Ninfea

蠍ノ 丘

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感染者溜まり

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 小さな丘からゴーストタウンとなった街並みが一望出来る。

「どうだ? 案外良い景色じゃないか?」
 ロギアは廃墟ばかりの街並みを眺め、所々緑が目立つ建物等に目を向ける。

「え? あ、う、うん」
 唐突に声をかけられアリアは慌てて返事をし、同じ様にロギアの傍に立ち景色を眺めた。

「ん、確かに……景色は」
 朝焼けの光に瞼を細めながらそう応える。

「景色は?」

「うん……私が知ってる景色とやっぱり違うなあぁて……廃墟になったからとかじゃなくて――――寂しいというか……」
 言葉に詰まりながらもたどたどしく喋る。

「もう少し落ち着いた状況で見たら感じ方も違ったのかなって」

 そう呟くアリアに「まぁ、色々あるだろうしな」世界がこうなる前の事をアリアがどれだけ知っていたか判らないロギアにはそう応えるしかなかった。


「さぁ、こっちだ。全員遅れをとらないよーに」
 橘がそう小言を言いユズルと共に階段を下りていく。

 水琶はアリアと視線が重なり「行きましょ」そう先を勧めた。

 乗り捨てられた車、手入れされずにすっかり伸びきった雑草。ボロボロのコンクリートと店。かつて人が住んでいたとは思えない程、朽ち果てた街を眺めながら一行は足を進めて行く。

 道中数体の感染者を見かけたがどれも腐りかけている身体だった為か速度は遅くアリアを除く三人だけでも落ち着いて処理が出来、危険とは一向に感じなかった。

 少し開けた空き地に到着しかかった時、橘が手を上げ全員に静止の合図を送る。

「感染者溜まりだ」
 アリアは聞きなれない言葉にふとロギアの顔を見るが「見た方が判りやすい」そう促され、その景色を見てゾッと背筋が凍り付いた。

 血生臭い匂いが鼻腔をつく。

 視線の先には数え切れない程の感染者が辺りを埋めつくしていた。ざっと見回しただけでも腐敗した感染者よりも未だに腐敗が始まっていない、あるいは少しの部分欠損した個体が多く更に一体一体の間隔が近く決して強行突破出来そうもない。

 橘はその状況に顔をしかめる「誰がそう呼び出したかは知らないが、何時、原因、場所は未だに解明されては無いが偶にこういった現象が起きる。どうしたもんかねぇ‥‥」

 ロギアはアリアの様子を伺い、そして橘へと視線を向ける。「早くこの場所から離れた方が良さそうだな」それに橘も頷き返答する。

「けどよぉ、此処以外の道だどかなりの時間ロスになっちまいませんか?」
 ユズルがそう愚痴を漏らす中、水琶がその横で端末で周囲の地形について何処かと連絡をとっている様だった。

「ちぇ、もっと早く出発してりゃあ此処までの時間ロスにならなかったのによぉ」
 ユズルが毒づくと共に二人に視線を送る。

「それはアンタ等全員の意見として受け取っておくよ」
 ロギアがそう皮肉な言い方をするとユズルは焦った反応を見せ、橘や水琶からも叱られ何も言い返す言葉が見つからず縮こまるしかなかった。

「橘隊長、此処から東方向三百メートル先に防護柵に囲まれたターミナル駅がありました。柵も見た感じは壊れていないですし、此処から行けばそこまでの時間ロスを気にする事無く遥かに安全に行けると思います」
 水琶は縮こまるユズルを一瞥し、傍に立つ橘に報告する。

「ターミナル駅って不味くないっすか?」ユズルがポカンと口を開けそう問い詰める中、ロギアが傍にいるアリアへと視線を移す。

「駅――――」一目で判る程顔が強張っている。

「かと言って他の道を行くとなると更に時間がかかってしまいます。」水琶はアリアへと目を向けると「第三者からの介入もあり得るかと思いますので此処は迅速に目的地への到着を目指すべきかと‥‥」

 橘はその報告を受けロギア達を見る「まぁ、あの大群の中を突っ切るよりかは幾分マシだろう」
 

「ロギ、駅ってどれくらい危険なの?」傍まで駆け寄り、そう首を傾げた。

「元々人が集まっていた様な場所だ。通常なら危険だが、あの駅はこの辺りの放浪者達も利用する頻度が多いからな。あの場に居た感染者は殆ど閉じ込められているか、駆除したんじゃないか」

「ほぅ、少年も行った事があるのか?」
  橘は感心しロギアを見る。

「いや、話に聞く程度だ。封鎖されてる所には無闇に近づかず、静かにしていれば問題は無いとは聞いてる」

「だそうだ、此処は少年の案にのるとしようか」
 一行は感染者溜まりを後にしターミナル駅へと足を向けた。
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