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三つの区分けされた地域
しおりを挟むモノレールが走り出して数分、大橋を抜けそこからは景色が一変し、世界が崩壊する以前からあった街並み、いやもしかしたらそれ以上発展しているのかもしれない光景が飛び込んできた。
気になるのはその建物の建て方が真っ直ぐ平行にどれも似た様な作りをしていた事だ。ただ建物自体が新築らしく欠損箇所など勿論見当たらず、各家の前にある道路も中央に何重個の袋が置かれているのみだった。
その光景に注視していると数人の武装した人影が各家々に入りその袋を持ち出している。そしてその袋をトラックに積み込んでいる人影も多数発見した。
「あれは此処を守る防衛班と安全地域の拡張、除菌を担当する開発班だ。今は確か……数ヶ月前に此処の一部の区画が数体の感染者に汚染されてな、その後処理をしている最中だと思うぞ。一応此処が今の所人が住める地域の最前線みたいな場所だからこういった事故は偶に発生してる」
その説明をしている内に二人の視線は外周の方へと走り出すトラックに目を止める。
「あのトラックは此処よりも更に外側、大橋の外にある施設で此処で回収した汚染物等の焼却をする予定だ。」
二人の視線の先にある物について橘が一つ一つ解説していく度にアリアは返事ともとれる声を只々漏らすばかりだった。
「私達って何処に向かっているの?」
モノレールが進む先を見てアリアが首を傾げ傍に居る水琶を見る。
「数ヵ所の検問駅を抜けてから安全性で区分けされた三つの地域を通って都市の中心に迄行く予定ですよ。このモノレールでは途中までですが」
水琶は橘でなくアリアが自分に話し掛けて来た事が嬉しかったのか、アリアの目を見て微笑みモノレールの先にある建物を指差しながら答えた。
「検問駅……安全性……区分け……?」
アリアは頭に引っかかった三つの単語を口にする。
「それはですね……此処はさっき橘隊長が仰ってましたが中心に都市機能が揃っていてそこを囲う様に幾つか街が造られているのです。三つの区分けされた地域って言うのはグリーンエリア、イエローエリア、レッドエリアの大体三つに分けられて内側に行けば行くほど安全って考えて良いと思います。まぁレッドエリアとかは聞こえは悪いですが大橋よりも内部にありますし安全性は保障されてますよ」
「わざわざそんな名称付けるだなんてな、いらんマウントを取る奴が出て来るんじゃないのか?」
ロギアが呆れた様に言う。
「ははは、一応名称自体はマスコミが言い始めた物で……現在ではそれが定着してしまっている状態なんです。正直困っちゃうんですけど今更止められないんですよね……」
苦笑してロギアに応えた後、水琶は遠くに見える塀を示す。
「あの塀よりも向こう側がイエローエリアです。で、名前からして不安にもなる人も要るんですけど、どのエリアも安全性は確保してありますし防衛班もちゃんと配備しているので余計な心配だと思ってくれて間違い無いです。私達の様な人が沢山居ますからね。……ただグリーンエリア程は発展していませんし、もしもの時にはあの塀からこっちは人が居たとしてもグリーンエリア迄被害が及ぶと上層部の人達が判断された場合にはシャットアウトされるって事になってますけど……」
判りやすく説明する為なのか、水琶は手を動かしジェスチャーをしながら話している。
「それって……見捨てられるって事?」
「勿論それは最悪のケースです。酷いと思われるかも知れませんがそう捉えて貰って構いません。でもそんな事は絶対に防ぎますよ、私!」
水琶は拳を握りしめ流れゆく街並みを決意を込めた瞳で熟視する。水琶のその様子にはアリアも目を見張るが最悪のケースでもその選択肢が既にある事について複雑な表情になり、ロギアはそんなアリアに対して塀を一瞥し「だろうな」と、ぼそりと呟いた。
「それでですね……あの塀、イエローエリアよりこちら側、まぁ大体この辺りの事ですが此処がレッドエリアです。此処は先程も言ったと思いますが安全は確保されてはいるのですが未だに復興作業が進んでない箇所がありまして」
アリアだけで無くロギアも水琶の言葉に耳を傾け訊いているが話の途中からアリアの視線が下がり、ずっと水琶の手元を見続けている。
アリアのその動きに気付き不思議に思ったロギアも視線の先、水琶を見ると本人は気付いていないのか、最初こそ身体はアリアに向いていたものの話す内に次第に身体の向きが変わり折角のジェスチャーもアリアにではなく壁側、頓珍漢の方に向いていた。
「「……」」「この子、ちょいと天然な所あるけど指摘しないでね、面白いから」
話に夢中になっている水琶を邪魔しない様、橘が横からアリアとロギアに声をかける。
「――そして! 何より問題が発生した場合には一番最初に切り離される部分です。だから此処に住みたくないって人が多いんです。けど集団生活が出来るかルールは守れるか知る事も含めて此処にはまず外から来た人達が住む事になっていますっ」
水琶はキリッみたいな表情になり顔をアリアに向ける。
「う、うん……」話の中身が完全に頭に入って来なかったのかアリアは空返事をするがロギアは水琶のその様子に呆れつつ橘に話し掛ける。
「大橋の手前もそうだが……あんなにも人が居たのに何故感染者は襲って来ないんだ? 折角探さなくてもいい所に餌があるのに?」
「餌って……」此処に関しての知識が無い為話に参加しようとしても付いて行けず今迄ずっと黙っていたユズルがロギアのその表現に唖然とした。
「そうだな、襲わないんじゃなくて襲えないって表現の方が正しいのかもしれないな」
「……襲えない?」
橘は窓の外を指さす。
「ああ、塀に防衛班が常備しているだけじゃ無く大橋の手前、そして各堀の手前には特殊なフェンスがあってな。不思議な事にそれには感染者が寄せ付けないって効果があるらしいぞ。」
「本当に?」
橘の如何にも信じがたい曖昧な答えにアリアは正直に捉え目を丸くするが、その不安要素を感じる物にロギアは眉をひそめる。
「だからこそ――」橘は電車内のナレーションに耳を傾けると丁度その話をしていた。
『覚えておいて頂きたいのはご自身の安全と周りの人の安全の為にこのフェンスには近付かない。決められている安全圏を絶対に出ない、これは絶対に守って下さい。勿論安全圏の境界付近に行けば行く程大勢の防衛班の姿に驚かれると思いますが我々が身を守る為には必要不可欠な事なのです。皆さんが穏やかな生活を取り戻す事の出来る様私共も最大限のサポートをさせて頂きます。とは言え――――』
橘は二人に顔を向ける。
「聴いての通り、そこに関して出来る限りの徹底はしてある現状はな。まぁやり過ぎって意見も偶に訊くが最悪のケースを考えた上でってのが安全保障ってそんなモンだろ?」
そんな話をしている中気付くとモノレールが終点とみられるホームに到着し、ロギアとアリアは眼前の光景に目を疑った。目に付くのは何十人もの警備隊と――歓迎のプラカードを手に持つ人々だった。
「あれは?」
「見た目通り、外から来た奴を歓迎する団体さん方だ。さあ行くぞ、付いて来てくれ」
橘はプラカードを一目見た後ロギアとアリアに声を掛けモノレールから降りて行く。
『前の人に付いて行って下さい』
兵士らしき人物が拡声器を使いモノレールから降りて来た人々に指示を出し、その指示のもとに一緒に電車に乗って来た人々は移動するが、ロギアとアリアだけは橘に誘導されそこで後輩の二人とは別れその団体とは別に今度は車両に乗せられ移動する。
「特別待遇だ」
そんな事を自慢げに語る橘を尻目にアリアはモノレールから降りた人々に視線を送る。全員の表情からどれだけ疲労が溜まっているのか把握出来るが、危険な場所から無事に安全な場所まで来れた事にホッとしている者が多かった。
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