした。そして同時に少女の余りにも異質な風貌に気付き、背筋が凍りつき足が止まる。
「……」その少女の外見は余にも奇異な物だった。
雪を連想させる様かのような真っ白な髪が肩にまで伸び、この場に相応しくない、だらしなく着られた薄っぺらく短い病衣は血塗れで所々が焦げ付いている。顔は蹲っているせいで詳しくは確認出来ないが、着ている短い病衣の裾からあらわになっている長く伸びる少女の足は透き通るような白い肌で靴すら履いてはいない。更に近付くと少女が呼吸する音が微かに聞こえ、それに合わせる様に上下する身体の動きが確認出来た。
“コイツは正常――だろうか”しばらく考察した後、頭を掻きロギアは覚悟を決め一歩ずつ少女に近付いて行く。
「おい! 生きているのなら顔を見せろ!」
見た感じ普通では無かった為言葉が通じるか分からなかったが、数度声をかけると通じているらしく少女はのろのろと頭を上げる。しかし立っているロギアを見上げる程は顔を上げず、視線はつま先辺りに固定された。
「……誰?」
細い喉から漏れる様に呟やかれた少女の声はかすれていて弱々しいものだった。
少女からの応答が呻き声ではなく言葉だった事からロギアは一先ずの安堵を覚えた――が少女の上げた顔を見た瞬間、先程感じた安堵は一瞬の内に消え失せ、自分の顔から血の気が一気に引いていくのを感じた。
――――少女の瞳は奴等、寄生された人間と変わらない血液と同じ、濃い紅い色をしていた。そして口元には大量の血液がべっとりとこびりついている。髪の毛はほつれ病衣も血塗れで乱れており、少女の姿は既に人とは言える様なものではなかった。
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